一感情全偶然
ということを考えれば、
「自分から積極的に」
とはいけないと思った。
もし、彼女が、年上に対して、
「その包容力」
であったり、
「余裕を見せる態度」
であったりすれば、積極的な態度は、
「逆効果だ」
といえるだろう。
それを考えると、
「年上というものにあこがれを持つ」
ということは、
「父親を見ている」
と考えると、自分の父親の背中を思い出してみたが、
「女の子から見る父親の心境が分からない」
ということである以上、父親を演出するという考えは、あくまでも無意識に出てくるというものであり、意識をしてしまうと。
「交わることのない平行線」
ということで、結局、
「彼女が求めるものがどこにあるのか?」
ということになり、結局は、
「五里霧中に入り込んでしまって、迷路の中を、さまようことになるのではないか?」
と感じるのであった。
そういえば、思い出してみれば、洋子という女性は、母子家庭ということであった。
松島が付き合い始める前に、洋子は、別の男性と付き合っていたという話を聞いたのが、
「最初に付き合い始める前の、彼女の毎日のように、豹変していた時」
だったのだ。
「なるほど、そういうことか?」
と思ったのは、
「自分と付き合うということに、積極的になれなかったのは、その直近で、付き合っていた人と別れることになったからだ」
ということであろう。
当然のごとく、
「また破局を迎えれば、今度こそ立ち直れないかも知れない」
という思いがよぎったのではないだろうか。
しかも、松島が配属されてきた時、その時のまわりの人がどこか、
「俺と、洋子を結び付けよう」
という空気があったということを思い出したからだった。
「洋子に対して、前の傷を忘れて、新しい恋に生きてもらおう」
ということで、松島をけしかけたとすれば、それだけ、まわりの人が、
「洋子のことを心配している」
ということになるわけで、
「まわりから慕われている」
ということになるだろう。
ただ、話を聞いてみると、
「結構別れ際というのは、会社を巻き込む形で、大事になった」
といってもいいくらいだったという。
それを考えての、
「新しい恋」
というのを、まわりも考えたのではないだろうか。
そうでなければ、
「洋子は、立ち直れない」
とでも考えたのかも知れない。
だから、洋子自身も、
「このまま、あなたと付き合っても大丈夫なのかしら?」
と考えるというもので、洋子とすれば、
「もう恋なんてできない」
ということになるであろう。
ただ、ここまでは、まわりの人が何とかできても、ここから先は、
「自分にしかできないこと」
ということで、必死になって、相手の話を聞いて、大丈夫だということを思わせるしかないと思っていたのだ。
そこで、次第に気持ちが二人の間で落ち着いてきて、いよいよ、
「二人は公然に付き合っている」
という、
「安定期」
というものに入ると、やっと、精神的にも落ち着いてきた。
しかし、一つ大きな問題としてあったのが、
「洋子には結婚願望が強かった」
ということであった。
彼女は、どちらかというと、古風な考え方を持っている人であり、
「お父さんが、洋子が小学生の時に亡くなった」
ということもあり、
「一人で育ててくれた母親に対しても、早く結婚して安心させてあげたい」
という気持ちに溢れていたという。
その思いが結局。
「結婚を焦る」
という気持ちにしたのであった。
実際に、前に付き合っている人とも、
「結婚寸前までいった」
ということであったが、詳しい理由に関しては分からなかったが、結局、
「結婚にはどこかで支障が起こった」
ということから、
「二人は破局」
ということになったのだという。
同じように、松島の方も、
「結婚を考えている」
ということで、親に紹介するまではよかったのだが、
「結婚」
という具体的な話には、松島の両親は踏み込もうとしないということであった。
親とすれば、
「相手の女性がどうの」
ということではなく、
「まだお前は会社に入ってすぐの新入社員ではないか、結婚などというのは、まだ早い」
ということであった。
ただ、どうしても、洋子の気持ちや、母親の思いを考えると、
「俺が親を説得しないといけない」
と考えたのだが、どうも、松島の親とすれば、
「息子が相手の方に洗脳されている」
と感じたようだ。
もっとも、松島の説得として、あくまでも相手の立場を優先して話をして、まるで、自分の考えが、相手の立場に左右されているかのように見えていたのではないかと後から思えば感じるのだ。
もちろん、その頃は若さに任せて突っ走っていたということで、そんな子供を親は、
「危険だ」
と感じたのだろう。
それは分からなくもない。
しかし、実際には、自分の親以外のまわりから見れば、
「あの松島という男は、自分の親も説得できない」
ということで、それまでのひいき目で見てくれていた人が、
「あいつは頼りない」
というレッテルを貼られてしまったことで、
「次第に二人の間に亀裂が入る」
ということになってきたのだ。
松島とすれば、
「最初に、彼女が自信がないといっていたものを、自分に任せろといって説得した」
ということを考えると、松島自身、
「あの時のような気持ちに戻りたくはない」
という思いと、
「洋子と結婚できなければ、一生後悔する」
ということになると感じたのだった。
松島がその時感じたのが、
「俺は四面楚歌になってしまった」
という感情である。
まわりと、自分の親に挟まれて、ジレンマの状態になってしまったということで、
「孤立無援だ」
と思っていた。
本来であれば、誰よりも信じてついてきてくれていないといけないはずの洋子が、
「精神が不安定になり、別れたい」
と言いだしたりすることで、またしても、付き合い始めを彷彿される状態になってくるのであった。
だからこそ、
「また同じところに戻ってきた」
ということから、
「同じところをグルグル回っているという、堂々巡りを繰り返してしまっているのではないか?」
と感じるのであった。
そう思ってしまうと、
「時間だけがいたずらに過ぎていく」
ということで、
「まだまだ人生は長い」
ということを、忘れてしまい、自分が目の前のことだけしか見ていないということを分かっていないのであった。
そもそも、そのことを懸念していたのが、自分の両親だったのではないか。
とはいえ、堂々巡りを繰り返すということで、
「目の前しか見えていない」
という松島に、その理屈が分かるわけはないということであった。
結局、そんな状態が、膠着してくることになると、今度は、まわりが相手にしないようになり、二人で話をしていても、すれ違いというものが激しくなってきた。
これは、
「後で感じることになる、夫婦間のすれ違い」
というものに近いのだろうが、
「夫婦間でも分からなかったことが、この時の自分に分かるはずもない」
ということで、結局は、



