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二階級特進

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 ということにつながる。
 普通なら、アリバイ工作を先に考えるのだろうが、それが、どうしてもうまくいかないということであるならば、
「死体発見を遅らせる」
 ということが一番ではないかというのが、当然の考えといってもいいだろう。
 それと、もう一つ考えられることがあったのだが、なんとなく頭に引っかかっていて、後になって警察発表があったことで、そのことが頭に最後まで引っかかることになったのであった。
 というのは、
「死体が発見されたその靴に、別の場所の土があった」
 ということから、
「どうやら、死体は他で殺されて、ここに運ばれてきた」
 ということであった。
 ただ、警察が引っかかったのは、
「死体を運んできたはずのタイヤ痕がない」
 ということであった。
 ドロドロの道になっているから、少なくとも、車で来たのであれば、
「タイヤ痕があってしかるべき」
 ということだったのだ。
 それなのに、
「タイヤ痕がない」
 ということであり、しかも、
「下足痕」
 として残っているのは、
「川崎会長のものだけ」
 ということであった。
 近くに車を置いてから、ここまで運んできたということであれば、少なくとも、複数の下足痕があるはずだ。
「それがない」
 ということは、
「まるで、密室殺人のようではないか?」
 ということであった・
「ということになると、おやっぱり犯行現場はあの場所なのかな?」
 ということであるが、
「それも考えにくい」
 というのは、
「被害者は、明らかに刺殺されていて、凶器は付近になかった」「
 ということで、
「凶器は犯人が持ち去った」
 ということであろう。
 しかし、それ以上に、
「あたりに、ほとんど血痕が残っていない」
 ということで、
「明らかに、殺害現場が別だ」
 ということになるわけだ。
 ただ、よく調べてみると、
「死因は、出血多量によるショック死ではない」
 ということであった。
 解剖に回してみると、
「何らかの毒物で死に至った」
 というのであるが、
「実際には、その毒物が見つからない」
 ということであった。
 つまりは、
「実に不可思議な犯行現場だ」
 ということだということになるのである。
「死亡推定時刻は、死体が発見された時で、6,7時間だろう」
 ということなので、
「深夜の、日付が変わるころ」
 ということになるのだろう。
 そこから、
「早朝のどこかの時間で明るくなるのを待って運んできた」
 ということであれば、
「下足痕や、タイヤ痕がない」
 というのはおかしいということになるだろう。
 それを考えると、
 あたりを警察の鑑識が調べていたが、
「これといって遺留品らしきものはなかった」
 ということである。
 しかし、刑事がいうには、
「どうして、死体の遺棄がここだったのだろう?」
 ということである。
 わざわざ、痕跡が残る場所を選んで、しかも、
「そこに痕跡を残さない」
 という方法を選んだ。
 ということになるのだ。
 それはまるで、
「警察に対しての挑戦ではないか?」
 とも考えられ、少なくとも、現状での初動捜査とすれば、
「目撃者」
 というものがあるとは思えないし。
「別荘の人間に聞き込みは行うが、ここで、殺したのではないということになれば、家の中に痕跡でもない限り、捜査はまったく先に進まない」
 ということになるだろう。
 そもそも、何かの理由で、別荘の屋敷内で、殺害したとして、他の場所で発見されるようにしたとしても、あの場所であれば、まず自分たちが疑われるということくらいは、誰が考えても分かるというものである。
 それを考えると、
「犯人の行動がいまいちわからない」
 ということであった。
 被害者についてであったが、名前は、
「今村記者」
 だったのだ。
 読者はご存じのとおりの、風車出版のルポライターであった。
 本来であれば、
「他県にある温泉地に潜入しての取材を行っている」
 という予定だった。
 潜入というと、
「人聞きが悪い」
 という感覚であるが、
「彼らの取材は、まず、現地の人に知られないように、最初は極秘にする」
 ということであった。
 そうでもしないと、相手は構えてしまい、せっかくの、生取材が行えないということになるのだ。
 だから、今回も、警察が現地で聞きこんだ時、
「あの人、ルポライターだったんですね?」
 ということであった。
 まだ潜入して一週間。
「これが一か月の取材」
 ということであれば、最後には、身元を明かすということになるのだが、まだまだその時期には早いということで、今村記者が、何も言っていないのも、当たり前のことだったのだ。
 実際に、
「泊まっていた部屋」
 というのを見せてもらったが、押し入れには、取材道具の入ったかばんがそのまま残されていて、どうやら、
「取材先で殺された」
 というわけではなさそうであった。
 実際に、宿で聞き込みを行うと、
「あのお客さんは、あまり目立つ方の客ではなかったですね。でも、一か月の滞在予定ということで、気にはしていた」
 ということであった。
「なるほど、じゃあ、皆さんは、彼が取材で来たということは知らなかったんですね?」
 と刑事が聞くと、
「さすがに最近は、そうかも知れないと思うようになりましたけど、確かに、まさかとは感じましたね」
 ということであった。
「何か変わったところはなかったですか?」
 と聞かれて、
「ああ、そういえば、あの方が泊まりに来られる三日前から、一週間の連泊ということで一人の男性がお泊りということでしたね」
 それを聞いた刑事は、びくっと反応し、
「それはどんな人ですか?」
 と言われ、
「ええ、老人だったんですけど、恰幅のよさそうな人だったので、貫禄は感じましたね。それこそ、どこかの隠居ではないかって思ったくらいですよ」
 ということであった。
「じゃあ、湯治にでも来られたんでしょうかね?」
 と、一番考えられる理由というと、
「ええ、きっとそうだと思います。でもですね、最初は、もう一人、40代くらいのお方もご一緒だったんですが、若い方のお方は、ちょうど、今村さんが訪れたその日に、お帰りになりました」
 という。
「その人は、最初からその日までの予定だったんですか?」
 と刑事が聞くと
「いいえ、元々は、お年寄りと同じ時までの滞在予定だったんですが、急遽お帰りになるということで、そそくさとお帰りになられました」
 ということであった。
「じゃあ、老人だけが残られたわけですね?」
「ええ、そうです」
「じゃあ、老人の様子に変わったところがありましたか?」
「いいえ、そんなことはなかったですよ。寂しそうにしているわけでもないし、逆に、
「好きなことができる」といってましたね」
 というのであった。
「そんなに伸び伸びしていたんですか?」
「外見上はそうでしたが、本心は分かりません」
 それを聞いた刑事は、
「宿帳を見せてください」
 ということで、身元を確認してみると、
「どこかの会社の社長と会長のようだ」
 ということであった。
作品名:二階級特進 作家名:森本晃次