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笑みの中の恐怖

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「聞かれても、今のところ、事件に直接関係があるかどうか分からない」
 ということで、
「海のものとも山のものとも分からない」
 という感覚に近いといってもいいのではないだろうか。
 だから、警察内部には、一応、
「捜査本部」
 というのはできたが、
「事件性が極めて低い」
 ということになると、
「いつ解散になるか分からない」
 ということである。
 捜査本部は、一度解散してしまうと、もし、この事件に
「事件性がある」
 ということが、確定しない限り、復活するということはない。
 今のところ、身内からも、
「これは殺人事件だ」
 というような話も出ていないということで、解剖結果に、よほどの何かが出ない限り、
「事件性なし」
 ということになると考えられた。
 しかし、実際には、
「解剖結果」
 というものがもたらされる前に、
「これは、事件ではないか?」
 と思える事象が出てきたことで、
「この事件の方向性」
 というものが、変わってきたといってもいいだろう。
 その事実というのが、
「死亡した男性の奥さんが、行方不明になっている」
 ということからであった。
 そのことに最初に気づいたのは、
「死亡した旦那」
 だったのだ。
 それは当たり前のことで、
「2,3日、家に帰っていない」
 ということであれば、普通の旦那であれば、気になるというものだ。
 実際に、奥さんの実家にも連絡を取ったが、
「帰っていませんよ」
 という返事であった。
 旦那は、
「家庭ではあまり相手のプライベートには深入りしないようにしよう」
 と決めていて、奥さんもそれに倣っていたということで、
「奥さんの友達関係の連絡先をほとんど知らない」
 ということから、逆に、実家側から、友達に連絡を取ってもらったりしたのだ。
 だから、さすがに旦那も、奥さんがいなくなったということが気になってきて。
「会社に休暇願」
 というものを提出し、
「女房がいなくなったので、少し探してみます」
 と、正直に会社に話しての休暇だったのだ。
 だから、
「榎田さんが亡くなった」
 と聞いた時、びっくりはしているようだったが、悲鳴を挙げるほどのビックリというわけではなかった。
 だから、
「榎田さんは、休暇に入っている」
 と言った時、会社の人が落ち着いた口調だったというのも、そのあたりが原因だったということになるのだろう。
「奥さんが行方不明?」
 という話を聞いて、一番最初に驚いたのは、桜井警部補だった。
 桜井警部補は、
「驚いた」
 というよりも、何やら、
「確信めいたものを感じた」
 といってもいいかも知れない。
 それが、
「この事件における事件性というものの、濃淡だ」
 ということに気づいた人もいないでもなかったが、それ以外に、別の意味で、驚きをその時の、桜井警部補が感じていのだった。
 それを分かった人は、たぶん誰もいないだろう。
 桜井警部補としては、
「これで、捜査本部というものの体裁が整った」
 ということで、
「いよいよ、本格的な捜査」
 ということになったのだ。
 だから、今の段階でできることは、
「事件だ」
 ということであれば、
「殺人」
 ということなので、まずは、
「容疑者の絞り込み」
 ということで、
「動機の有無の確認」
 ということが、最優先となるだろう。
「殺人事件というものに対しての、動機」
 ということであれば、いろいろ考えられる。
 といえるだろう。
 まずは、
「怨恨」
 というものである。
 その中で一番大きなものとして、
「復讐」
 というものである。
 たとえば、
「身近な人間が、被害者に殺された」
 ということが、一番考えられるということで、それも、
「表に出てきていない」
 というわけではなく、復讐に値する理由というのはあるのだが、それを、
「警察に話した」
 としても、
「警察は、簡単には動けない」
 ということである。
 たとえば、
「犯人と思われる人間に、アリバイがある」
 であったり、
「殺害に値する動機ではない」
 と警察は判断した場合など、
「被害者側との気持ちの隔たりの大きさ」
 というものから、
「警察はあてにできない」
 ということになると、犯人は、
「自ら復讐をする」
 と考えることだろう。
 今の時代では、
「仇討ち」
「復讐」
 というものは許されない。
 江戸時代などでは、藩に願い出て、
「仇討ち赦免状」
 というものがもらえれば、
「公然と仇討ちができる」
 ということであった。
 しかし、今は、
「警察による犯罪捜査」
 によって、犯人が分かれば、検察によって、起訴される。
 そして、今度は、
「法廷」
 にて、
「事実に基づいた真実が明らかにされることで、最終的に、バツが決まる」
 ということになるのだ。
 その場合でも、
「よほどのことがない限り、極刑と言われる、死刑というものはない」
 といえるだろう。
 その次の刑として。
「無期懲役」
 というのがあるが、こちらも、
「死ぬまでの刑期が確定している」
 というわけではない。
 つまり、
「無期懲役」
 というのは、
「終身刑」
 とも言われるが、あくまでも、
「無期」
 ということで、社会情勢によって、
「恩赦」
 というものが行われれば、
「釈放」
 ということも十分にあるのである。
 だから、
「法律は、加害者に甘くできている」
 と言われるゆえんだといってもいいだろう。
 しかも、
「絶対に、逆恨みによる復讐ができない」
 というわけではない。
 つまり、
「有罪となり、刑に服し、刑期満了で釈放された」
 ということであれば、その人は、
「法律的には、もう犯罪者ではない」
 ということになるのだろうが、
「社会はそんなに甘くはない」
 といえるだろう。
 というのは、
「一度犯罪を犯した」
 ということは、
「元犯罪者の個人情報保護」
 ということで、
「警察は決して、過去のことを話さない」
 ということであるので、
「警察から漏れるということはない」
 といえるだろうが、
「人の口に戸は建てられない」
 ということで、
「誰かの口から洩れる」
 ということも、普通にあるということだ。
「あの男は、かつての犯罪者で、しかも、殺人犯」
 ということになれば、いくら、
「刑に服した」
 とはいえ、世間は、そうは見てくれない。
「おとなしくはしているが、何かの拍子にキレたりすると、いつ誰かが殺されないとも限らない」
 ということで、
「経営者とすれば、そのことが分かった時点で、解雇」
 ということになりかねない。
 本来であれば、
「刑期を満たしているのだから」
 ということで、それを、
「不当解雇だ」
 とも言えなくはないが、もし、争って、それが認められたとして、会社に復帰して、
「果たして、安心して仕事ができる環境なのか?」
 ということになるだろう。
「一人の元犯罪者が復帰する」
 ということで、他の社員が、
「おっかない」
 ということで、皆辞めてしまうということになれば、
「会社経営ができない」
 といってもいいだろう。
 そうなると、
作品名:笑みの中の恐怖 作家名:森本晃次