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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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誰が彼女を生かしたか

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6話「休息のドア」






七星さんが話を終えると、ドアがまたノックされた。私はもはや両耳を手で塞ぎたくなったくらい。

〝もうやめて!そんなに新しい人には耐えられない!〟

でも、ひとりでにドアは開き、そこへのっそり現れた男の人は、私を見もしなかった。

黒く薄い生地のカットシャツは長袖で、下はゆったりとしたスウェット。ぼさぼさの髪はまったく気遣いをしていないみたいで、まるで自宅からここまでそのまま歩いてきたみたい。

顔はよく見えないけど、淀むまま放ってある目は、彼が疲れているのかもしれないと思わせた。良いとも悪いとも言えない風貌だ。もっと元気なら、何か意見はあるかもしれない。

部屋の端にあるドアから真っ直ぐ歩いて反対の壁際近くまで来ると、その人は私達を振り向く。

七星さんは一人で呆れたように首を振り、響子さんは珍しく落ち込んでいるようだった。

「あなた方。追い詰め過ぎです。全員で少し話をやめ、休みましょう」

その声になぜか響子さんも七星さんも従って、奏君は相変わらずくうくう寝ていた。

「ごめんな、春子。疲れたろう。少し僕達は解散するよ。布団に入るといい」

そう言ったのは七星さん。彼はそれを最後に、向こうを向いてぼーっとしていたようだった。

名乗りもしない新住民は、壁際で何も掛けずに横たわり、のそのそ寝返りを打っていたけど、寝てしまった。



その次の日、不思議な事が起きた。


朝起きたら私は元の通りに一人で布団で眠っていて、彼らは居なかった。一人たりとも。代わりに、部屋の端に新しくドアが出来ていた。それは青い。目が覚めてすぐに気づいた。昨日、新しく来た人が寝ていた位置の壁だ。

安心するような、薄く清涼感のある色。海の水が青い理由。

私は勇気を出して、そのドアを開けてみた。ノブはあったし。

カチリとドアノブが回り切った音がすると、そこへ細い廊下が現れた。

廊下は、左側のみにドアが等間隔で出来ている。

〝ドアが突然出来るって、変よね…〟

ドアは人が作らないと出来ない。あと、家主の許可なしにドアなんか普通作らない。

私は「うーん」と唸りたい気持ちを押し殺し、元の部屋へ戻った。ドアが四枚あったのは目視で分かったし。


〝なんなのかしら〟

〝助かるってなんだろう〟

〝生きていたってここから出られないんだから〟

〝一生助かりやしないのに〟

〝でも、変ね。なんだかとっても、変な気分だわ…〟

〝これから、何かが起こる気がする〟

一人で考えても分からない。空回りする脳味噌は、その内それに飽きて瞼を重くしてしまう。

もう一度私は眠ってしまい、そのまま一日半程寝たらしい。だから、ある物音に気付かなかった。

もしくはこの部屋には、新たな空間が現れる時の物音なんてしないのかもしれないけど。



「おはよう春子。食事をしよう」

もう一度目が覚めた時には、七星さんが部屋の隅の台所に立っていた。