悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(後編))
「たまわりの湯」の斜め前に、射的やスマートボールなどの店もある「温泉本通り」があり、これぞ昭和レトロな温泉街の雰囲気を楽しめる路地だ。浴衣を着て、履いた下駄がカランコロンと音をたてるのが似合いそうな通りだが、その気持ちになって、ぶらぶらと散策した。
「ジル」に戻ってから淹れたホットコーヒーが、少し冷えた体に染み渡った。
この紀行文の執筆のために、公衆浴場「たまわりの湯」を調べたところ、およそ20年に渡って親しまれたが、施設の老朽化と従業員の高齢化により、2023年3月末で営業を終了していた。先ほどの道の駅と同様、旅で立ち寄った場所がクローズしてしまうのはホントに寂しい限りだ。
再び三朝温泉を訪れる際は、三朝温泉の起源でもある「株湯(かぶゆ)」に浸かることに決めた。「株湯」は、三朝温泉元祖の湯で、別名「元湯」とも呼ばれ、三朝温泉の歴史はここから始まったと言われている。
まもなく午後4時になりそうな今、今日のゴールは、大山(だいせん)の登山基地でもある「大山ナショナルパークセンター」近くの駐車場を予定していたが、多分、雲の中と思われ、加えて、そこまでの道中で暗くなりそうなため、その手前の「蒜山(ひるぜん)高原」に変更した。
三朝温泉からR179で北上し、倉吉市を通過してからはR313で南下、蒜山高原の県道に入り、中央分水嶺でもある東から下蒜山、中蒜山、上蒜山の山容を見ながら、道の駅「蒜山高原(岡山県真庭市)」に到着した。
このショップはまだ営業中だったので、夕食用の食材を探したところ、B級グルメと書かれた「焼きそば」が並んでいた。B級だが「グルメ」の文字に誘われて購入してしまった。そして、蒜山高原や大山の資料を入手することができた。
道の駅のスタッフに、今夜、車中泊する旨を伝えたところ、この道の駅の奥にはホテル蒜山ヒルズがあり、以前、そこの客の車と車中泊した車で何か揉め事があったとのことで、道の駅としては、車中泊を控えて欲しいと説明された。
そのうえで紹介してくれたのは、県道を挟んだ山側に「八束(やつか)自然牧場公園」があり、その駐車場での車中泊はOKとのこと。「ジル」を移動することにした。サンクス。
県道からずんずん入ってゆくと、そこは自然公園の真っただ中、紅葉した高木の木々で覆われた場所に「ジル」を停めた。周囲には駐車しているクルマは無く、人っ子ひとりいないが、代わりに何か獣がいたかもしれない。いずれにせよ、そのような自然に包まれた中での車中泊が始まった。
先ずはデジカメを持って、自然公園の中の「ジル」や紅葉を撮ったが、日没の直前だったため、明るさが不足していて、不鮮明な写真になってしまった。翌朝もう一度写真を撮ることにした。
そうそう、道の駅のスタッフからは、夜は寒いと教えてもらっていたので、この旅では初めてになる防寒用のマルチシェードを使うことにした。
それを収納している場所は、助手席の後ろ側のダイネット内のシートの下で、それを跳ね上げれば取り出せるのだが、車外からの小さな扉を開けても取り出せるので、そうして、マルチシェードを取り出した。そして、運転席および助手席の窓の内側、そしてフロントガラスの内側にマルチシェードを貼り付けた。
昨日までの車中泊では、車外からフロントガラス越に明るいダイネットが見られないように、運転席とダイネットの間にカーテンを取り付けていたが、今夜は、そのカーテンとマルチシェードの二重の防寒対策になった。
ちなみに、ダイネットの窓ガラスはアクリル製で、空気の層を持つ二重構造になっていて断熱効果がある。さらには、それらの窓には遮光用だがシェードが付いており、それも使用して、断熱効果を上げた。
そしてダイネットには「FFヒーター」という温風ファンヒーターもあり、寒い時期でも、ダイネットの中では心地良い居住が保証されている。先ほど、そのスイッチを入れたので、足下に温風が当たっていて、ダイネットの室温は少しずつ上昇していた。
ダイネット内の冬支度を終えた後、ちょっと外に出てみた。
風は吹いておらず、今夜は雲が広がっているようで星は見えないと思ったが、周囲の木々が視界を閉ざしていた。日没後はすっかり暗闇に覆われた。
県道からそれほど離れていない場所だが、大自然の中にいるようで、何か音がするならば、風で揺れる葉擦れの音か、獣が歩く際の落ち葉を踏む音くらいだろう。日頃は道の駅での車中泊のため、こういった経験も良い。
今日、この「キャンピングカーの旅」の走行距離が1,000kmを越えていて、やはり出発前に、エンジンオイルの交換をしておくべきだったと思った。帰宅後、ダイネットの後片付けなどを終えてから、トヨタのディーラーで、エンジンオイルを交換する予定にした。
先ほど道の駅で買った「B級グルメの焼きそば」の調理を始めた。
オリジナルの調理方法は、かしわ肉(鶏肉)と蒜山高原産のキャベツを使うようだが、鶏肉は持っていなかったのでウィンナー、キャベツの替わりに袋に入っている野菜炒め用の野菜を使うことにして、先ずはそれらをフライパンに入れて、炒め終わってから皿に移した。そして、少量の水を入れて麺をほぐしながら、そこそこの柔らかさになってから、皿に移したウィンナーと野菜を麺に混ぜながら、濃厚な味噌ベースの甘辛ダレを混ぜ込んで仕上げると、鼻腔をくすぐる匂いがしてきた。
出来上がったばかりの熱々の「焼きそば」にインスタントスープの夕食が終わり、食後のコーヒーを飲んでいると、今日の昼間、特に運転中だったが、何回も眠気を覚えたので、多分、疲れが溜まってきているのだろう。こんな時は早く寝るに限る。
ここでは、地デジ電波の受信もできないので、ビデオでも見ようと思ったが、パジャマに着替えて、バンクベッドに上がって、布団にもぐった。案の定、直ぐに深い眠りに入っていった。
【今日の一言】 動態保存されているC12や何台ものミニSLを見ていると、若い頃から思い続けたNゲージ(9mmの軌間)の鉄道模型の趣味に踏み込みたくなった。ジオラマ製作は高いハードルがあるので、先ずは入門セット(コントローラー、線路、車両)でも買ってみようか。