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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(後編))

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 今日の商売が始まった「神門通り」の店を見ながら、参道の右を歩いたり、左側を歩いたりしていると、老舗の旅館が見えた。「竹野屋旅館」と書かれていた。後で何気なく、この旅館を検索したところ、1877年創業の老舗旅館で、竹内まりやの実家とのこと。経営不振になった際に彼女からの経済的支援もあり、事実上彼女は旅館のオーナーになってしまったとか。

 一畑電鉄大社線の「出雲大社前駅」に戻って来た。
 先ずは外観の写真を撮ってから中に入ると、そこには木製の長椅子が並んでいて、壁には教会を連想させるカラーグラスが窓にはめ込まれており、駅が建てられた昭和の頃から続く、古くてモダンな雰囲気があった。そして、ホームに出てみると、現行の電車と古い電車が停まっていた。
 その古い電車は展示車両のようで、その中に入ることができた。そこは駅舎と同じ頃の雰囲気が広がっていて、中吊りのポスターを見上げると、この電車の斜め前に座る俳優の中井貴一が主演の映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」のものだった。この映画は見たことがあり、このポスターで、この一畑電鉄が、この映画のロケ現場だったと気付いた。ちなみに、この車両は「デハニ52」で、映画の中で走っていたので、動態保存されているのだろう。
 その運転席に座ることができるようだ。映画の主人公のことを思い出しながら座り、セルフタイマーで自撮りしながら、運転手の気分になっていた。これは「何鉄」というのだろうか?
 この「出雲大社前駅」の駅舎は国の登録有形文化財に登録され、且つ近代化産業遺産にも認定されているとのことだった。

 道の駅に駐車している「ジル」に戻り、道の駅の営業開始時刻前に出発して、「出雲日御碕灯台(いずもひのみさきとうだい)」に向かうことにした。
 先ずは「ジル」で、先ほど歩いた「神門通り」をゆっくりと走り、「二の鳥居」のある勢溜の交差点を左折した。このあたりには幾つもの駐車場があり、そこでの車中泊は可能なのだろうかと思っている内に、T字路の交差点に出た。その正面が「稲佐の浜」で、既に、そこの駐車場に入るクルマが何台も待っている状況だったので、灯台からの帰りに寄ることにした。

 この「稲佐の浜」は、出雲平野の西側の大社湾(たいしゃわん)に面した砂浜で、国譲りや国引きの神話で登場する場所だ。その浜辺の奥には屏風岩、別名国譲り岩があり、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)と建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)が国譲りの交渉を行ったと伝わる場所だ。ちなみに、「稲佐の浜」の南側には、国引きの際に島々を結ぶ綱になったとされる長浜海岸(薗の長浜)が続いている。
 この「稲佐の浜」は、神無月に全国の八百万の神々(やおよろずのかみがみ)をお迎えする場所としても知られている。ところが、天照大御神(あまてらすおおみかみ)をはじめとする高天原(タカマガハラ)という天上の世界に住む神々を指す天津神(アマツカミ:天界における神々の主役であり、天皇家の祖先として崇められている)と呼ばれる神々は来ないとのこと。いずれにせよ、この浜はたいへん「おめでたい場所」だ。

 「稲佐の浜」から大社湾沿いに北上を始めると、先ほどの「ぜんざい」に付いていたおみくじの「大吉」の御利益なのか、曇り空に晴れ間が出始めた。加えて、島根半島の山が海に落ち込む海岸の崖の中腹を走る道からは、岬めぐりのような美しい風景が連続した。
 運転しながら、その景色をついチラッと見てしまうが、直線部が少ない道のため、よそ見運転は危ない。それに、チラッと見ても良く分からないため、じっくり見るのは灯台に登ってからにして、今は運転に集中しようと自分に言い聞かせた。

 「キャンピングカーの旅」に出てからは、交通事故に遭わないこと、それに交通違反はしないことを心掛けている。もしそうなってしまえば、旅の面白さは半減してしまうためだ。
 それに、私の免許はゴールドなので、その分、「ジル」の自動車保険の保険料が安価になっていて、それをキープしておきたいと思っている。

 駐車場は「出雲日御碕灯台」の近くにあり、この旅の4日目の敦賀半島先端の「立石岬灯台」や6日目の丹後半島北端の「経ヶ岬灯台」のように、プチ登山しなくても行けるので、たいへん嬉しい。
 先ずは灯台から100mほど北東側にある「出雲松島展望地」に行った。そこからの景色はリアス式海岸特有の地形と幾つもの岩礁のある荒々しい風景が広がり、その写真を撮った。日本海の海原は一面、白波に覆われていて、少なくとも海上は風速6m/s以上の風が吹いているのだろう。そして灯台に向かった。
 どっしりと聳え立つ白亜の「出雲日御碕灯台」の姿は凛々しく、その上からの眺望に期待しながら入口に向かうと、そこには、「今日は終了」の看板が出ていた。休館日かと落胆したものの、敷地内に入ってゆくと、灯台の入口のドアが開いていた。受付にはスタッフがいたので、看板の件を説明したところ、急いで看板の表裏を換えに行った。戻って来たスタッフと会話を続けたところ、つい先ほどまでは強風で灯台には登れなかったとのことで、実は、昨日までの数日間もダメだったとのことだった。
 灯台内部は土足厳禁のため、靴を脱いで登り始めた。163段のらせん階段を登り切り、展望台に出ると、それでもかなりの風が吹いていた。展望台をぐるりと回りながら周囲の写真を撮った。
 東方面には、島根半島の山から海岸に突き出した十六島岬(うっぷるいみさき)にかけて、幾つもの巨大な白い風車群が見えた。そこは風車公園として整備され、発電設備は26基、日本最大級の風力発電施設が立ち並ぶという。
 北側には日本海が広がっており、その手前には、先ほど行った「出雲松島展望地」までの遊歩道が見えた。目を少し東側に移すと、遥か向こうに隠岐の島が見えるとのことだが、その方面は雲があり、残念ながら島影は見えなかった。
 南西方面には、大社湾越しには三瓶山(さんべさん)や石見銀山(いわみぎんざん)のある石見高原(いわみこうげん)の山々なのだろうか、幾つもの山が見えた。

 強い風に冷たさを感じてきたので、螺旋階段を下り、併設する灯台資料展示室に入った。これまでにも、灯台に登れば必ずセットで資料館にも立ち寄り、じっくりと拝見している。
 この灯台の特徴は先ず、地面から塔頂までの塔高が43.65mあり、石造灯台としては日本一の高さだ。それに、灯台の外壁の石材とレンガ造りの内壁の間には空間があり、その特殊な二重構造が耐震設計とのことだ。最後に、歴史や文化的な価値の高さから、「世界の歴史的灯台百選」、「国の登録有形文化財」、「国指定重要文化財」に選ばれているすごい灯台だった!
 資料館から出ると、今から灯台に登ろうとしている多くの人がいた。ちょうど良いタイミングで登って下りてきて、ラッキーだった。