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質より量

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 のようなものが催された。
 自分も含めた4人が招待されたかたちになったが、それが、中学時代の自分の、
「グループ」
 だったのだ、
 友達はマンションに住んでいて、父親は、海外赴任が続いていて、
「久しぶりの日本の正月だった」
 ということであった。
 そんな事情もある中で、元旦に皆遊びに来てくれたのが、主催家族としても、
「賑やかでうれしい」
 といっていた。
 真一少年は、その気持ちが分かった気がした。
 というのは、
「真一少年の父親も、毎日忙しくて、夜帰宅するのは、深夜になることが多かった」
 小学生の頃は、
「ずっと仕事で大変だな」
 と思っていたが、実際に帰ってきたのを見ると、結構酔っぱらっているのを見るということが多かった。
 それでも、中学生くらいになれば、
「営業で仕方なく飲んでいるのだから、これも仕事のうちだ」
 ということを分かるようになってきた。
 だから、相変わらず、
「お父さんは、仕事で忙しい」
 と思っていたのだ。
 だが、父親が、会社の人を家に連れてくることはなかった。
 前からなかったというわけではなく、真一少年が、小学校低学年の頃くらいまでは、時々、会社の部下という人をつれてきて、リビングで、飲んでいたものだった。
 だから、
「元々は、社交的だった」
 ということであるが、いつ頃だったのかということは忘れてしまったが、ハッキリしないだけで、どこかの時期で、誰も連れてこなくなったということであった。
 最初の頃は、
「つまらないな」
 とおもったり、
「寂しいな」
 とも感じたが、次第に、
「これが当たり前だ」
 と思うようになると、
「どこの家庭も静かで、賑やかなことを好まないんだ」
 と思うようになった。
 つまりは、
「どこの家庭も同じに違いない」
 という思い込みを抱くようになり、
「仕事を家に持ち込まない」
 といっている人の方が当たり前なんだと感じるようになっていたのだ。
 だから、たまに、こうやって友達から誘われると、
「これは珍しいことなんだ」
 と思うのだが、それが逆に、新鮮に感じられ、呼ばれるとうれしくなって、飛んでいくのだった。
 親の方としても、
「相手の家族に迷惑を掛けなければ、それでいい」
 ということであった。
 だから、子供としても、
「相手に誘われなければ、こっちから行くことはない」
 と思っていたのだ。
「相手が、おいでといっているのだから、その時点で迷惑ではない」
 ということであった。
「どのような行動をすれば、迷惑をかけることになるか?」
 ということは分かっているつもりなので、それさえしなければ、
「親に怒られることはない」
 と思っていた。
 だから、この日も、
「いってきます」
「いってらっしゃい」
 という、普通の会話から始まったので、いつものように、夕方には、
「ただいま」
「おかえり」
 という言葉を交わすことになると思っていた。
 しかし、事態は急変した。
 友達と遊んでいると、時間が経つのが思ったよりも短く、それだけ、
「楽しい時間だった」
 ということなのだろうが、皆、
「ここで帰ってしまうと、せっかく盛り上がった気持ちが萎えてしまう」
 ということで、主催側の子供が、
「皆泊まっていけばいいじゃないか」
 ということで、親に許諾を申し出ると、
「快く承知してくれた」
 ということで、
「じゃあ、皆お泊りで、夜を徹して話そう」
 ということになったのだ。
 つまりは、ここから先は、
「友だち同士の連携」
 ということになったのだ。
 友達の母親も心得ていて、
「じゃあ、皆、ここから親に連絡を取って、お泊りできることを話してね」
 ということであった。
 皆それぞれケイタイを使って、親に連絡し、ほとんど皆、二つ返事で、OKをもらっていた。
 しかし、真一少年の場合はそうはいかなかった。
 母親に電話を入れたのだが、母親は、
「お父さんに聞いてみないと」
 と言いだしたのだ。
 これは、母親が、
「自分では判断できないことが持ち上がった時の言い方」
 ということで、子供としては、
「えっ? 何を相談する必要があるというのか?」
 と感じた。
 父親に話をしていたようだが、すぐに、
「お父さんが帰ってきなさいということだから、すぐに帰ってきなさい」
 というではないか?
「えっ? 何がどうして?」
 と聞くと、また父親に聞いたようだが、母親は、
「相手のご家族に迷惑でしょ」
 というのだ。
「いやいや、だって、元々は相手が招待してくれたのであって」
 というと、
「それは、夕方まででしょう? それ以降は、家族の時間だとわきまえないと」
 という。
「だって、他の皆は泊まってい言って、家に連絡して許可を得ているのだから、俺だけが帰るというのは」
 というと、
「よそ様はよそ様、うちはうち」
 といって、怒っているようだった。
 後から思えば、会話の途中で、
「本来であれば、友達の家に迷惑をかける」
 ということが問題だったのに、それを覆すかのように、
「他の皆が親から承諾を得ている」
 ということで、
「言い訳をはぐらかすように話を変えたことが、親にとっては癪に障ったのかも知れない」
 とも感じたが、
「それにしても、これでは、子供の中での俺の立場は、丸つぶれだ」
 ということで、親は親の立場だけでものをいうが、
「子供の世界」
 というものをまったく無視した言い分には、さすがに、子供としても腹が立ったのである。
 そして、もう一つは、
「父親が、一切電話に出なかった」
 ということだ、
 たぶん、
「呆れてものも言えない」
 とでも思ったのか、それこそ、頑固おやじというものを地で行っているという感じであろうか。
 結局、真一少年は、
「親の承諾を得られない」
 ということで、
「それじゃあ、しょうがないわね」
 と相手の親実も言われ、それこそ、
「強制送還」
 という憂き目にあうことになったのだ。
 これは、子供とすれば、
「親も説得できないのか」
 と皆に思わせたことで、それだけでも恥ずかしいということだ。
 しかも、そのために、
「自分だけが、強制送還させられる」
 という、いわゆる、
「罰を受ける」
 ということで、
「これほどみじめなことはない」
 といえるだろう。
「親だったら、子供がそういうみじめな思いをしてまで帰られなければいけない」
 ということを分かって当然のはずなのにと思うのだ。
 というのは、
「親だって、自分が子供の頃があった」
 というはずなので、似たようなシチュエーションがあったのではないだろうか?
 そんな時、同じように、自分の親から、
「帰ってこい」
 と言われたのではないだろうか?
 そして、自分と同じみじめな思いをしたのだとすれば、俺だったら、
「大人になって、自分の子供に同じようなみじめな思いをさせたくない」
 と思うに違いない。
 それを考えると、
「本当に自分の親なのだろうか?」
 と感じてしまう。
 しかし、親というものを考えると、
作品名:質より量 作家名:森本晃次