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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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第4話 氷境の霊竜ヴァッファート〜キャベツよ永遠に・・・6


 謎のシルエット壱号ジャドは飛刀、手裏剣、ダイナマイトを投げた。もちろんすべて通販購入だ。
 なぜかヴァッファートと戦いをおっぱじめてしまったジャド。
 なにがなんだかわからずユーリは呆然としてしまった。
「どういうこと」
「説明しよう!」
 と、言ったのはシルエット弐号アインだった。
「このセリフ言ってみたかったんですよねぇ!」
 説明そっちのけでアインは嬉しそうにはしゃいでいた。
 その姿を見てさらにユーリは呆然とした。
「なにその格好?」
 アインはいつもと異質な存在になっていた。頑丈そうなプロテクターを装備した姿は、まるでフルアーマーのロボットのようだ。頭についたV字のアンテナがチャームポイントっぽい。
「えと、この格好は父の趣味娯楽なんです。父は幼いころから正義の味方に憧れていたらしくて、ついにこんな物まで自分で造ってわたしに着せる始末で(最初のころは恥ずかしかったんですけど、これも正義のためです!)」
 正義の味方のベクトルが特撮ヒーローだ。
 そんな話はどーでもよくって、なんでジャドがヴァッファートと戦ってるんですか?
 アインはハッとして説明をはじめる。
「そうでした、説明しようでした。えと、守秘義務に関わるので詳しくは他言無用なんですけど、とある人の依頼でこのような状況になってしまいました。あ、わたしもシャドウクロウに入ったのでよろしくです」
 ペコリと頭を下げたアイン。
 ぜんぜん具体的に状況がわからない。
 わかるのは仕事でヴァッファートと戦ってるということだ。
 ここでユーリちゃんからアインちゃんにツッコミ。
「正義の味方が国の守護者と戦っていいわけ?」
「あぅ……なかなか痛いところを疾風突きですねユーリさん。でも、正義の味方だってお金が必要なんです、うちの父が客を選ぶもので……」
 背景には家庭事情があるようだ。
 ジャドとヴァッファートの戦いは熾烈を極めているように見えるが、実際は一人相撲。
 次から次へと隠し持っていた暗器を炸裂させるジャドだが、ヴァッファートは余裕でかわし、吹雪を吐き、めんどくさいときはそっぽを向きながら手で叩く。
「わしに戦いを挑むとは勇者か、それとも救いようのない愚者か」
「さすがは神に近し者と呼ばれる龍族。では、これならどうだ――対戦車ミサイル!」
「愚かな」
 冷血なヴァッファートの声が響き。
 ミサイルは氷結して砕け散った。
 唖然とするジャド。
「今のは魔導か、呪文を唱えずとも強大な魔法を使えるとは……」
 現在主流になっている魔法は、古代魔導ライラが派生したレイラ・アイラ・マイラである。
 ライラとは別名?神々の詩?と呼ばれ、詩を詠むことに魔法を発動させる。つまり詠唱に手間がかかることになるが、威力は絶大であり使える者も限られる。現在では詩の多くが失われている。
 その手間を簡略化して、呪文の名を呼ぶことによって発動できるのがレイラとアイラだ。威力はライラに及ばないが、練習さえすえれば比較的誰でも使えるようになる。レイラは攻撃系、アイラは補助系、マイラはその他のものに分類される。
 そして、レイラ・アイラよりもレベルの低い魔法は、名を呼ぶこともせずに使用することが可能だ。そのほとんどは、指先から出した炎でランプに火をつける、女の子のスカートを風でめくる、実用的ではあるが威力はほとんどないのが一般的だ。
 しかし、同じ魔法でも使用者によって威力が異なる。一般的に魔力と云われるが、いかにマナと上手に付き合い、マナを効率よく使用できるか、それが魔力の違いとなる。
 つまり長ったらしい説明を踏まえると、ヴァッファートは魔力が高いので、呪文を詠唱しなくてもスゴイんです!
 戦いに苦戦するジャドの傍らでは三人がコタツで団らんしていた。
 ローゼンクロイツは無関心なマイペースなので、すでにコタツでうたた寝をしている。
 アインもすっかりお菓子を食べながらマッタリ。
 ユーリはローゼンクロイツの寝顔を見ながらニヤニヤ。
「アインちゃん、やっぱりローゼンクロイツ様は寝顔も素敵だよね」
「はい、ローゼン様の趣味は昼寝ですから、歩きながら寝ることも可能です。何度も盗撮させていただきました」
「ケータイがあれば写メ撮るのに。アインちゃんはケータイ持ってないの?」
「ごめんなさい、お金がかかるから持たせてもらえないんです。親にはムリを言って魔導学院に通わせてもらってますかので、本当に親不孝な娘でごめんなさい!」
「別に親不孝ではないと思うけれど。ほら、だってクラウス魔導学院と言ったら名門校だよ」
「でも卒業できるか心配なのです。代々ウチは魔導士なんか一人もいませんし、わたしだって普通の小学校を卒業して、それまで使ったこともなかった魔導の勉強をして、滑り込みでクラウス魔導学院に入学できたんです。そう、すべてはローゼン様への愛なのです!」
 一般家庭の生まれで、魔導なんか使ったこともなかったアインが、努力と根性で入学できたのは、クラウス魔導学院に語り継がれる奇跡の一つだ。ちなみにルーファスの入学も奇跡とされている。
 こんな感じですっかり団らんモードの三人。
 だが、ユーリは重大なことに気づいてしまった。
 そうだ、ジャドがヴァッファートと戦っているのだ。
「そうだ、ルーファスどこ行ったの?」
 そっちだった。
 ローゼンクロイツが寝言でムニャムニャ囁く。
「……はぐれたよ(ふにゃふにゃ)」
 きっと死んだね!
 ユーリはルーファスという存在を根本的になかったことにした。
「あはは、本当にももやのドラ焼きは美味しいよね!」
「あのお店はチョコ苺大福もお勧めですよ」
「今度食べに行こうね♪」
「はい!」
 もはやジャドとヴァッファートのことすら忘却の彼方だった。
 存在を忘れられてたまるかーっ!
 みたいな感じで急にヴァッファートが咆哮をあげて暴れだした。
 周りを顧みずに暴れるヴァッファートのせいで、地面が激しく悲鳴をあげ、雪煙が大量に舞い上げられる。
 暴れ狂うヴァッファートを見てジャドが一言。
「俺がケツを触ったから怒ったのかっ!」
 真顔のジャドにたいしてムクッと起きたローゼンクロイツが否定。
「……違うよ(ふあふあ)。キミは龍族の逆鱗に触れたんだ(ふにふに)」
 逆鱗とは龍族の躰を覆う鱗の中でただ一つ逆さに生えた鱗のこと。一般的にはアゴの下にあるが、ヴァッファートはケツのあたりにあったらしい。この逆鱗を触れられたドラゴンは我を忘れて暴れ狂うと云う。
 まさにこれって急展開!
 いきなりピンチが全員に降りかかってしまった。
 でも、やっぱり団らんはやめません!
 ユーリは冷めた視線をジャドに送った。
「貴方も子供じゃないんですから、自己責任ですからね。どうぞ独りでヴァッファートの怒りを静めてください」
 戦うことを放棄。
 ローゼンクロイツとアインも二人でうたた寝をしていた。
 ジャド四面楚歌!
「生憎俺は親からも子供として育てられたことはない。本気で戦うしかないようだな」
 やっぱり今まで本気じゃなかったのか!
 通販攻撃はやっぱり本気じゃなかったのかっ
 常に肌を隠していたジャドが片腕を捲り上げて?蒼い肌?を露にした。