小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

昭和からの因果応報

INDEX|16ページ/16ページ|

前のページ
 

「まさか殺人事件に発展するとは?」
 ということを思いながらも、
「ただでは済まない」
 という意味で、
「事件の発生」
 というものを予知できていたのだ。
 そもそもが、
「事件を未然に防ぐ」
 ということを、実際にできないということを自らで悟った刑部は、署長との話の中で、
「俺が殺される時は、潔く死にたい」
 ということを言っていた。
 署長も、
「俺がこんな立場でなかったら、俺はお前の意思を継いでやるのにな」
 ということを言っていた。
「いや、いいんだ。俺が死んだとしても、犬死にはしないでくれよ。特に、事件を未然に防ぐということができないのだから、俺が、どうあっても、犬死になるくらいだったら、俺を殺そうとしている連がどうなるか、俺は見ることはできないので、お前に見てもらうしかないんだ」
 ということであった。
 そういう意味では、
「刑部は自殺をした」
 といってもいいだろう。
 実は刑部がここまで覚悟したということの理由として、彼は今まで生きてきた中で、
「許されない罪悪を犯した」
 と思っている。
 警察沙汰にもなっていないし、昭和の時代であれば、
「それくらいは当たり前のこと」
 ということで、
「時代に埋もれた」
 といってもいいだろう。
 しかし、それも、
「若かりし頃のこと」
 ということで、
「決して許されることではない」
 とは言えないだろう。
 しかし、
「俺はこの年になって覚悟が簡単にできるようになった」
 といって、
「もし、俺が殺されるとすれば、それは、親の因果が子に報いたということになるわけで、それこそ、因果応報ということになる」
 というと、
「そこに運命のようなものが感じられる」
 ということで、
「この世において、巡りめぐってくる、一種の輪廻転生だ」
 といってもいいだろう。
 実際に、その因果が、老人になってから報いがやってきたのだ。
 それが、
「老人の精神疾患」
 というものであった。
「老人になって、痴呆症というわけではなく、さらに重い、双極性障害」
 というものであった。
 しかも、前述のような、
「合併症」
 のようなものが付きまとっていることで、へたをすれば、
「自分の意思ではどうにもならない」
 というところまで来ていたようだ、
 だから、どこか、
「捨て鉢」
 と言われるようなところがあったのだが、それでも、
「ある瞬間には、正気に戻る」
 という時があった。
 しかも、その時は、
「人生の中の集大成」
 というべき、
「感情に逆らわない意思」
 というものを持つことができ、それが、老人の今回の事件を、
「本人の意思」
 というものに導かせたのかも知れない。
 普段は、
「痴呆症かも知れない」
 という程度にごまかしていたが、実際に、まわりも、コロッと騙された。
 さぞや、本人が正気であれば、
「これほど愉快なことはない」
 といって、心からの大笑いをしたことだろう。
 それを思えば。
「この人生の集大成において、結局、人生が最後まで空回りしたことになるかも知れない」
 と感じた刑部老人に対し、
「まあいいさ。お前の骨が俺が拾ってやる」
 とばかりに、
「署長と、刑部老人とでは、かなり年が離れているはずなのに、お互いに、タメ口をきいている」
 それだけ、二人の間の友情というのは、
「他の人にはないもの」
 といってもよく、本人たちは、
「これが昭和だ」
 と思ったことだろう。
 そして、事件は、その後、とんとん拍子に解決し、結局、息子が自殺をしたのだが、その時に、老人を殺そうと企んでいたが、実行できなかった人間までも、巻き込んだ」
 ということは警察は知らなかった。
 実際には、
「町はずれの森の中に埋めたのだが、そこは、いずれ再開発予定となっているので、その死体が発見され、荼毘に付される」
 ということは分かっていた。
 それが、10年経った、ちょうど今ということになるのであった。ちょうど、昭和から続く中においての、中間地点。
「そこまで刑部老人が考えてのことだったかどうか、署長にも分からなかったのだ」

                 (  完  )
64


作品名:昭和からの因果応報 作家名:森本晃次