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しらじら

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会社が 年末年始の休暇に入りました。
僕と彼女は 毎日会うことができました。
不思議とも感じなかったのですが 何を話したのか、あまり覚えていないのです。
いや、話したという事も意識していないくらい、そこに彼女が居たという事だけなのです。
でも、僕はしあわせに感じていたし 嬉しさが満ちていました。

年が明け、仕事始めとなりました。
彼女とは、週末会うことを約束していつも通りの生活に戻りました。
と、提出した資料について問われたのです。
「ここの字だけど 変換忘れてるよ。この前のもそういうところがあったわ」と隣の席の同僚からの指摘もありました。
「あ、すまない。ん? どんな字だったっけ?」
どうしたことだろうか… 日に日に字がわからなくなっていくのでした。
健忘症と決めつけるには 納得がいかないけれど、自身でも不思議なくらい忘れていくのです。 忘れるというより失う? 落とす? 零れ落ちていくような… いけない病だろうかと気が気ではない。彼女に伝えるべきだろうか? 心配をかけたくないのですが このままでいいとは思えません。
僕は、彼女に話すことを決めました。
彼女は「だいじょうぶ」と微笑んでいました。
それ以上に 弁解も説明もできない僕は その微笑みに飲み込まれていくように話は終わりました。
「また 今度の週末ね」その約束に気持ちが救われました。
嫌われていない。

その後も仕事では 同僚の手間を借りて気を付けていました。

何度目だったでしょう。彼女に会った時でした。
彼女がいつも持っている本がテーブルから落ちたのです。その時に開いたページに文字がありました。そのひとつが本からはみ出したのです。僕は… 僕は目を疑いました。
確かに 見覚えがある。そう、僕が忘れてしまったような文字なのです。
本を拾い上げ、ほかのページをめくってみました。
これも これも… あ、これも…
「ねえ これ」
僕は 本から視線を外すことができないまま 彼女に訊ねてみました。
「これって」
すると、彼女は慌てるでもない様子で『大切なもの』と言うのです。
僕にとっては 一大事! 
何故彼女はこんなにも落ち着いて しかも頬をほのかに色づかせているんだろう。

その理由は… 

彼女の語らないのに伝わる言葉で知ることとなりました。
僕から抜き取ったその言葉や字たちは やさしく しあわせを たくさんかんじるもの ばかり。
そして、僕が最後に開いたページには 繋ぎ合わせた文字がありました。
 

   『大好き』


作品名:しらじら 作家名:甜茶