ヒトサシユビの森
物証が見つかったことで、さちやが何らかの事情で川に転落したという見方に警察は大きく傾いた。
さちやの匂いに反応して道路上で立ち止まったという警察犬の挙動は、捜査線上から消された。
捜索範囲がさらに下流域へと広がるなか、時間の経過とともに、さちやの生死が危ぶまれた。
川への転落が単独事故なのか、それとも第三者の関与があったのか。
いずれにせよ、溝端さちやを見つけることが、石束署の至上命題であった。
その一方で室町は、川での遺留品の発見が偽装工作である可能性も視野に入れていた。
さちやは生きている。
生きているさちやを必ず見つける。
室町はかざねにあらためて約束した。
そして、引き続き自宅で犯人からの接触を待つよう、依頼した。



