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ヒトサシユビの森

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健市と坂口に背を向けて、玉井が作業台の前に座っている。
作業台の上に置かれた無線の受信機を操作している。
玉井は無線から発せられる音声を聴きとろうと、ヘッドフォンの片側を耳に当てていた。
茂木は部屋の片隅で、捕獲用の檻の上に手を載せて、所在なげだ。
檻のなかに、切り株のスツールに座っているいぶきがいた。
両手両足をロープで縛られ、目隠しをされている。
いぶきの足元にウルトラマンが転がっていた。
無線機のツマミをいじる玉井がヘッドフォンを外した。
「警察が行方不明の子どもを捜しているって」
「この子がそうなのか」
「子どもの名前は、溝端いぶきって言ってる」
「俺が言った通りだろ。幽霊なんていない」」
「稲山神社周辺を捜索中だって」
茂木はスマホを取りだした。
「慎平、何してる?」
「子どもが見つかったって、警察に通報を・・・」
健市は、そっと茂木のスマホを取りあげた。
「慎平、冗談は顔だけにしてくれ」
「慎平、この状況わかってるのか」
「だって・・・」
「死体を見られたかもしれないんだぞ」
「警察にペラペラ喋られたらどうする?」
「子どもの言うことだよ。警察だって真に受けないよ」
「慎平、おかしいと思わないか。なんであのガキがこの場所を知っている」
「それは・・・」
「聡はどう思う?」
「うん、5歳の子どもがひとりで来れる場所じゃない」
「裏で糸を引いている奴がいる」
「もしかして、母親?」
「どうする、健市」
「健坊、これ以上、罪を重ねちゃいけないよ」
県市は俯いたまま、暫し思案を巡らせた。
顔をあげると、坂口らを見回して言った。
「いい考えがある」
健市はいぶきを見やって、不敵な笑みを浮かべた。

作品名:ヒトサシユビの森 作家名:椿じゅん