詐欺事件のフィクション
「善悪などという、きれいごとばかり言っていられない」
と考え、せっかく、今まで工場のために働いてくれていたと思っていた山形に、
「裏切られた」
ということで、余計にいらだったのかも知れない。
それこそ、
「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」
というようなことなのかも知れない。
そこで、
「リストラ」
という言葉を口実に、
「体よく追っ払った」
ということになる。
さすがに、山形も、
「社長がここまでするとは」
と思ったかも知れない。
しかし、社長が決断したことに逆らうこともできず、会社をリストラされた。
「山形夫婦の離婚」
というものが、そうなると、
「リストラが原因」
とも言えなくなってきたのではないだろうか。
奥さんが、少し精神的に疾患を持ったとも聞いたが、それが、
「旦那のリストラではなく、自分の夢を無残にも儚く裏切ることになった、詐欺集団に引っかかった」
ということになるだろう。
そんな連中と、社長が、
「一蓮托生」
という状態だったと思えば、さすがに、山形も、たまったものではなかったということになるに違いない。
山形がどこまで、社長を脅かしたのかは分からない。
そもそも、
「山形が、どこまで社長と、詐欺出版社のことを知っているか?」
ということも分かっていない。
ただ、
「一つでも何か、脅迫できるほどの切り札を持っているとすれば、山形としても、行動できるということになるだろう。
しかし、それは、相手の息の根を止めることができる武器ということになるのかも知れないが、逆に、
「手負いの獅子」
というものを作ってしまったといってもいいだろう。
相手は、必死になって何をしてくるのか分からない。
これが社長だけの判断であれば、もっと単純な殺人事件だったかも知れないが、そこに、詐欺出版社が絡んでくるということで、
「工場自体を燃やす」
ということで、
「工場も保険金が入る」
ということになり、被害者が誰かということを、少しでも遅らせることができるには、
「DNA鑑定が不可能」
ということで、
「死体を燃やす」
というのが考えられる。
「焼けた死体ではDNA鑑定は難しい」
ということになるからだった。
だが、
「詐欺出版社」
というものと、工場の社長との関係。
さらに、
「裁判によって、これまで隠れていた詐欺集団のやり方が露呈してくると、タイミング的に、うまくこの事件に当てはめることができる」
ということで、
「詐欺集団とすれば、逆に墓穴を掘ってしまった」
といってもいいだろう。
つまり、この事件において、山形が殺されたというのは、放火を装ったことでの、保険金詐欺が目的ということではなく、
「詐欺を行ったことでの出版社に対し、在庫を引き受けるということで、一種の、詐欺の片棒を担いでしまった」
ということで、逃れることができなくなった、
「一蓮托生性」
というものに、工場の従業員の奥さんが、
「詐欺の被害者だった」
ということで明るみに出ては困ることが、詐欺側にも持ち上がったということで、
「今回の、放火殺人というものの、本当の目的は、山形による、脅迫ということが大きかったのではないだろうか?」
もちろん、詐欺だということになり、その片棒を担いだ工場側としても、
「これ以上、詐欺が明るみに出れば、工場閉鎖は免れない」
ということになるだろう。
それだけではなく、さらに、脅しというものがあれば、そこで、
「ジレンマに陥る」
というのは当たり前のこと、
しかも、それぞれに、同じジレンマでも、内容が違うということから、本来であれば、
「殺人というのはやりすぎではなかったか?」
という考えが出てくるのではないだろうか。
この話は、完全には、表に出ていない。この話は、あくまでも、
「良治が書いた本」
というものからの話であった。
良治とすれば、
「これは完全なフィクションです」
と書いてはいるが、それは、
「社会問題になる」
ということと、
「放火」
ということが、模倣犯を生んでしまうということで、
「これはフィクションだ」
としたのだ。
しかし、実際には、警察発表も中途半端であり、謎解きの最後はまったくのフィクションであった。
ただ、最終的に辻褄が合うように作品が出来上がっているということから、
「なまじ、全部がフィクションだ」
というには、さすがに無理というものがあるだろう。
それを思えば、
「今回の事件というものは、そもそも、詐欺集団の出現から始まっている」
といえる。
ただ、それも、
「小説家になりたい」
あるいは、
「本を出したい」
という人の夢と希望が、あまりにも長い間阻害されてきたということから生まれた詐欺事件ということではなかっただろうか。
それを思えば、
「このような事件は、いずれ起こるべくして起こる」
という事件ではなかったのだろうか?
それを一番感じているのは、作者である良治であった。
ちなみに、この本が、どこから出版されたのかというのは、
「フィクションです」
ということで、最後を締めくくることにしよう。
( 完 )
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作品名:詐欺事件のフィクション 作家名:森本晃次



