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2 信二の妻の想い
あの夜、押し入れの奥から出てきた箱を見た瞬間、
私は全部わかってしまった。
ああ、この人は
ずっと別の場所に片足を置いたまま
家に帰ってきていたんだな、って。
箱を開けたら、
重くて、無口で、やけにきれいな塊が入っていた。
触った瞬間、冷たくて、
でも不思議と嫌じゃなかった。
この人は、
黙って洗濯をして、
黙って残業して、
黙って子供を抱いてきた。
その「黙って」の奥に、
これを隠してたんだ。
怒る理由はいくらでもあった。
危ないことをしてたこと。
家計に相談しなかったこと。
夢なんて、もう終わった年齢でしょう、って。
でもね。
この金を見て、
私は初めて、
この人が“我慢してた夢”の重さを知った。
たぶん、
家族を選んだことを後悔はしてない。
でも、置いてきた自分を
ずっと弔ってたんだと思う。
「バカね」
そう言ったのは、
責めたかったからじゃない。
よく一人で抱えてたわね、って
言い換えられなかっただけ。
その夜、私は眠れなかった。
隣で寝ているこの人の背中を見ながら、
少しだけ思った。
夢を掘り当てた人は、
幸せになる資格があるんじゃなくて、
誰かを幸せに使う責任があるんだ、って。
この人は、
きっと正しい使い方をする。
そう信じられたから、
私は何も言わなかった。
金は、
夢の形をしていたけど、
あの人そのものだった。
重くて、
不器用で、
最後には、
ちゃんと手放すところまで含めて。



