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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(後編))

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 駐車場に戻った時、その横には堀川めぐりの小舟の発着所だったことに気付いた。暫くの間、堀川を走る小舟を見ていると、ニュースで聞いたとおり、その中には炬燵が見えた。
 乗りたい気持ちもあったが、得てして、ひとりで乗る客は少なく、そこにひとりで乗るならば孤独を味わいそうな気がして、今回は諦めた。
 駐車場を出る時、そこに入る時にお世話になった高齢の係の人に、次回は妻を連れて来るねと伝え、松江城を後にした。

 宍道湖から中海につながる大橋川を越えてからR9に入った。
 そこから1kmほどの湖畔は、手前に「嫁が島」を入れた夕陽の宍道湖で有名な撮影ポイントだ。湖畔の反対側の駐車場に「ジル」を停めて、少し歩いた先の信号で湖畔側に渡り、デジカメを向けたが、そこは最適な撮影ポイントでなく、加えて、午前中なので夕陽のない、強い風が吹いていて湖面は荒れて、曇っていて明瞭でない景色だったが、撮った写真はまさしくそのような写真になってしまった。いつか、もう一度来て、夕陽の写真を撮りたい場所だ。

 松江には、もう一度来る理由が次から次に生まれてしまった。加えて、松江の街もぶらぶらと散策したいし、島根大学のキャンパスも歩いてみたい。アレルギーで蕎麦は食べられないが、それ以外の名物を食べてみたい。今度は妻と来よう。心残りが幾つもある松江を後にした。

 さほど走らないうちに「玉造温泉(たまつくりおんせん)」の案内標識があり、有名な温泉地のため立ち寄ることにした。
 R9から住宅街を走り抜け、その先から玉湯川の右岸の道を上って行くと、川の両岸に建ち並ぶホテルが見えてきた。その前を走ると、どこもそうだった気がしたが、道から長いアプローチの奥に建つ大きなホテルに、落ち着いた風格を感じた。
 温泉地を見たくて走って来たが、ここでも、私にとっての温泉地のイメージというと別府のような「湯けむりが立ち昇る風景」から掛け離れたものだった。温泉が噴き出す地球の呼吸のような音もなく、静かでおとなしい風景だった。ただ、玉造川に架かる橋に緑色の大きな勾玉のオブジェが印象的だった。

 以上の印象だけで、玉造温泉を分かったつもりになるのはまずいと思い、ネットで少し調べてみた。
 奈良時代に開湯したといわれる古湯で、江戸時代には松江藩藩主の静養地になっていた。「玉造」という名の由来は、この地で材料の「めのう」が採掘でき、玉造が行われたことに由来しているようで、三種の神器のひとつの八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)も、この地で造られたと言われている。
 この玉造温泉は、化粧水に匹敵する潤い効果を持つと評価結果もあり、城崎温泉、皆生温泉、三朝温泉と共に山陰を代表する温泉地である。ここには日帰り温泉もあり、玉湯川の畔に足湯もある。
 この内容から、今度、R9を走る際は玉造温泉の湯に浸かりたくなった。

 宍道湖の南側の湖畔を走るR9で西に向かい、見えてきた道の駅「湯の川(島根県出雲市)」に立ち寄ることにした。
 駅舎の中のショップやレストランを見ていると、「のどぐろ丼1,500円(数量限定)」が気になったが売り切れだった。既に正午を回っていたので仕方がない。ちなみに「のどぐろ」の正式名称は「アカムツ」だが、「のどぐろ」の方がメジャーだ。他のメニューにはあまりそそられず、結局、「ジル」に戻って、湯を沸かして、大盛りカップ麺の焼きそばが昼食になった。

 昼食後は、コーヒーカップを持ったまま、道の駅の駐車場の横にある「美人の湯 湯の川温泉の足湯」に足を浸けた。ちなみに、この「湯の川温泉」は「日本三大美人の湯」のひとつで、先ほどの「玉造温泉」も肌に良く、美人の湯といわれ、そのような温泉が並んでいるのは、旅人の心をくすぐるものだ。
 そこで、この地方のマップで温泉を検索したところ、他に幾つもあった。その全てに浸かって旅を進めるならば、癒され、癒され、複数の温泉での湯治が続き、最後は疲れてしまい、この地から1週間は脱出できないような気がした。

 出発する前に買い込んだ食料が部分的に底を突きそうになったので、それに、野菜をあまり摂っていなかったため、前日に在庫を確認しながら作成した「買い物一覧」を手に、R9沿いのスーパーに入った。
 「買い物一覧」の中には、ただ「鍋料理」と書いた一行があり、自分で自分を悩ませてしまった。自分で作る初めての鍋料理だったからだ。味はどれにするのか、その素はあるのか、具はどうしようかと、食品棚を見回りながら、たどり着いたのは「プチっと鍋」、色々な種類の味があり、無難なものとして「寄せ鍋」を選んだ。
 具についてはあれこれ迷ったが、鯛の身が入ったつみれ、野菜は、色々と入った鍋用のセットがあり、便利が良いことを痛感した。ついでに、おでんセットも買ってしまったが、世の中には、何でもあることが分かった。今は「おひとり様」の客が多いのだろう。

 出雲大社にほど近い道の駅「大社ご縁ひろば(島根県出雲市)」に到着した。今夜の車中泊の場所だ。
 この駅舎は出雲大社をイメージしているのか、特徴のある外観に先ず目を奪われた。かなり広い駐車場があり、車中泊しそうなクルマが既に停まっていたが、「長時間の駐車はお控えください」との看板にも目を奪われ、ちょっと気になった。
 今、少し強い風が吹いていて、時折小雨が降っている。出雲大社までの参道は1km弱だが、今から歩く気分にはならず、明日、参拝することに決めた。
 そして駅舎に入った。いつものように、夕食用の「もう一品」のおかずを探していると思い出したのは、夕食は鍋料理で、その食材を揃えていたこと。結局、何も買わず、ウィンドショッピングになってしまったが、ここのショップは素晴らしく、デパ地下にいるような錯覚を憶えてしまった。

 「ジル」に戻るとやはり、「長時間の駐車はお控えください」との看板がやはり気になったが、翌朝の早いうちに参拝して、営業開始時刻までに出発すればいいと判断して、予定どおり、ここで一晩、お世話になることにした。

 夕食までは少し時間ができたので、道の駅の足湯に浸かることにした。
 数人が足湯を楽しんでいたが、座る場所はまだまだ空いていた。足湯の浴槽の縁に並んでいる座布団に座り、足を浸けると、ちょうど良い湯加減だ。じんわりとした温かさが効いてきて、気持ちに余裕が出た頃、私の斜め前に、マスクを付けているので年齢は分からないが、二十代後半くらいの女性がいた。
 世の中は、新型コロナ感染症の第5波が下火になってきてはいるが、今後のことは誰も分からない状況で、私も含め、殆どの人が人込みでは、感染防止のためのマスクを付けていた。
 その彼女に声を掛けると、札幌から飛行機で福岡に飛んだはずが、天候の悪化で松江に着陸したとのことだった。これまでに私は、北海道には何回も行ったことがあり、さらには「ジル」で旅をしたいと思っていたこともあり、彼女とは色々な旅の話で盛り上がってしまった。気付くと1時間が経過していた。セカンドライフを送っている中年のおじさんに、楽しいひとときをくれて、サンクス。

 夕食の準備を始めた。初めての鍋料理になるが、その作り方が分からない。材料は揃っているはずだ。