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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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 丘を越えた先は、驚くほど静かだった。
 風の音が変わる。
 土の色も、わずかに暗い。

 少年は地面にしゃがみ込み、手で土をすくった。

「マイ・グランドファーザー」

 そして、胸を叩く。

「ディス・ランド」

 アボリジニ――。
 この土地の、本当の持ち主。

 山ちゃんは、思わずシャベルを下ろした。

「……掘っていい?」

 少年は少し考え、それから、小さく頷いた。




 金属探知機が、低く、確かな音を立てた。

 ピ―――。

 心臓が跳ねる。

 掘る。
 慎重に、慎重に。

 赤土の中から、鈍い光。

 山ちゃんの手が震える。

 ――重い。

 ――冷たい。

 ――本物だ。

 金塊だった。
 疑いようのない、自然金。

「……あ」

 声にならなかった。

 少年は、静かにそれを見つめている。

 喜ばない。
 驚かない。

 ただ、知っていた、という顔だった。



 山ちゃんは金塊を握りしめた。
 頭の中に、数字が浮かぶ。

 これを売れば。
 人生が変わる。

 チャンネルを更新すれば。
 再生数は跳ねる。

 でも、少年は言った。

「ゴールド、ノット・オウン」

「……え?」

「ラン。ムーブ。ステイ・ノー」

 金を持って逃げろってか?

 山ちゃんは、金塊を見つめ、ゆっくりと少年に差し出した。

「……ここは君の祖先の土地だ」

 少年は、首を振った。

「ユー・ファインド」

「でも……」

 少年は、山ちゃんの胸を指した。

「ユー・チェンジ」と言って笑った





 日が沈む。
 金塊が、最後の光を反射する。

 山ちゃんは、しゃがみ込み、少年の手を取った。

 そして、金塊を、そっと置いた。

「……これは、君の未来に使って」

 少年は、しばらく動かなかった。

 やがて、深く、深く頷いた。

 別れ際、少年は小さな石をくれた。
 金ではない。
 ただの、丸い石。

「リメンバー」

 山ちゃんは、石を握りしめた。



 日本に戻った山ちゃんは、動画を一本も上げなかった。

 代わりに、河原で、静かに掘り続けている。

 あの日の金塊は、ニュースにも、記録にも残らない。

 だが時々、彼は思い出す。

 赤い大地と、黒い瞳。
 そして、与えた重み。

「……掘ったな 見つけたんだよな金塊。。。」

 誰もいない川原で、山ちゃんは小さく笑った。

 手の中の石は、今日も、金より重かった。

作品名:GOLD 作家名:海野ごはん