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一感情全偶然

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 ということで、
「お互いに、ざっくばらんな話をしよう」
 といっても不思議なことではなかった。
 それを踏まえたうえで、お互いに、
「松島の元女房である、
「杉下さつき」
 が、初範の母親ということで間違いないということになったのだ。
 そうなると、松島は、和子との手前、
「初範に本当のことをいうわけにはいかない」
 ということで、この話はここまでということにした。
 それにしても、
「本当にこんな偶然があるというのか?」
 ということを松島は考えていた。
「一言話すだけで、今の関係者全員がつながってくる」
 というような話を、一人で抱え込んでいるということだ。
 それを考えると、
「隠し続けることの難しさ」
 というものを、今さらながらに感じさせられた。
 その時、松島が考えたのは、
「今の俺の思いを、かつて、さつきはしたのではないか?」
 ということであった。
 どんどん先に進んで、旦那を置いてけぼりにして、旦那が。
「このままでは危ない」
 ということに気づき始めた時は、嫁さんは、
「二度と帰ることのできない三途の川を渡ってしまっていた」
 ということだったのだ。
「相談してくれればよかったのに」
 ということで、何度悔やんだことだろう。
「勝手に先に進むなんて許されない」
 ということで、嫁さんを恨んだこともあった。
 しかし、実際には、
「嫁さんが悪い」
 というわけではなく。
「そのことに気づかなかった俺が悪かったんだ」
 ということであった。
「結局、俺が苦しめたんだよな」
 と思うと、自分も反省というものを十分にする必要があるということであった。
 そして、今の自分の立場を考えると、
「今の俺が誰を気にしないといけないのか?」
 と考えた時、
「和子のことだ」
 と感じた。
 実際に、
「相思相愛」
 だと思っている。
 確かに最初は、
「見合いを断る口実だ」
 と思っていたが。そうではない。
「明らかに俺を好きになってくれたんだ」
 という思いが強いのだ。
 結婚するかどうかは分からないが、いずれは、母親の洋子に遭うことになるというのは間違いない。
 その時、
「俺はどう対応すればいいのだろう?」
 という思いに駆られた。
 その時感じたのは。
「俺は、和子の後ろに洋子の幻を見ているのではないか?」
 という思いであった。
 ただ、雰囲気や表情が似ているといって。
「洋子の生き写し」
 ということではないようだ。
 洋子という女は、実際に会っていないので、今の和子を見ていて感じるだけだ。
 ただ、
「今なら、洋子と会ったとしても、問題がない気がする」
 と思えた。
 あくまでも、過去の女ということで、
「自分の中で、タイムリープが、洋子を通して完成している」
 と思えていたのだ。
 しかし、
「初範はさつきの息子」
 ということは分かっているが、
「和子が洋子の娘だ」
 という確証はない。
 その証拠に、それから少しして、和子と二人で歩いている時、
「和子の母親」
 という人に遭ったが、明らかに別人で、お互いに、挨拶が、
「初めまして」
 ということであった。
 ただ。母親は、
「二人が交際している」
 ということに気づいたようだが、その件に関して何も触れようとはしなかった。
「まさか、洋子は、一瞬にして気づいたのだろうか?」
 と思ったが、実際には、
「その瞬間が、洋子にとっての、自分との決別の瞬間だった」
 ということではないかと思ったのだ。
「あの時、本当に俺から別れを告げて離れていった洋子。あれは、本当の決別ではなかったのかも知れない」
 という思いである。
「そうでなければ、自分が和子に惹かれることも、和子が自分に惹かれることもなかっただろう」
 ということで、
「偶然というものが、一人の感情によって、その場面の状況というものを決めるのではないのだろうか?」
 と、松島は考えていた……。

                 (  完  )
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作品名:一感情全偶然 作家名:森本晃次