小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

GOLD

INDEX|4ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 


第二章 再発掘(リ・ディグ)



 シャベルを地面に突き立てたまま、山ちゃんはしばらく動かなかった。
 風が赤土を舐め、ユーカリの葉が乾いた音を立てて揺れている。
 山ちゃんは一人 またオーストラリアの大地に立っていた。

 GoProはない。
 ドローンも、予備バッテリーも、日本に置いてきた。

 ――今回は、撮らない。

 それだけを決めて、彼は再びバララットに戻ってきた。

 二年前、達夫と信二と三人で来たあの旅は、今や動画としては「伝説回」になっている。
 再生数は三百万。コメント欄はいまだに騒がしい。

《あのオッサン泣いてるの草》
《金より友情ってやつ?》
《続編まだ?》

 だが山ちゃんは、続きを撮らなかった。

 金が出た。
 正確には、出た「と思った」。
 強盗に遭い、法律に引っかかり、結局は金はなかった。

 それでも、あの旅のあと、人生は確かに変わった。
 金ではない何かを掘り当てた気がしていた。

 ――でも。

 あの時、本物の金を掘っていない。

 その事実だけが、喉に引っかかった小骨のように残っていた。

「……よし」

 山ちゃんは一人、声に出して言い、シャベルを握り直した。


 今回は、徹底的に合法だ。
 採掘許可、土地使用申請、地図、座標。
 二度と失敗しないと思い、あるたけの知識を、
 ノートにまとめて持ってきた。

「違法じゃない冒険って、こんなに地味なんだな……」

 誰もいない丘。
 観光客も、他の採掘者も見えない。

 金属探知機の音だけが、乾いた空気に響く。

 ピッ。

 ピピッ。

 ――違う。

 何度も、何度も、違う。

 掘って出てくるのは、釘、弾丸の欠片、錆びた馬具。
 ゴールドラッシュの残骸。

「……みんな、夢を落としてったんだな」

 山ちゃんはそれらを袋に集め、静かに埋め戻した。

 夕方、腰が悲鳴を上げた。
 座り込み、水筒の水を飲む。

 その時だった。

 背後で、砂を踏む軽い音がした。




 振り向くと、アボリジニらしき少年が立っていた。

 年は十歳くらいだろうか。
 肌は黒く、目が異様に澄んでいる。

「……ハロー」

 山ちゃんが言うと、少年は少し考え、頷いた。

「ユー、ゴールド?」

 片言の英語。
 山ちゃんは笑って首を振った。

「ノー。ノーゴールド。ノーラック」

 少年は少し笑い、地面を指さした。

「ノット・ヒア」

「え?」

 少年は歩き出し、丘の反対側を指した。

「ヒア。グランド、ディファレント」

 地面が違う――。

 山ちゃんは一瞬迷い、それからシャベルを担いだ。

「……案内してくれる?」

 少年は何も答えず、歩き出した。



作品名:GOLD 作家名:海野ごはん