GOLD
山ちゃんが来た。
大きなリュックを背負い、カメラは持っていない。
それを見て辰雄は言った
「YouTubeはやらないのか」
「もう、いいです」
二人は川原に座った。
「達夫さん……」
「なんだ深妙な声 出しやがって」
山ちゃんは、黙って川を見ていた。
「掘り方、教えてください」
「もう教えることはない」
「でも……」
黙っていた達夫は、やがて川の流れを指した。
「見ろ。
金は、速い流れには残らん」
⸻
翌朝。
達夫は、山ちゃんを連れて、川上に行った。
「ここだ」
山ちゃんが掘る。
達夫は、見ているだけ。
パンニング皿の底に、微かな光。
「……出た」
「少しだな」
「でも、本物です」
達夫は、頷いた。
「それでいい」
⸻
川風が止まり夕闇が迫ると二人は達夫の家に戻った。
達夫は、小さな木箱を取り出した。
「何ですか」
「俺の全部だ」
。
中には、これまで拾った、
売らなかった微細な金。
「……もらえません」
「もらえ」
「……」
「金はな、
持って死ぬと重い」
山ちゃんは、達夫からの金を形見のように受け取った。
⸻
数日後。
達夫は、川原で、何かを埋めた。
つるはし スコップ今まで長年使用してきた道具だった。
「お前も、よく夢を見た」
達夫は、立ち上がれず、その場に座り込んだ。
夕日が、川を金色に染める。
「……十分だ」
背中を丸めて、寂しさが漂う達夫は夢を諦めた老人のように見えた。
⸻
3 その後
山ちゃんは、今も掘っている。
だが、もう配信はしない。
達夫の道具は、土の中で眠っている。
そして達夫は病院のベッドで癌と戦っていた。
掘られなかった場所は、
友人の未来のために残された。
金は、土にある。
だが――
生き方は、人に残る。



