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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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朽ちた聖域 Ⅲ5人目の演奏者

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 やがて、2人は壁の奥に何かを見つけた。それは布に包まれ、何十年もそこにあったようだった。
「ねぇ、これって…」
 伊藤さんが息をのんだ。杉内先輩がゆっくりとうなずくと、伊藤さんが布を外した。包まれていたのは、白い陶器でできた蓋付きの入れ物だった。
(違うよな…?違うよな…?)
 濱内がそう思いながら注意深く蓋を開けてみると、そこには幾つもの白っぽい塊と、多めの灰が入っていた。
 亜美は、入れ物の中身がかつては「人」だったと直感した。
「何で…何でちゃんと葬ってもらえなかったの……」
 彼女は両手で顔を覆い、膝を突いて泣き崩れた。濱内も床を少しずつ引っ搔くように両手の指を動かしながら、かすれた声を漏らした。
「何で壁の中に隠したんだ…どうして……」

 数分前までこの場に居た青年の言葉が、杉内先輩の頭の中で明瞭に再生された。
「さっきの人が言ってたのは、そういうことだったのか…」
 伊藤さんは白い陶器の表面に手を当てて、ささやくように、
「つらかったな…」
 と言った。涙をこぼしそうなのを必死にこらえて…。


 杉内先輩が、不意に口を開いた。
「今になって言うのも申し訳ないが…」
 ほかの3人は、彼の顔を見た。
「50年前、この教会で一人の若い信徒が、落ちてきた壁の下敷きになって命を落とす事故があった…といううわさを、聞いたことがある」
「えええっ!?」
 亜美と濱内は、血の気が引いた。杉内先輩は話を続ける。
「でも、その日……教会の記録には、事故のことは少しも書かれていなかったらしい。……『神の家の不名誉』を隠そうとしたんだろうか」
 話を聞いて、亜美はか細い声でつぶやいた。
「ひどい…」

 話のバトンタッチをするかのように、伊藤さんが話しだした。
「俺たちが生まれるずっと昔の話というのもあって、俺もスギも、最初はそのうわさを信じてなかった」
 彼は話し終わったあとに杉内先輩のほうを向き、2人でうなずき合った。
「だから俺たちは一時期、この教会を練習場所にしてたんだ……」
 彼らは、壁の中にあったものを、申し訳なさそうな顔で見つめた。