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多重推理

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 バスの運転手も、
「車が停車している」
 ということで意識はあっただろうが、あくまでもそれだけのことで、
「反射的によけているだけ」
 というだけのことだったに違いない。
 当然、クラクションなど鳴らすわけもなく、お参りをした人も、バスが通ったとしても、それをわざわざ意識するということもなかったに違いない。
 この辺りは、昭和の頃は、本当に山しかなかった。
 ただ、山頂には、
「城址」
 と呼ばれるところがあり、
「南北朝時代に築かれた」
 という山城があった場所ということで、
「自治体の観光課」
 とすれば、
「文化財保護」
 ということで、しばらくは、
「住宅地などにはしない」
 という地域に指定していたのであった。
 しかし、
「城址公園」
 として整備されているわけではなく、山頂に少し石碑が残っていたりするだけで、
「重要文化財指定」
 というところまでは至っていなかった。
 ただ、ちょうど近くに大学誘致の話があったことと、その大学の考古学チームが、このあたりに眼をつけたということで、昭和の、ちょうど、高度成長期という時代あたりから、
「何か遺跡が出るかも知れない」
 というウワサガあり、それに伴って、
「大学の研究チームが入る」
 ということで、一応、10年をめどに、
「発掘目的」
 とされたのだった。
 しかし、
「10年ではらちが明かない」
 ということで、さらに10年の延長が認められたが、それでも、結果としては何も重要な出土物が見つかったわけではなかった。
 それで、それ以降は延長しなかったことで、世紀末前くらいに、
「文化財保護地域」
 からの指定が外れたということであった。
 そこで、民間に払い下げられた土地に、
「住宅街」
 であったり、
「物流センターの誘致」
 というものの建設予定が固まっていき、実際に、
「住宅街への転用が決定した」
 ということであった。
 住宅街建設に関しては、それほど大きなトラブルはなかった。
 昔であれば、
「立ち退き問題」
 であったり、
「ゼネコンによる談合」
 などという問題が、昭和時代であれば、日常茶飯事であっただろうが、
 実際に、
「バブル崩壊後」
 というのは、
「どうしても、保守的になることで、おとなしくなるという傾向がある」
 ということになる。
 そのおかげで、土地開発が、途中で停滞するということもなく、何とか予定通りに分譲地が出来上がっていったのであった。
 近くの商業施設や、学校や病院といった。
「街を形成する施設も、順調に出来上がっていき、順風満帆の様相を呈していた」
 ということであった。
 ただ、どこの街でも同じなのだろうが、昭和の頃、賑やかだった駅前がすっかりさびれてしまっていて、ほとんどの人が駅を降りると、駅前のバス停に列を作っているということであった。
 実際に、駅前のさびれた街並みには、マンションが立ち並び、
「この街をベッドタウンとして使っている」
 という人は、交通の便を考えて、駅前のマンションに住むという人も多いだろう。
「分譲マンションを買う」
 というよりも、
「賃貸住宅」
 を借りるという人が多いのではないだろうか?
 昔のように、
「30年ローン」
 などということで、ローンを組むという人もいるだろうが、
「転勤のある人にはできることではない」
 ということであったり、
「バブルの崩壊」
 ということによって、
「ローンを払えるような社会環境ではない」
 ということになっていた。
 というのも、
「ローンを払う」
 ということは、
「毎月決まった金額を払い続ける」
 ということで、
「ボーナス時期には、その分多めに」
 ということであったが、バブルが崩壊した時は、会社から、
「リストラ」
 ということで、会社にいられなくなるということが出てきた。
 それまで、
「当たり前だ」
 と言われた、
「終身雇用」
 などというようなものではなく、
「実力主義」
 ということで、会社を転々とするのが、優秀な社員と言われ、それこそ、
「海外企業のような会社」
 ばかりになってきたということであろう。
 それによって、ローンを払うことが難しくなったのだ。
 しかし、
「バブル崩壊以前」
 であれば、
「頭金さえあれば、分譲マンションの方が得」
 とも言われたものだ。
「30年ローン」
 ということで、確かに、一見高いように思われるが、実際に、総額から、その年月を割って、月々の払いを計算した場合と、賃貸マンションの家賃を、これから30年払っていくということを比較した場合では、
「分譲マンションを買う」
 という方が安いと言われることもある。
 だが、金銭的なことだけを考えるとそうなのかも知れないが、これが、実際問題ということで幅広く考えると、そうもいかないのが、現実であろう。
 というのは、
「転勤がある」
 ということも一つであるが、
「分譲マンションであれば、簡単に他に移る」
 ということもできないといえる。
 隣に、問題となる人が引っ越してきた場合、賃貸であれば、
「他に引っ越せばいい」
 といえるが、
「買った物件」
 ということであれば、そうも簡単にはいかないだろう。
 それを考えると、
「身軽な賃貸」
 の方がいいというのは当たり前のことである。
 特に、
「バブル崩壊」
 ということで、
「明日は何が起こるか分からない」
 ということになると、
「分譲住宅など怖くて買えない」
 といってもいいだろう。
 昔は、
「一軒家は、サラリーマンの夢」
 と言われたが、
「分譲マンションというものでも、サラリーマンの夢」
 ということになるだろう。
 特に今の時代は、
「物価上昇が果てしない」
 という時代であり、そのわりに給料はほとんど上がらないということで、まったくひどい状態だ。
「政府もまったく機能していない」
 ということで、
「国家をあてにもできない」
 そうなると、
「自分の身は自分で守る」
 ということで、結局は、
「住宅問題で、余計な金を使うわけにはいかない」
 ということになるであろう。
 自分たちにとって、
「いかに今後の問題に響いてくるか?」
 ということを考えてしまう。
 特に今の時代は、
「老後は地獄」
 といわれる時代である。
 それこそ、昭和の頃までは、
「定年退職、おめでとうございます」
 ということで、
「55歳で定年」
 ということになれば、
「年金で、悠々自適の生活が待っている」
 と言われていた。
「それだけ、年金制度が充実(いや、それが当たり前なのだが)していたわけで、今のように、悲惨な状況になる」
 ということはないのだ。
 今の時代の定年というと、
「まだ、結構な会社が、定年を60歳ということで、会社が、何とか、再雇用を」
 という程度である。
 しかも、
「年金は65歳から支給」
 ということになるわけで、確かに、
「60歳からの早期需給のできる」
 というが、実際に60歳からもらうとなると、その支給の割合は、
「65歳からもらえる場合に比べて、約3割減くらいになってしまう」
 というではないか。
 今の年金支給額」
作品名:多重推理 作家名:森本晃次