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しらじら

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「ちょっくら片付けておくか…」

何処で耳にしたのかもわからない言葉を発した僕は 踵を返してしまったのです。
哀しいかな、クリスマスイブに予定はありません。
もしも誰かに「クリスマスイブはどうしていたの?」と訊かれた時、「あ、仕事!」なんて答える自分が格好良く思えて 三秒ほど自己満足に浸りました。おそらく訊かれることなど皆無に近いことでしょうが。

その悦びを現実のものとして感じる為に 僕は未処理カゴに入れた紙を今気づいたかのような滑らかに左手で取り、手荷物は通りすがりの机上に置きつつ自らのデスクに戻りました。
右手は、その動きを止めない速度とタイミングで椅子を引き 腰掛けると、今一度、その紙面の文字を目で追いました。ところどころ声を発してしまうことがあったのは 僕がその文字に口形を合わせていたからでした。
一読しただけで するべき事が頭の端っこを蹴とばすようでした。
それなりの時間を要したとはいえ、作業を終えた僕は、すっきりとした気分でした。
上司に気付いてもらえ、褒め言葉を思い浮かべるとややほくそ笑んでしまいましたが、申告の無い残業した事への言い訳が頭をよぎり苦笑いに変わりました。

「あれ、まだいらっしゃったのですか?お疲れさまです」
事務所内の見回りと消灯を請け負っている警備員さんに声を掛けられました。
「まだお仕事ですか? そろそろ電源落としていいですか?」
「あ、すみません。今帰るところです」
手荷物を抱えるように仕事場を出ました。

作品名:しらじら 作家名:甜茶