小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
novelistID. 69613
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(後編))

INDEX|30ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

 「この先 離合困難」の立て看板があった。この「離合」という言葉は元来、「離れたり、集まったりすること」を意味するのだが、西日本、中でも九州地方では「対向車同士が狭い道ですれ違うこと」を指す。そのため、日本中の人たちが走る道でのその表示は何を意味しているのか分からないため、不適格な表現だと思いながら、車幅2mの「ジル」の運転を続けたところ、対向車は来ず、結果オーライだった。
 本当は、このような考え方で「ジル」を運転するのは良くないと思うのだが・・・、もし対向車が来ていたら、どちらかがバックすることになるのだが、「ジル」を購入する際に、ワイヤレスのバックカメラとモニターを取り付けたので、まあ問題なく後退することはできるのだが、そうせずに済んだのはまあ良かった。

 最初に向かったのは「千畳敷」で、かなりの急勾配の坂道を上り詰めると、一面芝生の広い頂上にたどり着いた。「千畳敷」の名称の由来が分かった気がした。その広い頂上部分は緩やかな勾配があり、東側が頂上なのだろう。スマホで調べると333mもあった。
 ここは、難読の極みと思える向津具半島(むかつくはんとう)の東側の半島付け根の山頂で、ポツンとカフェレストランがあり、その屋根の上は展望台になっていて、そこからの展望が素晴らしかった。
 北側には日本海の水平線が見え、東側に目をやると、手前に向津具半島から突き出た今岬(いまみさき)が横たわり、その奥には、先ほど見て回った青海島の西側が見えた。実に良い景色だった。その絶景を背景に、三脚を立てて、デジカメのセルフタイマーで自撮りした。

 この自撮りの際に注意することは、画角の外に私自身がはみ出さず、ちょうどいい感じで収まることだ。それだけなのだが、これがなかなか難しい。これまでに失敗を繰り返し、何回か撮り直すことがあった。新しく買ったデジカメは、モニターを180度上側にひっくり返して、デジカメの上に出すことができるため、倒立ではなく立位(りつい)で映る風景の中の私自身の姿を見ながら、前後・左右に動き、画角に収まるようにしている。

 改めて、この頂上付近を見回すと、東側の緩やかな下り勾配の芝生の上では、テントを張って寛いでいる人、シートを敷いて楽しくやっているグループ、皆、のんびりとやっていた。
 ちょうど昼時になったので、軽く、カップ麺と鰤(ぶり)の腹肉の水煮の缶詰を食べた。今日の夕食は実家で食べることを見越して、簡単な昼食になった。

 次に向かったのは「元乃隅神社」で、そこまでの道も道幅が狭く、それでも無事に到着した。
 駐車場は有料だと分かった時、係員が近付いてきて、キャンピングカーはゲートから入る普通車ゾーンではなく、この道に面している大型車のゾーンに入るように指示された。その理由を尋ねると、普通車ゾーンの入口ゲートには庇があり、キャンピングカーはそれに接触してしまい、通過できないとのことだった。駐車料金は先払いで、料金を払うと「キャンピングカーの駐車代」と記された領収書を受け取った。

 大型車ゾーンから道を挟んだ反対側には、「元乃隅神社」の大きな赤い鳥居が立っていて、そちらに向かった。その下を抜けて緩やかな坂道を上がる途中から見えたのは、多くの小振りの赤い鳥居が海に突き出た小さな岬まで続く印象深い光景で、それはパンフレットの表紙に載っていたとおりだった。
 先に進むと、二つ目の大きな赤い鳥居があり、その下から、小銭を鳥居に投げ上げている人がいたので、その理由を尋ねたところ、その中央上部に設置された賽銭箱にお賽銭を入れているという。どうも「日本一入れづらい賽銭箱」と言われているそうな。
 その鳥居の先には小屋が見えたが、社殿らしい建物はなかった。賽銭箱が備わっている鳥居から海側に下りると、そこに拝殿らしき建物があり、そこでいつものように手を合わせ祈った。
 その下から約100mにわたって123基の赤い鳥居が始まった。鳥居も見ながら階段を降りるので、踏み外さないようにと注意をしながら、最後の鳥居まで下り終えた。
 その先には「龍宮の潮吹」(りゅうぐうのしおふき)の場所が見えた。潮吹きの理屈は、岬の断崖下の海蝕洞に荒波が打ち付ける度に海水が中の空気と一緒に吹き上がるとのことだが、荒波のない静かな今日の海による「潮吹き」の現象を見ることはなかった。
 そこから神社側を振り返ると、全ての赤い鳥居が一堂に見えて、その風景の端に「ジル」も見えた。
 見渡した風景の中に「ジル」がちょこんと見えるのは、親が小さな我が子を見つけた時の喜びに似ているようで、それも「キャンピングカーの旅」の楽しい一面なのだろう。
 多くの赤い鳥居の中を登りながら、元の場所に戻った。そこから振り返ると、パンフレットに書かれた「青い海と空、そして朱色の鳥居のコントラストが美しい絶景」とまではいかなかったが、良い景色だった。そして、この神社への参拝は、下から上に登るのが正式なルートでないかと思いながら、ちょこんと見えていた「ジル」に戻った。
 
 後に、この神社の歴史を調べたところ、1987年に地元の漁師が夢のお告げを受けて創建した個人の所有物であることが分かった。果たして、ここでの参拝で、ご利益があるのだろうかと思ったが、それより、SNS映えしそうな日本海をバックにした赤い鳥居が続く風景は圧巻で、「日本の最も美しい場所31選」にも選ばれるほどの印象深い景色に納得した。

 R191に戻り、西進を再開した。やがて「角島大橋」の案内表示があり右折し、少し走ると目の前に、テレビCMで登場する「角島大橋」が現れ、今日の最後の立ち寄り場所に到着した。
 その袂に立っていた結婚式の前撮りのようなピンクのドレスを着た女性を横目で見ながら、長い橋を渡り始めた。先ずはストレート部分を走っていると、海の上を走っている興奮が湧いてきた。中ほどで、鳩島の横を通過する際は、橋が少し南側に湾曲した。それからもストレートになり、全長1,780mの橋を渡り終えた。
 その南側には展望公園があり、そこから角島大橋の写真を撮った。ただ、手前の藪が邪魔になったので、三脚を使用し、セルフタイマーで、頭上1.5m位から撮ったものだ。
 その公園内の東屋にいたハーレーのライダー2人と会話になり、薮で良い写真が撮れない話になり、先ほどの方法で撮った写真を見せながら、会話が続いた。

 再び橋を渡り、本土側の駐車場に停めてから、橋の写真を撮った。本土側からの写真の方が橋が美しく見える様で、ベターな気がした。
 写真を撮りながら、ふと思ったのは、橋を湾曲させず、ストレートに架けられるように、鳩島の中央を削るかぶち抜くようにしたならば、現在以上に注目されたはずで、CMの本数や観光客の数も、今以上ではないかと。

 そして、福岡県の実家に向かいアクセルを踏んだ。下関が近くなるに連れ、家の数が増えて行く。
 その時、「安岡海水浴場」の標識があり、幼少の頃、家族で行ったことのある海水浴場だ。その頃は、北九州市の小倉区(現:小倉北区)に住んでいたが、この海水浴場については50年以上も思い出さなかった場所だったが、「安岡」の二文字を見ただけで思い出すとは、不思議なものだ。