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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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朽ちた聖域 Ⅱ廃教会でのセッション

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 そして一同が再び進んでいくと、中広間に来た。中央には年季の入った1台のピアノがあり、その脇には座るとそのまま壊れてしまいそうな木製の椅子がある。床にはステンドグラスのかけらが散っており、そこに当たる日光が色あせた祈りのように揺れていた。
「よし、ここにしよう」
 杉内先輩が、ピアノにほど近い位置で足を止めた。
「……誰も居ないですよね?」
 濱内が小声で言った。
「当然だろ」
 杉内先輩が苦笑する。
「もう一度言うけど、ここ、近年は俺と伊藤さんぐらいしか、使う人居ないからな」
 彼はそう言うとバイオリンを取り出し、弦のチェックをすると、弓に松脂を塗って弦の上で動かし、音の調子を確認した。彼がウォーミングアップのためにとあるメロディーを弾いたとき、ほかの面々が一斉に彼を見た。
(先輩がバイオリンを弾くと、こんなにも空気が変わる…)
 亜美の目に映る憧れの先輩の姿は、ルネサンス絵画に描かれる奏楽天使と見間違えそうなほど輝いていた。

 一方、伊藤さんはピアノに近寄り、鍵盤の上に右手の指を置こうとした。しかし、どういうわけか鍵盤には触れず、手の指を少しずつ折りたたむようにしまった。
「あれ?弾かないんですか」
 亜美が尋ねた。
「いや、このピアノ、見てのとおり古いからさ、下手に鍵盤を鳴らして壊したらまずいだろ?だから、このピアノは使わないほうがいいかな」
 どうも歯切れの悪い回答だったが、彼女はうなずいた。
「そうですね]
 そのあと、伊藤さんと亜美はそれぞれの楽器を出して、杉内先輩と同じように音響チェックの準備をした。

 全員が音のチェックをしたあと、濱内、伊藤さん、亜美が杉内先輩のもとに集まった。
「それじゃ、『パッヘルベルのカノン』をセッションするから、パートを決めよう。まず、第一バイオリンは、俺が弾くけどいいかな?」
 亜美たちはうなずいて承諾した。
「よし。じゃあ、第二バイオリンが濱くん。で、第三バイオリンがアミティ。そしてチェロの代わりだけど…伊藤さん、バイオリンの最低音域で弾いてくれるかな?」
「もちろんだよ、スギ」
 こうして演奏パートが決まり、彼らはそれぞれの楽器にピンマイクをセットした。