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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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第4話 氷境の霊竜ヴァッファート〜キャベツよ永遠に・・・7


 風に靡いて逆立つ深紅の髪。
 薔薇が咲き誇るような真紅のドレス。
 白銀の雪に咲いた一輪の華――薔薇の君ローゼンクロイツ。
 その姿はまさしく薔薇仮面だった。しかも今日は素顔の出血大サービスだ。
 ユーリは眼を輝かせて歓喜した。
「やっぱり薔薇仮面はローゼンクロイツ様だったのですね!」
 すぐそばにいたアインもアッサリ認めた。
「そうですよ」
「えっ、アインちゃんも知ってたの?」
「はい、ローゼンクロイツ様とわたしのヒミツだったんですけど、これからはユーリさんもヒミツを共有する仲間ですね!」
「ヒミツを共有するってなんか嬉しいかも」
 顔をニヤニヤさせるユーリはローゼンクロイツに熱視線を贈った。
「ローゼンクロウイツ様、がんばってくださぁい!」
「がんばらないよ(ふあふあ)」
 そんな感じがアンタらしいです!
 暴れ狂うヴァッファートと薔薇の君ローゼンクロイツの戦いがはじまろうとしていた。
 ――と、その前にアインが口を挟む。
「説明しよう! 紅薔薇モードになったローゼン様は、髪もドレスも薔薇色に染まり、普段の三倍の性能を発揮できるのです!」
 ローゼンクロイツが雪の上を滑るように駆けた。
 ヴァッファートのブレスがローゼンクロイツを呑み込まんとする。
 持っていた日傘を開いて吹雪を防いだローゼンクロイツがすかさず呪文を唱える。
「マギ・フラッシュ!」
 眼を潰すほどの閃光が辺りを呑み込んだ。
 白く塗りつぶされた世界でさらにローゼンクロイツの声が響く。
「ライトチェーン!」
 拘束魔法ライトチェーン。手から光の鎖を放って対象物を捕捉するアイラだ。
 色の戻った世界でローゼンクロイツは光の鎖を握っていた。その先には全身を固定されたヴァッファートの姿。
 地獄の底から沸き上がるような咆哮が響く。
 鎖を解き放とう暴れ狂うヴァッファート。その巨大な体躯の力を小柄なローゼンクロイツが抑えていた。
 涼しい顔して片手でローゼンクロイツは鎖を握る。実は怪力の持ち主さんだったに違いない!
 ローゼンクロイツがボソッと呟く。
「……ダメだね(ふにふに)」
 刹那、ヴァッファートを包んでいた鎖が砕け散って光の粒が舞った。
 鋭い爪がローゼンクイツに振り下ろされる。
 まったく動じないローゼンクロイツは逃げも隠れもしない。
「ライララライラ、宿れ光よライトセイバー!(ふにふに)」
 折りたたまれていた日傘に光が宿り、それは闇を斬り裂く〈光の剣〉と化した。
 〈光の剣〉が爪を受けた!
 力のこもったヴァッファートの腕が震える。
 そして、ローゼンクロイツの口元が微笑んだ。
「……キミはキレてるほうが弱い(ふっ)」
 爪を薙ぎ払いローゼンクロイツがヴァッファートの腕を駆け登った。
 ローゼンクロイツはヴァッファートの臀部まで辿り着き、そこで〈光の剣〉を突き刺そうとした。
「お灸を据えなきゃね、怒りを静めるツボだよ(ふあふあ)」
 〈光の剣〉が振り下ろされる瞬間、ローゼンクロイツがパタッと倒れた。
 思わずユーリは声をあげる。
「ローゼンクロイツ様」
 そして、アインが自信満々に説明する。
「説明しよう! 紅薔薇モードは体内マナと体力を多く消費するため、いきなり眠くなっちゃうのです。しかもローゼン様は寒いの苦手ですから、いつも以上に消耗が激しかったんでしょうね!」
 つまり昼寝しちゃったのだ。
 ニッコリ笑顔のユーリちゃん。
「あはは、それってアタシたちのピンチを意味してるんじゃないの?(ヤバイ、とてつもなくヤバイ。戦力の二人がやられてしまった今、戦えるのは……)」
 ユーリはアインの片をポンと叩いた。
「アインちゃんがんばれ、応援してるぞ♪」
「がんばります!」
 あっさりノッてくれて助かります♪
 フルアーマー装備のアインはヴァッファートに向かって腕を構えた。
「ロケットパーンチ!」
 うはっ、手が飛んだ
 超高速でぶっ飛んだパンチはヴァッファートの体にポンっと当たって、ストンと地面に落ちた。
 すげー無傷!
 どー見てもノーダメージ!
 飛ばしたパンチの下から本当の手を出してアインは頭を掻いた。
「えへへ、わたしじゃ力不足のようです。正義の魂(ソウル)が足らなくてごめんなさい!」
 頭を下げたアインに問答無用の不意打ち。
 ヴァッファートの手がパシッとアインを叩いた。
「あれ〜〜〜っ!」
 アインは崖下に転落した。
 ご愁傷様です♪
 ユーリは胸の前で拳を強く握り締めた。
「みんなの死はムダにしないから!」
 ウソ泣きをして逃走しようとするユーリ。
 が、いつの間にか周りは氷の壁によって囲まれてしまっていた。絶対に逃がす気ゼロだ。
「あはは、どうするアタシ?」
 こうなったらこれしかない。
 ユーリは指を組んで天に祈りを捧げた。
「オーデンブルグ家の家訓、最後はとにかく神頼み!(嗚呼、お兄様……どうかアタシをお救いください)」
 祈りは天に届いたのか、奇跡が起きた。
 東の空に輝く一点の光。
 それはだんだん大きくなって隕石のごとくヴァッファートの顔面に激突。
 鼻血ブッファッート!
 雪を真っ赤にしながらヴァッファートはその巨体を横転させた。
 そして、こっちも雪にボトボト鼻血を垂らしていた。
「死ぬ、死ぬ、死ぬかと思ったーっ」
 顔面蒼白のルーファスだった。
 ちょっぴりユーリはムッとしていた。
「遅いですよ役立たず! さっさとこの事態を打開してください、そうしたら許してあげます(ピンチに現れるなんて……ルーファスにときめいた自分が悔しい)」
「えっ、事態ってどのような感じの事態なのかぁ?」
「そこにいるヴァッファートの怒りを静めてください、役立たずのへっぽこ魔導士」
 そこにいると言われてルーファスははじめて気づいたようだ。
「うわっ!(なんかデカイ毛玉が倒れてる)」
 腰を抜かしてルーファスは尻餅をついた。
 でも、よーく見るとヴァッファートはピクリとも動かない。
 ルーファスはそ〜っと近づいて観察した。
「気絶してるみたいだけど。なんか一件落着してるみたいだよ? それよりも聞いてよ、私はあれから(・・・・)大変だったんだから!」
 あれからとは、つまり雪崩に呑まれてみんなとはぐれてしまったあとだ。
 ルーファスは自らの恐怖体験を語りはじめた。
「実はね気が付いたら雪の中に埋もれていていきなり生死の境を彷徨って、そんな私を助けてくれたのはオオカミだったんだ。でもヤツらは私を食料にするために掘り起こしたらしくって、私はそりゃもう必死で逃げたよ。お尻に名誉の負傷をしたりしてね、傷跡見るかい?」
「見ません!」
「それから私はどうにかオオカミの群れから逃げたんだけど、力尽きて倒れてしまったんだ。そしたら血の匂いを嗅ぎつけてシロクマがやって来てね、もう少しで食べられそうになったんだ。そんな私を助けてくれたのはシロクマよりも大きな怪鳥だったんだ。どうやらその怪鳥は母親だったらしく、子供が待つ巣まで連れて行かれちゃってね。必死で小鳥と戦ったよ。小鳥って言っても私と同じくらいあるんだけどね。そのとき一死を報いて羽根を一本抜いてやったんだ、見るかい?」
「見ねぇーよ!」