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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(後編))

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 そう思いながらR482を走り始めたところ、対向車の数が異様に少なく、山間の道はカーブが多く、国道の右側の佐治川(さじがわ)は次第に深くなり、左側の木々はうっそうと茂り、不安が増長するばかりだった。
 佐治川ダムを横目で見た先には「佐治川ダム展望台」があり、そこで昼食タイムにした。
 さらに西に進んだあたりから、エンジンの回転数が上がった状況が続き、大分水嶺に向かって標高が上がるのを感じた。その一方で、この国道は「紅葉ロード」と思えるほど、左右の木々の色合いが鮮やかになっていて、路肩に停めて、その写真を撮ったほどだった。
 路肩に峠名が刻まれた石柱が立っていた。それは、走ってきたR482の最初の中央分水嶺の標高786mの県境の峠「辰巳峠(たつみとうげ)」で、鳥取県から岡山県に入った。

 その先で、カーナビによると「恩原湖(おんばらこ)」の横を走るのだが、国道からはうっそうと茂る木々で殆ど見えなかった。後で調べたところ、湖の北側一帯は白樺やカラマツ林で覆われた「恩原高原」で、キャンプやグラウンドゴルフ、釣り、冬はスキーなどのアウトドアが堪能できるとのことで、事前に知っていたら、R482から外れて、湖畔や高原エリアを走りたかったと少し後悔した。

 やがて三叉路に至り、左は岡山県津山市、右は人形峠を経て鳥取県倉吉市、どちらの市もその県では人口は第3位の市だ。ハンドルを右に切り、R482からR179(R482と重複区間)に入り、人形峠(にんぎょうとうげ、標高740m)方面に向かった。

 実は、先ほどの昼食時、今日は温泉に入りたいと思い、人形峠の先から北上して、倉吉市のすぐ南の「三朝温泉(みささおんせん)」に向かうことに決め、その手前の道の駅「三朝・楽市楽座(鳥取県三朝町)」で、立ち寄り湯の情報をゲットするのが良いと思い、カーナビにセットした。
 そして、その途中に人形峠があるので、少しばかり立ち寄ることにしたが、ナビにはセットしなかったのが間違いの元だった。

 日本で唯一、ウラン鉱石の採掘ができるのは人形峠だと中学生の頃に習った憶えがある。その場所をおおよそ知ってはいたが、「ジル」でそこを走ることになるとは思っていないことだった。
 ウランについて知っていることと言えば、あの手塚治虫の「鉄腕アトム」の妹・・・ではなく、人形峠とウラン、そして原発との関係について、私が理解している内容に調べたことを少し付加して整理するならば、以下のようになる。

 1955年、人形峠付近でウラン鉱床が発見され、探索が行われるようになり、この場所でウランの採掘から精錬までの一通りの研究が行われたが、当時の為替レートならば、ウランを国内で採掘するより外国から輸入する方が安価なことが分かり、ウランの採掘や精錬~濃縮の技術を確立した後、坑道やプラントは閉鎖された。
 ちなみに、天然ウランには質量数238と235の二つの同位体があり、採掘されたウランには、ウラン238が約99.3%、ウラン235が約0.7%含まれていた。このウラン235は核分裂する放射性同位体であり、原子炉で核燃料として用いられるのだが、そのためには濃縮工場でウラン235の比率を高めて濃縮ウランにする必要がある。
 したがって、日本の原発に必要なウランは、現在国内産ではなく、政治や経済が安定したオーストラリアやカナダなどと長期契約を結んで輸入している。
 簡単過ぎるほどにまとめた概要だが、間違っていたら、ごめんなさい。

 このR179を走れば、人形峠を通過するものだと思っていたのだが、人形峠に向かう道の標識を見落としていて、気が付くと、人形峠の下の人形トンネルで越境して、再び、鳥取県に入っていた。
 この日の夜、人形峠付近の詳細をマップで調べたところ、原子力の基礎から発電のしくみを学ぶことができる「人形峠アトムサイエンス館」があったのだが、訪問できなかったことを少し悔いた。

 ここで、R482に関して認識していた内容を紹介する。
 京都府の宮津市から丹後半島をぐるりと回り、その後は中国山地の山間を縫うように走り、鳥取県と岡山県の県境でもある中央分水嶺を4回も超えて西に向かい、伯耆富士(ほうきふじ)とも呼ばれる大山(だいせん)の南側の山麓を西に抜けて、鳥取県の西の端の米子市(よなごし)に至る国道だ。
 鳥取県内のR9は「日本海側を走る幹線国道」に対しR482は、「山間・山麓の国道」だと言えなくもないと、私の中ではそう思っている。
 ところが、この旅が終わった後で知ったのは、R482の兵庫県と鳥取県の県境付近は、「幅員狭小につき大型車通行不能」の警告のある道路の状況で、その部分は軽自動車同士でもすれ違いができない酷道だったことだ。今回の旅では、その酷道が終えたポイントの西側から入ったので、ラッキーだった。

 道の駅「三朝・楽市楽座」に到着した。そこのスタッフに、三朝温泉の立ち寄り湯について訊いたところ、ここで働き始めてまだ1ヶ月とのことで、温泉街の詳細は知らないとのこと。それでも、三朝温泉のポスターに載っている露天風呂の温泉について訊くと、それは温泉地を流れる三徳川(みとくがわ)の河川敷にある露天風呂だと教えてくれた。最後に、三朝温泉マップをいただいた。サンクス。
 少し寂しい話だが、この道の駅は2023年9月30日に閉所したとのこと。旅で立ち寄った場所がなくなるのは大変残念に思う。

 R179から右折して、三徳川の右岸の県道を上ってゆくと、この旅で訪れた岐阜県の美濃や大野で見たような川湊灯台があり、その上部に明りが灯る部分の下の側面に「三朝温泉」と大きく書かれた看板があり、その先から大きなホテルが並び始めた。
 その温泉街が終わった先で、県道は三徳川に架かる橋を渡ると、今度は左岸に広がる温泉街が見えてきた。
 道の駅で入手した温泉マップによると、その橋を渡り切った右側に公衆浴場「たまわりの湯」がある。走りながら、その建物はすぐに分かり、駐車場の最後の空きスペースに「ジル」を停めた。
 大きく「ゆ」と書かれた暖簾をくぐり・・・、その後のことは殆ど記憶がないが、湯船の形とまったりしたことしか思い出せない。どうも、長湯をし過ぎたようだ。

 この「三朝温泉」は、世界屈指の放射能泉であり、心と身体を癒してくれる湯で、高濃度のラドン含有量を誇り、三度の朝を迎える頃には元気になるとのこと。
 今、三度の朝を迎えるのと同量のラドンを長湯で吸収してしまったのか、因果関係は分からないが、それで記憶が吹っ飛んでしまったのかもしれない。

 湯あたりはなかったが、多少の疲れを覚え、「ジル」に戻ってからは、冷蔵庫から冷えたゼロコーラを取り出し、喉を潤すと、炭酸の刺激が効いたのか、気持ちが楽になった。
 ゼロコーラを飲み干した後、温泉街のマップを見ながら散策に出掛けた。
 先ずは、三徳川の橋から見下ろせる場所に、ポスターになっていた「河原の湯」を発見した。ふたりのおじいさんが浸かっていたが、ちょっと勇気の要る露天風呂だ。夜ならば問題はなさそうだ。ちなみに、この川のせせらぎは「日本の音風景100選」のひとつだった。