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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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朽ちた聖域 Ⅲ5人目の演奏者

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「…あの、先輩。実は俺、この教会に来る前に、別の建物に入ったんですよ」
 濱内が、ためらいがちに話し掛けた。
「別の建物?」
「はい。中は妙にほこりっぽくて、俺、そこで転んで、うっすい灰色の粉みたいなのが手に結構付いちゃったんです。あれって…」
「いや、いや、それ以上言わなくていい。もう大体分かる」
 杉内先輩が、首をブンブンと横に振って、制止するような動作をした。濱内は白い陶器の入れ物に向かって、
「ごめんなさい」
 と頭を下げた。

 亜美は鼻を何度もすすりながら、
「杉内先輩……」
 と言うと、声を上げて彼の胸に顔をうずめた。彼は亜美の背中を数回さすった。
「今日はもう、音響テストは切り上げよう」
「うん、それがいい」
 伊藤さんも賛成し、後輩たちもうなずいた。


 白い陶器の入れ物は、秋彼岸の終盤の夕日を全身に浴びていた。
 その光は、長い沈黙の時を超えて、ようやく届いた天上からの応答のようだった。