小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ヒトサシユビの森

INDEX|63ページ/86ページ|

次のページ前のページ
 


「亮太、インフルじゃなくて良かったな」
「無理すんなよ」
「ありがとうございます」
坂口建設の同僚たちから言葉をかけられて、亮太は軽く頭を掻いた。
同僚たちが退勤するのを見届けて、亮太は深呼吸した。
坂口専務は出かけていない。
同僚社員たちも全員退社した。
いま、坂口建設にいるのは、自分ひとり。
その事実を胸に確かめて、亮太は猟友会事務所の階段を身を隠しながらのぼった。
猟友会事務所のドアの前に立つ。
擦りガラスの細いスリットは暗色で、室内に誰もいないことを告げている。
ドアノブのすぐ上に、テンキーのついたボックスが据えつけてある。
暗証番号を押して、解錠するタイプである。
亮太はその暗証番号を知らなかった。
とりあえず、0を4回押してみた。
このタイプのカギの暗証番号は、通常それがデフォルトだと知っていた。
亮太はドアが反応して解錠するのを待った。
しかし、テンキーボックスは無反応のままだった。
「そりゃそうだよな」
そう呟いて、亮太はよろよろと猟友会事務所の階段を降りた。



作品名:ヒトサシユビの森 作家名:椿じゅん