しらじら
翌朝、目覚まし時計は掛け忘れたが すっきりと目が覚めました。
あまり吞んでいなかったことが 良かったのかもしれない。
クリスマス。
いや そんなことより 昨夜の仕事の件はどうなるだろうか?
昨日の服装のまま寝込んだので 朝からシャワーを浴びました。
髪を整え、新しいシャツを着て、昨日とは違うネクタイを締めて さあ出勤だ。
いつもと同じ道なのに 彼女が居た道角で空を見上げました。
何も変わったことなどないと確かめたに過ぎなかったが 少し楽しく感じました。
仕事は 特に問題なく終えました。あの書類の件も先方との打ち合わせに間に合い、上司からのお咎めもなく 要は結果オーライといったところです。
さて、今夜はどうする? クリスマスの街にボッチで出かけるか? 誘いらしきものもないが寂しいとも思わない。わりと一人の時間は気ままでいいと思うほうだ。
しかし、集団に押し出されるように 退社をしました。
いつもと変わらない帰り道。冷えると思ったら 雪が舞っていました。
(あの道の角… あれ?あの子?)
その人影に 気持ちが引き寄せられていくのを感じました。
(どうしたのかなぁ)
また困っているのだろうかと少し足が急いだ。声をかけていいだろうかと落ち着かない胸元を掴んだ。だが、もう彼女は目の前の距離にいました。
「こ、こんばんは」
「失くしてしまいました。本」
「え? 昨日の本?」
僕は わりと冷静に訊き返しました。
彼女は、昨夜と同じ服装で、同じように困った顔で僕を見たのです。
「捜しましょう」
昨日とは違う所でしたが 数分とかからず見つけることができました。
また彼女が消えないように 僕は言葉を続けました。
「お急ぎでなければ 少し話しませんか?」
この誘い文句が正解なのかはわからなかったが 彼女が頷いてくれたことで安堵しました。
言葉がなくても こんなことになるのだろうか?
いや、そうなのだから これはなるべくしてなったと思えばいいんだ。
彼女が 僕の彼女になりました。
だと思う。



