中途覚醒
「警察に捕まったとして、そこまで、計画通りだったとしても、裁判で、どこまでの罪になるか分からないが、逆恨みをされると恐ろしい」
と思ったのだ。
なんといっても、確かに、坂口が事故をおこしたのは、
「雨が強かった」
というのも理由であるが、それとは別に、
「精神疾患」
という問題があったので、それが、逆恨みとなると、
「どんな殺され方をするか分からない」
と思うと、安心して計画も立てられないというものであった。
そして、今回の殺人を、
「交換殺人」
というもので行おうと考えたのは、
「坂口が起こしたひき逃げ事故」
というものに関わることであった。
「坂口は知らないが、実は、あの時、被害にあった人はもう一人いて、その人は、弾き飛ばされた瞬間から、行方不明になっていた」
ということだったのだ。
実際に調べてみると、
「記憶喪失で、どこかの病院に運び込まれていた」
ということで、しかも、
「その病院も、交通事故ではないか?」
とは思っていたが、まさか、最近起こったひき逃げ事件の、
「もう一人の被害者だ」
とは思っていないだろう。
もちろん、警察も分かっていない。
かたや、記憶喪失であり、かたや。即死だった。二人が知り合いだということも、立証できなかった。
というのも、
「この二人は、そもそも、別の犯罪計画をたくらんでいて、交通事故に遭ったことで、その計画は完全に頓挫してしまった」
というのであった。
この二人も、どちらかが、主犯で、どちらかが共犯であった。
その狙う相手が、実は、
「大久保だった」
ということで、大久保としては、
「この二人に活きていてもらっては困る」
と考えていた。
記憶喪失ではあったが、身体の方は、そこまで時間が掛からなかった。
半年もすれば退院したが、
「記憶がない」
ということで、警察も期にはしていたが、時間が経つにつれて、そこまで深くかかわることはなかったのだ。
これがいわゆる、
「ほとぼりが冷めた」
ということであった。
死んでいった男は、
「即死で幸せだったのかも知れない」
と、大久保は考えていた。
記憶喪失ではあるが、
「いつ、記憶が戻るかも知れない」
ということで、その記憶が戻れば、大久保が窮地に陥るということになるわけで、
実は、坂口にとっては、本当は恨みがあるはずの相手であるにも関わらず、
「交換殺人のため」
ということでの犯行ということになれば、
「怖がりである坂口でも、恨みがないことで、失敗はしないだろう」
と思ったからだった。
しかし、実際に、犯行に及ぼうとした時、記憶を失ったそのターゲットである男の記憶が戻ってきた。
それは、
「事故に遭った瞬間、カッと見開いたその目で、運転席をとらえ。それが、自分に恨みを持っている坂口だと認識した」
のであった。
「人間というのは、死を目の前にした極限状態では、普段は見えないものが見えてくるというものである」
ということなのだろう。
坂口が自分を殺そうとした時、
「俺はこのまま死んでしまうんだ」
ということが分かった時、
「こいつは坂口だ」
ということで、記憶が戻った。
そうなると、相手は必死になって抵抗する。
「あいつは記憶喪失だから、簡単に殺せる」
と大久保から言われた坂口としては、
「予期せぬ出来事」
ということで、
「一気にパニクってしまった」
ということであった。
その時は、結局、相手を殺せずに帰ってきたのだが、
「計画が狂ってしまった」
と考えた大久保も、パニクってしまった。
「坂口はトラウマに陥ってしまった」
ということで、結局、何もするころができず、計画は頓挫することになったのだ。
大久保とすれば、
「とんとん拍子に、こっちの計画通りにいっていた」
と思っていたことが、実際には、
「一度狂った計画は、悪い方に、
「並行世界」
というものを作ってしまい、
「交換殺人というものでなければ、違った形で、計画修正も利いたかも知れない」
と考えた。
計画したのが、
「交換殺人」
ということで、しかも、
「起こってしまったことからの計画だった」
ということで、
「一歩計画が狂ってしまうと、修正が利かない」
ということを立証しているということになるだろう。
( 完 )
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