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ヒトサシユビの森

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石束署で行われた最初の取り調べは半日に及んだ。
取り調べが終わった直後に、裁判所から新たな逮捕状が交付された。
追加された容疑は、溝端さちやの殺害である。
逮捕容疑を聞かされたかざねはすぐに、さちやの遺体の有無を担当官に尋ねた。
しかし担当官は回答を拒んだ。
身柄拘留されたかざねは、帰宅できずその夜を留置場で過ごした。
翌日早朝から再び取り調べが始まったが、新たに取り調べに加り主導権を握ったは、かのトレンチコートの男だった。
男は自らを、神室署の佐治と名乗った。
佐治は終始、威圧的な態度だった。
「どうやって殺した? 手で絞めたか、川に顔を沈めたか? それでゴミみたいに川に捨てたのか?」
”言葉の暴力”が容赦なくかざねに振りかかった。
「どうせ男とやりまくってできた子だ。愛情なんてこれっぽちもなかったろ」
かざねは怒りに震える拳を固く握りしめ、佐治を睨みつけた。
「なんだ、図星か。さっさと吐いちまえ」
睨み返してくる佐治に当初は喰ってかかったかざねであったが、次第に言葉を返すのが空しく感じられるようになった。
ついには黙して語らないことで、強い反抗の意を示すようになった。
そんな取り調べが14時間続いた。
トイレになかなか行かせてもらえない屈辱も受けた。
そして翌朝、また同じような取り調べが始まり、かざねの心は疲弊していった。
3日目の朝を迎えて、かざねの心身の疲労は限界に達していた。
取調室の歪んだパイプに座らされたかざねが想うことは、ただひとつ。
さちやの安否だった。
だが、佐治からも安否の答えは得られなかった。

作品名:ヒトサシユビの森 作家名:椿じゅん