悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(北部九州)
阿蘇山のカルデラの東側は、その他の部分より標高が高く、そこを走るR256には峠もある山岳道路だ。そのため、南郷谷の東部の高森町は奥まった場所となり、そこまで、JR豊肥本線の立野火口瀬のスイッチバックの中のJR立野駅から続く第三セクターの「南阿蘇鉄道高森線」が延びている。その終着駅の高森駅に向かった。
高森駅の駐車場の端で、20代くらいの男性3人が、何かの像の前で写真を撮っていた。尋ねたところ、漫画・アニメの「ONE PIECE」に登場するキャラクターの「フランキー」の像だという。私は「ONE PIECE」のコミックもアニメも見ないため、全く知らなかったが、たいそう人気があるようだ。
彼らは三脚や自撮り棒を持っていないようだったので、彼らの携帯で3人の写真を撮ってやった。すると、お返しに、私の写真を撮ってくれるという。その時「フランキー像のように両手は上げなくてもいいのですか?」と訊かれたが、普通に撮ってもらった。
駅舎の中に入ると、時刻表などの情報はあるものの、「ONE PIECE」関連の商品が並び、壁にはそれらのポスターや写真などが貼られ、奥に行くとアニメの原画のようなモノまで並んでいて、まるで「ONE PIECE」のグッズを売っているショップのような雰囲気だった。
ところが、この駅舎にはどことなく懐かしさを感じた。それは、根子岳の登山が終わり、この駅に来たことがあるからだ。また「思い出ばなし」になってしまうが、聴いてください。
大学生の頃、趣味は幾つかあり、そのひとつが登山だった。
出身高校の先輩たちに誘われたのがきっかけで始めた登山だったが、その中のひとりがワンゲル部の経験のある人で、どうもマイペースでの山行きがしたかったようで、仲の良い山の素人の友人たちと登り始めたという。
彼らとは、九州内だったが時々、登山をしていたが、ある日、単独で根子岳に登ることを決め、先輩にその旨を伝えると、下山したら必ず電話を入れなさいと指示された。山男としての先輩の優しさを感じた瞬間だった。
その日は軽装備でひとり、朝早くアパートを出発して、JR豊肥本線の最寄りの竜田駅(たつた・えき)までバイクで行き、そこからディーゼルカーに乗り、阿蘇谷の宮地駅(みやじ・えき)で下車して、根子岳を目指した。この日は全コースを歩くと決めていたので、あまり記憶していないが、多分、駅から登山口まで歩いたと思う。
根子岳は頂上部分がギザギザした山容で知られており、先ずはその最高峰の天狗峰(1,433m)を目指した。山頂の直下には「鎖渡し」もあるかなり険しい登山ルートだが、何事もなく登頂した。なお、いつからかは知らないが、天狗峰は確か今でも、崩壊により登頂は禁止されているはずだ。
頂上から周囲を見渡すと、南北はカルデラが広がり、西側に見える阿蘇山の最高峰の高岳の険しい山容が想像以上だったことだ。そして、ギザギザのピークを東側に縦走して根子岳東峰まで行き、そこで昼食を食べた。
暫く休憩してから、南郷谷に続く尾根を下り(大戸尾根ルート)、その先の牧場の中を歩き、最後は高森駅までの舗装路を歩いたのだが、その時は疲労が溜まっていて、やっとたどり着いた状態だった。
今でも、阿蘇山のロードマップを広げると先ずは、この日に歩いたルートをたどってしまう。
「ジル」で立ち寄った高森駅の改札口から、トロッコ列車の客車が見えたので、ホームに出てみた。ちょうど、ディーゼル機関車とトロッコ客車の連結作業が行われていて、その後、車掌がマイクで、次のような現状説明を始めた。
2016年4月14日に発生した「熊本地震」で、高森線の橋梁やトンネルが崩壊し、全線運休になったが、同年7月には中松駅~高森駅間が復旧し、トロッコ列車「ゆうすげ号」も含めた営業を再開した。高森線は今、豊肥本線に繋がっていないため、「観光列車」のみの運行になっていて、駅舎内には、復興を祈るメッセージが多々あるとのこと。
ちなみに、この「キャンピングカーの旅」の1年半後の2023年4月に、3代目の駅舎が落成し、全線復旧は災害から7年以上を費やした2023年7月で、同時にJR豊肥本線の肥後大津駅まで午前中の2往復の乗り入れも始まった。
ここで、高森町に関するふたつの寂しい出来事を紹介するが、ひとつは発展するはずが中止になったこと、もうひとつは観光面でマイナスになったこと。でも、それらを背負って奮闘している南阿蘇鉄道高森線だと思えば、目頭が熱くなってしまう。
旧国鉄の計画では、宮崎県の高千穂までの延線の工事が着手されたものの、高森トンネル掘削中の異常出水で工事が中断し、その後、旧国鉄の財政悪化で、全線の30%が完成した状態で工事はストップし未成線となった。その後、高千穂線と高森線が廃止対象になり、両線は何とか第3セクターとして存続したが、高千穂線の方は台風による甚大な被害肩の復旧できず、廃線となった。
もうひとつは、この高森から阿蘇中岳までのバス運行がなくなったこと。その理由は、観光客の回遊需要の減少による観光ルートの変更、それに伴う公共交通機関の運行状況の変化などの様々な要因があり、その結果、阿蘇山観光の南の玄関口としての機能が消滅したことだ。
今後は南阿蘇鉄道高森線を有効活用することで、現状打開につながって欲しいものだ。
今から走る高森駅からのルートは、「根子岳」の東側の峠道のR256で、北上して阿蘇山の北側のカルデラの阿蘇谷に向かう予定だ。
実は昨夜、今日の旅のルートを考えていた際に、久し振りに阿蘇山を訪れることになるため、「阿蘇山満喫ルート」と題して、出来るだけ多くの場所を回り、最後は、阿蘇谷の道の駅「阿蘇」をゴールに決めた。
そのルートの最初は南郷谷の「白川源流」と「高森駅」で、つい先ほどまで回ってきた。
そして、一般的にはマイナーなルートかもしれないが、私にとって外せないのは、「根子岳」の東側を北上するルートで、「根子岳」の荒々しい山容を間近に見ることができるはずだ。
阿蘇谷の道の駅「阿蘇」に立ち寄って、車中泊のしやすさを確認してから、「草千里」を経由して、噴煙が立ち昇る「中岳」を目指す。
「中岳」から南郷谷に下ってからはカルデラを右回りに走って、新しく架けられた「新阿蘇大橋」を渡ってから立野火口瀬を通過して、道の駅「阿蘇」に到着するという「阿蘇山回遊ルート」だ。
十分な時間を過ごした高森駅からは市街地を抜け、「根子岳」の東側を回る待望のR256に入り、北上を始めた。学生の頃に、このルートをバイクで2回ほど走ったことがあり、その時に見た険しい「根子岳」の東側に山容が忘れられず、この「キャンピングカーの旅」で、もう一度見たいと思っていたためだ。
次第に「根子岳」が近付いているはずなのだが、杉林などで、その全景が見えない時間が続いた後に、「根子岳」の南側の山容がそっくりと見える場所に出た。すかさず「ジル」を路肩の駐車スペースに停めて、何枚も写真を撮ってしまった。山頂部はギザギザしたピークが東西に続き、その中で最も大きなピークが最高峰の「天狗岩」だ。そこからの尾根と谷が繰り返す迫力ある南斜面はお気に入りの山容だ。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(北部九州) 作家名:静岡のとみちゃん



