小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

腐食の後悔

INDEX|15ページ/15ページ|

前のページ
 

 そんなことが毎日起こっていれば、
「精神疾患に陥る」
 というのも当たり前で、
「確かに、休職くらいはしないと、身も心もボロボロになる」
 と思ったのだ。
 そして、
「これが、俺の誇りに思っていた仕事だったのか?」
 と思うと、俺も復讐したいと思う人の気持ちが分かる気がした。
 そこで、西郷は、直近で自分たちが、
「嵌めてしまい、責任を押し付けて、辞めさせた社員のその後」
 というものを調べてみる気になったのだ。
 そもそも、風俗好きだった西郷が、まだ会社のために、
「よかれ」
 と思って働いていた頃、一人の女の子から、
「会社に裏切られてお父さん、自殺しちゃったんだって、それで、身も心もボロボロになって、デリヘルしてるって女の子がいるんだけどね」
 というので、最初は、
「興味本位」
 でその子を呼んでみることにした。
 女の子だったら、あまり自分の家庭のことは口にしたくないのだろうと思っていたが、結構いろいろ話してくれた。
 それだけ。ひどい目にあって、
「誰かに言わないと、自分が耐えられない」
 と思ったのか、それとも、
「西郷が、必死になって聞いてくれるのを、親切心から聞いている」
 と思ったのか。
 彼女が、結局、
「自分がかつて陥れ、会社から追い出した社員の娘である」
 ということが分かったのだ。
 彼女も、さすがに、
「この男、同情からだけではない」
 ということに気づいたのか、この男を怪しいと思い、彼が風呂に入っている時、パスケースなどを見て。そこに入っている名刺であったり、パスなどから、
「この男、私の父の会社の社員だわ」
 と思うと、
「なるほど、一生懸命に聞いてくれるわけだ」
 ということになり、そこで、
「この男を探ってみる」
 ということにしたのだ。
 すると、会社のウワサが漏れ聞こえてきて、そもそも、秘密ということにしていたわけではないので、
「会社のからくり」
 というものが分かったのだ。
 すでに、解決しているという民事事件を今さらへたに隠すと、却って会社のイメージが悪いと考えたのが、吉岡で、その考えを、西郷も継承していたのだ。
 彼女は、
「西郷への殺人」
 を考えていた。
 そして、西郷は西郷で、今までの罪を悔いて、自殺を考えていたのだ、
 奥さんとは、離婚していて、子供は奥さんが引き取ったので、
「もう、俺は一人だ」
 と思っていた。
 親もいたが、
「どうせ、俺は次男だし、長男は立派な人だから」
 ということで、自分が、結局、
「強い力に従う形で、腰ぎんちゃくのように生きていかなければいけない自分の運命」
 というものを、
「もうここまでだ」
 と考えた。
 気楽なはずのナンバーツーに対して、自分から疑問を抱いて、そこに、精神疾患が重なれば、もうあとは、
「負のスパイラル」
 というものが襲ってくるしかないのであった。
 そこで、自殺を考え、自殺をするつもりで、いろいろ準備をしていた。
 そこで、
「最後に彼女の顔を見ておこう」
 と思い、自殺の前に、彼女を呼んだのだった。
 自分はその後自殺をするつもりだったので、彼女が出たあと、別の女の子を呼んで、その子と、彼女をロビーでわざと鉢合わせさせることにした。
 そこで、彼女は、
「きっと、別の方から表に出るだろう」
 ということから、防犯カメラの関係ないところにしか映っていないように細工をしたのだ。
 だから、まるで新しく呼んだ女の子が、最初からいた彼女のように思わせるためだった。
 そう、彼は、
「自殺をたくらんでいたが、一足早く殺された」
 ということだったのだ。
 ただ、自殺となると、彼女が疑われる。そう思い。
「犯人が誰なのか分からない状態にしておいて、殺人事件に見せかける」
 と考えた。
 もし、彼に殺意があるとすれば、会社関係の今までの辞めさせた人間や家族ということになり、その中でのデリヘル嬢ということになれば、警察はすぐにでも、彼女を容疑者とすることだろう。
 だから、自殺の方がいいのかも知れない。ただ、自殺をすると、保険金の問題がある。
 しかし、
「家族には、自殺だと思ってほしい」
 ということで、自殺前に、彼は。自分宛てに手紙を投函した。
 もし、
「警察が調べたとしても、その日か次の日くらいしか、家宅捜索はないだろう」
 ということで、それ以降であれば、自宅に手紙が来ても、気づくのは家族くらいだ。
 と考えた。
 一応家族は、
「遺族として、故人のことはすべて知っておいて、最後の処理を済ませる」
 ということはしてくれるという考えからだった。
 正直に告白し、
「これは、お前たちの中でしまっておいてくれ」
 というものであった。
 一種の、
「家族にあてた遺書」
 であった。
 実はこれを彼は、
「自分を殺すことになる」
 彼女に同じような手紙を送った。
 自分は自殺をするという趣旨のことであったが、元々、彼女は、西郷を殺したあとで、自分も自殺をしようか迷っていた。
 そんなところへ、西郷の
「遺書」
 であり、
「詫び状」
 が来たのだから、彼女は観念して、自首することにしたのだった。
 彼女にも情状酌量の余地は十分にある。
 ということもあり、
「そもそも、まだ彼女は、捜査線上にも浮かんでいなかったので、自首ということになる」
 ということで、
「自首してきた」
 ということは、情状酌量としてはかなり大きなところであっただろう。
 そんな彼女を支えたのは、管理部長の清水であり、結局、
「ことが殺人事件」
 ということにまで至ったことで、吉岡も、さすがに終わりであった。
 その後、
「オシ・・コーポレーション」
 という会社がどうなったのか?
 そのあたりは、
「社会通念上の常識」
 というものを考えれば分かるということになるであろう。

                 (  完  )
64


作品名:腐食の後悔 作家名:森本晃次