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一つしかない真実

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 ただ、昭和の頃であれば、似たような刑事もいただろう。
 実際に、探偵小説の名残りのようなものもあり、まだまだ戦後からの感覚が残っていたりした。
 なかなか、実際の犯罪で、ここまで考えることはなかったといってもいいのだが、その理由としては、
「かつての小説で使われたトリック」
 というものが、
「現実味を帯びていた」
 といってもいいからだ。
 なんといっても、昔には、
「DNA鑑定」
 であったり、
「今のように、いたるところに、防犯カメラが設置されている」
 などということはないからである。
「DNA鑑定」
 というものも、今でも、
「火葬されて、荼毘に付されてしまうと、鑑定ができない」
 ということであったり、
「対象になるものがなければ、親子関係などの判定ができない」
 という問題があったり、
「防犯カメラ」
 というのも、
「個人情報の観点」
 というものから、
「絶対に設置することができない場所がある」
 ということから、
「完璧」
 ということではない。
 なんといっても、昔から、絶対に設置することのできないであろう、
「トイレの中」
 であったり、
「更衣室の中」
 などと、それこそ、一歩間違えれば(間違えなくても)、明らかに、
「盗撮だ」
 ということになれば、その時点で犯罪なのである。
 それを考えれば、
「科学捜査」
 というものも、
「完璧」
 ということはありえないだろう。
 それが、犯罪者側の考えとしても、
「完全犯罪」
 というものをいくら計画しようとも、必ず、その裏に潜む問題というものがあり、
「完全完璧な犯罪計画」
 というものはありえないのだ。
 特に、
「交換殺人」
 などというのは、
「協力者がいるわけで、その協力者の精神状態によって、不安定になった時、もし、裏切って自首する」
 などという精神状態になった時点で、犯罪計画はめちゃくちゃになってしまう。
 もし、その時、思いとどまったとしても、二人の間はぎくしゃくして、そこから、疑心暗鬼となることで、どちらも、
「相手が信じられない」
 ということになるだろう。
 そうなってしまうと、
「犯罪計画を立てる場合には、一つが瓦解しそうな場合には、別の逃げ道のようなものを用意しておいて、二重三重のトリックを張り巡らせる」
 という考えがいいのではないか?
 そういう考えであれば、何も
「逃げ」
 というものではなく、
「攻めている」
 という考えになると思うと、事件に対して、どうしても犯人側は、
「自分たちが引き起こす」
 ということになるので、後は、
「警察から追われる立場」
 と考えることで、
「いかに警察から逃れるか?」
 と考えてしまうと、その先に見えるものは、
「犯罪者になった時点で、逃亡者ということになる」
 という考えであった。
 しかし、最初から、
「二重三重」
 に事件というものを計画すると、
「前に進んでいる」
 ということになり、
「自分たちの方が有利だ」
 ということで、事件に立ち向かうことができる。
 犯罪というものは、本来であれば、
「絶対に許されるものではない」
 ということであるが、
「犯罪者を作った世の中に責任はないのか?」
 と考えると、
「犯罪者だけが悪いわけではない。だから、逆に犯罪者の心理を知ることで、警察の捜査もうまくいく」
 ということであり。
「実際に事件というのは、警察が逮捕して終わり」
 というわけではなく、その後の裁判というところまで睨んで考えると、
「一つしかない」
 といわれる
「真実」
 をいかに究明するか?
 ということになるのだ。
 冷静に考えると、
「事実というのは、確かに一つだが、真実というのは、その時々で考えかたも事情も関係者によって違うので、一つではないだろう。それは、あくまでも、善悪というものの判定があり、そこから罪状を決める必要がある」
 ということからだ。
 ただ、
「真実は一つ」
 というのも間違いではない。
 あくまでも、
「最低が決まり、執行されるべき刑が決まってしまえば、今の世の中では、それが、真実だ」
 ということになるのだ。
 それを考えると、
「今回の事件は、犯人が、計画したことに、清水刑事の考えが実にうまく合致し、歯車がかみ合ったことで、大きな真実が分かったのだ」
 怨恨というものも、かつての暴行事件が絡み、その時に、車の中に押し込まれてからの密室だったということから、
「車を使った」
 ということだ。
 それも、心理的に十分考えられることで、清水刑事も、
「真実に近づいたことで、犯人の心理を理解できるようになると、その犯罪計画が、手に取るように分かってきた」
 ということであった。
 そういう意味でいけば、清水刑事は、
「今回の、交換、いや、身代わり殺人といってもいい事件は、犯人と自分の中にある。一種の精神的な交換殺人だったのかも知れないな」
 と感じるのであった。

                 (  完  )
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作品名:一つしかない真実 作家名:森本晃次