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限りなく事件性のある

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「凶器から、事件を洗うことはできない」
 ということになり、ただでさえ、
「彼を恨んでいると思われる人は、かなりいる」
 と考えると、
「捜査は長期戦だ」
 ということになるだろう。
 そもそも、霧島の性格を知っている人は、これが長期になってくると、次第に、
「捜査するのも、億劫」
 と感じるようになるかも知れない。
「絶対にいけないこと」
 ということであるが、人間である以上、それも致し方がないことなのかも知れない。
 もう一つの事件が、この署内で起こっていて、そちらも、
「少し不思議な事件」
 ということで、捜査が行われていたのだ。
 こちらは、
「一見、自殺」
 ということであったが、自殺者の近くに、ナイフが落ちていて、そのナイフには血痕がついていた。
 自殺は、服毒自殺によるもので、吐血に混じる形で、ついていた血痕であったが、明らかに飛沫結婚であり、その血痕には、
「自殺者とは別人の血液」
 ということであった。
 しかも、
「その飛沫血痕は、吐血の上についていて、明らかに、自殺者の犯行ではない」
 ということは分かっていたのだ。
「となると、誰かが、わざと、ここに凶器を置いていったということになる」
 ということであるが、
「あまりにもできすぎているのではないか?」
 ということである、
 考えてみれば、
「そもそも誰かを殺したとすれば、被害者はどこにいるのか?」
 ということで、
「発見されないということは、犯人が死体を隠した」
 ということになる。
 すると、
「おかしなことになるのではないか?」
 ということで。
「犯人は、死体を隠したいと思っているのであれば、なぜ、凶器をこれ見よがしに、ここに放っておいたのか?」
 ということになる。
「それは、犯人を、自殺した人の仕業にしたかったからじゃないか?」
 という人もいたが、
「だったら、死体がそろそろ発見されていなければいけないんじゃないか?」
 ということであった。
「でも、死体をなるべく遅く発見させたいという計画かも知れないですよ?」
 というと、
「死亡推定時刻を曖昧にしたいということかも知れないな」
 ともう一人がいう。
「だとすれば、犯人には、アリバイがないということになりますね」
「どういうことだい?」
「アリバイがハッキリしているのであれば、なるべく死体が早く見つかって、死亡推定時刻がハッキリしている方がいいですからね。アリバイ工作はしていないと思っていいんじゃないですか?」
 というので、
「なるほど、今の時代は、昔のように、アリバイ工作がしやすいわけではないからね。特に、防犯カメラや、今では車の中にドライブレコーダーもあることから、いつ、どこに映っているか分からないからね」
 と上司が言った。
「でも、アリバイ工作というのは、逆に、カメラにわざと映るということで、完璧なアリバイになる」
 ということもあるわけで、頭のいいやつは、いろいろと考えてくるのかも知れないともいえるだろう。
 そんなことを考えていると、
「凶器からは、何か事件性はあっても、その全貌がなかなか見えてこない」
 ということであった。
 要するに、
「事件性を示すものはあるが、捜査をしても、何も出てこない」
 ということで、警察としては、
「実に大きなストレス」
 ということになるのだ。
 そもそも、
「自殺の原因」
 というものが、最初は、
「借金によるもの」
 と思われたが、実際には、
「男の借金は、完済されていた」
 ということであった。
 警察としては、最初は、
「この自殺と、事件とは直接的な関係はない」
 ということで、自殺の捜査はしなかった。
 というのも、
「これだけハッキリと、事件性が残っていれば、捜査を進めれば、すぐに、その事件というものが見えてくる」
 ということだと思っていた。
 しかし、実際に、なかなか見えてくるものではないということで、
「自殺からも、事件を追ってみるしかないか」
 ということで、
「手掛かりの一つ」
 ということで、遅まきながら、
「自殺者の捜査」
 というのも行われたのだ。
 ただ、
「解剖まで行って、自殺に間違いない」
 ということになったのだから、遺族の心情を考えると、
「事件性のあるもの」
 との関連性を大っぴらに捜査することはできなかった。
 そもそも、まだ、
「死体が見つかった」
 というわけでもないし、被害届が出ているわけでもない。
 そういう意味では、
「事件性は大いにあるが、事件として扱っているわけではない」
 ということから、
「市民に対して、不安をいたずらに煽ることはできない」
 といえるだろう。
 しかし、
「こんな時でも、ズケズケと、他人に関わっていき、自分の信念のもとに、捜査をする」
 という警察官もいる。
 考えてみれば、
「今、記憶を喪失してしまっているという元警察官」
 である、
「霧島警部補」
 であれば、
「捜査がやりにくい」
 などということはないだろう。
「俺の方で、事件に強引にしてやる」
 というくらいの気概を持っていて、
「警察権限ギリギリで動く」
 というような、
「型破りな警察官だった」
 といってもいいだろう。
 だが、その霧島警部補は、かつて、
「名刑事」
 と言われたかも知れないが、いきなり警察を辞めて、今では、
「何をしているか分からない」
 という、ただの一般市民となっていたのだった。
 それが、偶然なのか、この事件性が限りなくありそうなところの近くで、時期もそんなに差があるというわけではないという時において、
「誰かに殴られて、記憶を失ってしまった」
 ということ自体は必然かも知れないが、これが、
「今のタイミングのこの場所で」
 ということになれば、
「偶然だ」
 と果たしていえるだろうか。
 ただ、所轄の方とすれば、
「霧島の事件」
 というものと、
「自殺者と限りなく事件性のあるもの」
 というものを、
「ただの偶然」
 としてしか見ていなかったのだ。
 それは、
「霧島警部補という人物がどういう人なのか?」
 ということを本当に知らないということからであろう。
 しかも、
「他の署から捜査に来ているのだから、任せればいい」
 というくらいに考えていて、
「警察の縄張り意識」
 というものが、いかに邪魔をしているかということを、それぞれの警察署も、分かっていなかったのであった。
 だから、霧島警部補の家を捜査した時、
「ナイフが発見された」
 という、
「自殺者の事件」
 と同じような状況があったということは、それぞれに知らなかったのだ。
 実際には、
「霧島警部補の自宅の捜査」
 というのは、最初から考えられたことではなかった。
 なかなか、
「霧島警部補の記憶が戻らない」
 ということと、
「襲撃するほど憎んでいるという人物が多すぎて、絞り込むのが難しい」
 ということで、
「しょうがない」
 という発想から、
「家宅捜索令状を取って、部屋を調べるしかない」
 ということであった。
 実際には、心情的に、
「そこまで、霧島のために、警察が動く必要があるのか?」
 という思いもあったが、それでも、
作品名:限りなく事件性のある 作家名:森本晃次