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僕たちは何故かプロレスに憧れた

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ヒロの言葉からお客さんの期待の大きさを感じた。ヒロは控え室から出ていった。僕はこれまでの事を思い出そうとした。しかし、頭に浮かぶのはSASAKIに勝ちたいという気持ちだけだった。それだけ僕にとってこの試合は大きいものだった。興行はセミファイナルまで進んでいた。セミファイナルが終わるとリング上に僕以外のGDTの選手が集まった。何事かと思いリングを見ていると榊社長がマイクを手に取った。

「えー皆さんすいません少しだけ我々に時間をください」

社長はそうお客さんに断りを入れた。

「SATOSHI!いいか!良く聞け!」

僕はビックリした。社長は言葉を続けた。

「俺達はお前が勝つ姿を見たい。今日のお客さんの中にはSASAKIのファンもメシアファンもいるだろう。でも俺達はお前に勝ってもらいたい。誰がなんと言おうとお前の勝つ所が見たい。それが俺達GDTの総意だ。……がんばれ!」

榊社長の言葉に僕は思わず泣きそうになった。

「よっしゃ!ミュージックスタート!」

榊社長の言葉を合図に僕のテーマ曲が鳴り出した。僕は心を落ち着かせガウンのフードを頭から被った。そして僕はホールに出ていった。花道にはリングから降りたGDTの選手達が僕を出迎えてくれた。皆が僕をバシバシ叩く。その度に僕は皆からエールを受け取った。やっぱり僕は色んな人に助けられて活かされて生かされている。そしてここにいる。目の前にはリング。僕はリングに入った。お客さんへのアピールはせずに僕は青コーナーにもたれかかった。そしてSASAKIのテーマ曲が会場中に鳴り響いた。

時は来た。


その21

SASAKIはいつもと違う空気を醸し出して入場してきた。フード越しに僕はSASAKIと睨み合った。そして運命のゴングが鳴った。お互いに何か張り詰めたモノが爆発したように前進し距離を詰めた。至近距離で僕達は殴りあった。本来、プロレスではパンチは反則だ。だがそんな事は僕達には関係なかった。何発かパンチをもらい何発かパンチをくらわした。そして僕達はレフェリーの増井さんに止められた。増井さんが何か叫んでいるが僕には聞こえなかった。SASAKIも何も聞いてないような雰囲気だった。僕達は目の前の敵を倒す事しか考えていなかった。試合が再開した瞬間僕達の距離は詰まっていた。次はお互いが得意なキックを撃ち合った。何回キックのラリーが続いただろうか最初は盛り上がっていたお客さんも静まりかえってしまうぐらい僕達はキックを撃ち合った。どの位キックを撃ち合ったのかは分からないがガードする度にお互いの腕は赤から青、青から紫。そんな色の変化を経てドス黒く変色していった。SASAKIが流れを断つように僕を場外に投げ出した。場外に転げ落とされた僕は立ち上がりリングの中を見た。次の瞬間SASAKIがロープとロープ間から飛んできた。SASAKIのエルボーが僕の顔面を捉えた。お客さんが沸き上がる。「エルボースイシーダだ!」そんなお客さんの声を僕は顔面の痛みに耐えながら聞いた。エルボースイシーダは今は亡きプロレスリング・メシアの初代社長宮沢道晴さんの得意技だ。僕が初めてプロレスを見た時に初めて見たプロレスラーが宮沢さんだった。その遺伝子がSASAKIの中にも流れているのが分かった。SASAKIは僕をリングに投げ入れた。立ち上がるやいなやSASAKIは僕にエルボーを放った。エルボーも宮沢さんの得意技だ。何発目かのエルボーを食らった直後にSASAKIに捕まった。次の瞬間SASAKIは背中越しに僕の首の辺りを持ち、コーナーに向かって僕を引き連れて走った。SASAKIが器用にコーナーを駆け上がる。そのままSASAKIは後方に回転、僕は後頭部から叩きつけられた。不知火だ。お客さんがまた沸き上がった。富士丸選手の得意技の不知火をSASAKIが使った。まるでプロレスリング・メシアの歴史を体に刻み込まれてるようだった。フォールをカウント2で返した僕は立ち上がった。立ち上がった僕にSASAKIはKENTO選手ばりの打撃のラッシュを仕掛けてきた。僕は何発目かの張り手を避けてハイキックを放った。僕の右足は綺麗にSASAKIの側頭部を捉えた。SASAKIは膝から崩れ落ちた。倒れているSASAKIを起こし肩に乗せ持ち上げ、榊社長の得意技のスピコリドライバーでリングに叩きつけた。ダウンしているSASAKIを横目に僕はトップロープに上がった。そこから僕はSUDO選手の得意技のダイビングダブルニードロップを放った。僕の両膝がSASAKIの腹部に突き刺さる。僕もGDTの遺伝子をSASAKIに刻み込んだ。そのままフォールに持ち込むがカウントは2。まだSASAKIに余力はあるようだった。ここで僕は敢えてグランドを仕掛けた。まるで新弟子同士の練習のようにグランドの攻防が続いたがお客さんからの野次は無かった。グランドの攻防に嫌気が差したのかSASAKIはいきなり逆水平チョップを僕の胸板に撃ち込んできた。一発撃ち込まれた僕は胸を突きだし無言の挑発をした。SASAKIは僕をコーナーに追い込みマシンガンチョップを繰り出した。メシアの鉄人大橋選手の得意技だ。僕は気力で全てのチョップを受けきったがあまりの痛さにコーナーにへたりこんでしまった。へたりこんでしまった僕を起こしSASAKIはバックドロップを繰り出した。僕は体を捻り切り返した。後頭部を強打したSASAKIを起こしパイルドライバーを仕掛けた。頭頂部からSASAKIがリングに突き刺さる。頭を抑えてうずくまるSASAKIを起こし顔面にトラースキックを決めるとSASAKIはそのまま後ろに倒れていった。僕はトップロープに上がり自分の最高のフィニッシュホールドであるジョン・ミッシェルズ式のダイビングエルボードロップを放った。そのままフォール。増井さんの手がリングを叩く。


その22

「ワン!ツー!」