一感情全偶然
だから、話の内容もさることながら、話し方やくせを考えると、間違いなく、
「洋子を見ているようだ」
と思えてきた。
思わず、このまま、
「付き合ってほしい」
といっても、和子は承知しそうな気がしたからだ。特に、
「私はお母さんと似たところがあって。それが、年上好きというところだと思っているの。特に、お父さんくらいの人でも、全然大丈夫で、そういう意味では、松島さんもありですよ」
というではないか。
ただ、この話は、実は今、
「会社ぐるみのところで、私にお見合いの話が来ているんですよ。会社の存続にかかわるということで、その相手というのが、うちの会社のスポンサーのようなところで、いわゆる政略結婚のようなんですよね」
というのだ。
大団円
「今の時代に、そんなことがあるんだね」
ときくと、
「ええ、そのようなんです。もし私が断ったりすれば、私の父親の会社が取引停止ということになり、零細企業なので、あっという間に倒産させられてしまうんですよ」
ということであった。
「そんなひどい」
というと、
「でも、他に決まった人がいれば、それを強制することは、セクハラ、パワハラになるということで、その時だけは、しょうがないということになっているんですよね。それは、もちろん、形式的なことであっても、その詳細までは会社に分かるわけもないし、もし、調べようとすれば、それこそ、大きな問題になるということで、会社には、そこまできないというしがらみがあるんですよね」
ということであった。
「なるほど、それで、私でもいいと思ったんですか?」
「それもあるんですけど、実際に、松島さんを見ていると、私も惹かれるところがあって、どうも、お互いに同じものを見ているわけではないのに、結果的に合っているところを目指していると思えてきたんですよね。最初は申し訳ありませんが、そういう不健全な理由ではあったんですが、次第に惹かれたもの事実なんですよ」
と言われた。
「相手は誰なんですか?」
「相手は、大久保初範さんといって、株主企業の跡取り息子で、今は専務に収まっているということなんです。別に悪い人だとは思わないんですが。どうしても。会社の犠牲になるというのが許されない気がして」
というのであった。
今の時代に、そんな古めかしいことがあるというのは、実にありえないことではないdろうか。それを考えると、
「それだけ会社が、前にも進めないし、後戻りもできないところに差し掛かっているということになるんだろうな」
と感じたのだ。
だが、ある時、その大久保初範という男に遭う機会があった。
というのは、彼も、デザインに関しては。学生時代から専攻していて、実際に、
「会社内でも、デザインの専門家というのが、明らかに少ない」
ということで、専務である初範が、相手の担当と直接会うということもあるのであった。
今回の、
「政略結婚の話とほぼ同時に、会社間と取引が開始された」
といってもいい。
それだけお互いに、
「タイミングを間違えなければ。お互いに合併ということは、大いにメリットがある」
ということであった。
だから、水面下で、弁護士同士が動いたり、マスゴミにバレないような工作を行ったりと、経営面でも、いろいろな画策がもたれていた。
それは、
「政略結婚」
というものが、大きなポイントを握っていることには変わりないが、
「もし、ダメだった」
という場合にも、
「奥の手をいくつも持っている」
ということにしておかないといけないということであったのだ。
実際には、
「和子としては、そこまで真剣に考える必要はなかったのだろうが、和子よりも、相談された松島の方が、気になっている」
といってもいいだろう。
政略結婚の相手である、
「大久保初範」
という男性と話をしていると、その生い立ちに、どこか気になるところがあった。
「親同士が、元々政略結婚には程遠い、駆け落ちに近い結婚だったんですよね。それも、母親は、実はバツイチということで、父親は、初婚なんですよね。そんな状態で、家で許してもらえるはずもなく、駆け落ち同然で結婚したということでした」
という。
「それでも、お父さんは、今会社を経営されているということは、実家に戻ったということなのかい?」
と聞くと、
「ええ、そうなんです。さすがに、先代。私から見れば、先々代も、このままでは、会社が自分の代で終わってしまうと思ったんでしょうね。何とか見つけ出して話し合いを持ったというのです。話をしてみると、私の母親のしっかりした性格で、父親の手綱を締めているということで、これほど、会社を経営していく夫婦としてふさわしい二人はいないということで。先代が頭を下げる形で、戻ってくることになったんですよ」
という。
「なるほど、先々代もさることならが、あなたのご両親も、さぞやご立派な方なんでしょうね」
ということであった。
「ええ、そうだと思います。ただ。お母さんがたまにいうんですが。私のこの性格には、最初に結婚した相手の旦那さんの性格が反映されているような気がするってですね」
「というと?」
「私の父も母も、性格的には、経営者向きで、私のような芸術家肌なところはなかったというんです。父は、突然変異では? と笑っていたということですが、母は、これを、前の夫の性格が乗り移った気がするというんですね。もちろん、血のつながりがあるわけではないので、ただの偶然なんでしょうけど、お母さんは、短い間夫婦だっただけだけど、自分の中に。前の旦那の性格的なものが、伝染したような気がするということだったんです」
というので。
「そうなのかな?」
「というと?」
「私は、それよりも、お母さんは、前の旦那さんと一緒にいることで、本来の自分の性格をその時は引き出すことができたということだと思うんですよ。そう考えると、息子のあなたが芸術家肌だということも当たり前と感じるでしょうね」
と、松島は言った。
「なるほど」
「だって、誰かを好きになるということは、その人と自分の相性を考えるのは普通じゃないですか? その中で、この人の前では、本来の自分の性格を前面に出さない方がうまくいくという考え方になると思うんですよね。それを、意識して態度に出す人と。無意識に心の奥に秘める人がいる。結局、男女の相性が合うというのは、その両方が合致したことでできることだと思うんですよ。きっと、お母さんは、初婚の時には、結構自分を偽っていたのかも知れないし、相手に妥協して、なるべく自分を出さないようにしていたのかも知れない。それは、私の前の奥さんがそういうタイプでしたね」
ということで、こちらも、結婚していた時のことを話すと、
「まるで他人事ではないような気がする」
と初範は言った。
お互いに話をしているうちに、どんどん打ち解けてきて、
「今まで他の人に話をしたことなどなかったんだけどな」
というような話を、結構突っ込んで話すようになった。
きっと、
「年齢では、松島が上で、立場的には、初範の方が上ということであるが、芸術面での話ということになると、あくまでも対等」



