悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(後編))
■11/11(旅の10日目):島根県松江市 ⇒ 同市(道の駅:秋鹿なぎさ公園)
【この日の旅のあらまし】 道の駅「本庄」から中海に浮かぶ大根島(だいこんじま)と江島(えしま)に渡り、通称「ベタ踏み坂」の江島大橋で弓ヶ浜半島に渡り、JR境港駅近くに「ジル」を駐車。「みなとさかい交流館」と駅舎内を見て回り、「水木しげるロード」を散策、「水木しげる記念館」に入館した。「ベタ踏み坂」を往復して、弓ヶ浜半島に戻り南下して、道の駅「あらエッサ」で小休止。「和鋼博物館」に立ち寄り、島根県の県庁所在地松江の「松江しんじ湖温泉 ちどり湯」に浸かり、宍道湖の北岸の道の駅「秋鹿(あいか)なぎさ公園」で車中泊。【走行距離:90km】
【忘れられない出来事】 鬼太郎や妖怪の漫画やアニメ、戦記などのこれまで見聞きしたものの全てを振り返ることができた「水木しげる記念館」、そこまでを往復した「水木しげるロード」には至るところに昭和が残っており、当時の出来事も含め、半世紀以上も前の幼い頃のことを思い出させてくれた。
【旅の内容】 昨夜はかなりの雨が降っていたようだが熟睡して、6時半に起床。バンクベッドの居心地の良さを毎朝、感じている。
昨夜の天気予報では、次第に雨が上がるとのことだったが、雨はまだ降っていて、中海が霞んでいた。テレビのNHKニュースを見ながら朝食の準備を始め、「キャンピングカーの旅」で初めての朝ラー、いわゆる、朝からのラーメンになった。飲み物はインスタントコーヒーと牛乳、食後にバナナを食べた。
朝ラーを食べながら、境港駅に向かうルートを考えていた。
昨日ここまで来た中海沿いの道を引き返し、もう一度、境水道大橋を渡れば最短距離で簡単に着くのだが、中海の中の二つの島を走り、あの急勾配の「ベタ踏み坂」の江島大橋を渡るルートを選んだ。
道の駅から中海沿いに南に進むと大根島(だいこんじま)から延びる堤防が見えてきた。湖畔からは、小さな和船くらいが通過できそうな低い橋を渡り、細長く延びている堤防の道を走り、大根島に入った。
島の北側の湖畔の道を走った後、江島(えしま)には橋ではなく堤防が続いていて、実質的には地続きのようだが、それでも水路くらいはあるのだろう。
江島の北側は工業団地のような雰囲気で、小規模火山で形成された大根島と違って江島は、小さな島の周囲が埋め立てられてできた島なのかもしれない。そこに建っている工場や倉庫の間の先に見えた江島大橋(えしまおおはし)は、アクセルをベタ踏みするほどの勾配は感じられず、気付くと橋の頂上を走っていた。そこからの下り勾配はかなりきつく、多分、今走っている坂が「ベタ踏み坂」なのだろう。境港の町を散策した後に、もう一度、この急勾配の坂道を走りたくなった。
JR境港駅の駅前の駐車場に「ジル」を停めた。
駅舎より先に、ゲゲゲの鬼太郎や妖怪たちの巨大なパネルが目立つ「みなとさかい交流館」に入った。そこは情報発信基地のようで、隠岐の島行き「フェリーターミナル」でもあった。その2階に上がると、境港に寄港したクルーズ船の写真が貼られていて、その数と言い、巨大さに驚きながらも、海外から船で来る観光客にとっては、境港が山陰地方の玄関口になるのだろう。そして、クルーズ船の写真の写真を撮った。
この紀行文の執筆の際に調べたところ、島根半島の北側の日本海に面した七類港(しちるいこう)にも、隠岐の島行き「フェリーターミナル」があることを知った。こちらは島根県で、境港は鳥取県、両県から隠岐の島にフェリーが出ていたのだ。
この旅の中で、このことを知っていたならば、七類港まで行ったことだろう。いずれの日か、隠岐の島に渡りたいものだ。
「みなとさかい交流館」を出てからはJR境港駅の駅舎に向かった。
駅舎の前には、机で漫画を描いている水木しげるを鬼太郎とねずみ男が覗き込んでいるような像があり、駅舎の窓ガラスには「鬼太郎駅」と書かれ、その駅舎に入ろうとしたときに、先頭車が「こなきじじい」のラッピングカーの2両編成の気動車(ディーゼルカー)がホームに入って来た。ここは「水木ワールド」の入口で、その駅舎に入っていった。
その中は「ゲゲゲの世界」のようで、どこを見ても鬼太郎や妖怪がいて、その徹底ぶりに感心した。水木しげるや鬼太郎が、この地の人に愛されているのだろう。
「ジル」を市営駐車場に移動し、「水木しげるロード」の散策を始めた。どこを見ても「ゲゲゲの世界」があり、目玉おやじの形をした外灯もあった。そして「水木しげる記念館」に入り、時間を忘れるほど、展示物や情報をじっくりと見て回った。それにしても、記念館の来場客の平均年齢は高いようで、ゲゲゲの鬼太郎や他のアニメや漫画を当時見た年代なのだろう。
駐車場への戻り道は「水木しげるロード」の反対側の歩道を歩き、両サイドの店を欠かさず見て回った。
この紀行文の執筆中に、「水木しげる記念館」のHPを覗いたところ、2024年4月20日にリニューアルオープンとの情報が載っており、再び境港に行くことを決めた。
もうひとつ、水木しげるが長年住み、朝ドラの「ゲゲゲの女房」の舞台になった東京都調布市あたりにも行ってみたいと思っている。
もう一度、江島大橋に向かうことにした。今度は東側からの上りになることから、ポスターに載っているような急坂の「ベタ踏み坂」で、車重3トンの「ジル」のアクセルを踏み込むことになると思っていると、見えた! 厳しい勾配の上り坂が見えた! タイミングよく、橋の手前の信号で止まることになり、その待ち時間で、フロントガラス越しにはなったが、上り坂の写真を撮ることができた。坂の付け根の上り口から見上げる勾配はかなりのものだ。目の前の急坂が、私の遠い過去を思い出させてくれた。
40歳を挟む5年間、南米のコロンビアに仕事の関係で駐在したことがある。
南アメリカ大陸の背骨のようなアンデス山脈の北部はコロンビアで3本の山脈に分かれている。東側のオリエンタル山脈と中央のセントラル山脈、そして西側のオクシデンタル山脈だ。首都のボゴタはオリエンタル山脈にあり、標高約2,600mの1,000万人を超えるメガシティであり、世界最高地の大都市だ。
私の赴任先は第2都市のメデジンで、セントラル山脈にある標高約1,500mの盆地の中にあり、当時250万人が住んでいた。今現在は350万人とのことだが、豊かな経済の発展で人口増になったようだ。そこは北緯6度だが、標高が高いため常春から常初夏のような気候だった。2,500m級の山々に囲まれているためメデジンには坂が多く、中には30度のスキーゲレンデのような坂もあり、登坂性能の高いクルマや2輪でないものは、上り坂の途中で右往左往しながら、なんとか上って行く光景を見たことがある。その光景が今、脳内に浮かんでいた。
「ベタ踏み坂」とは的確な愛称だと思いながら上り詰めて江島に渡り、道沿いのGSに立ち寄った。その日の朝のニュースで、ガソリンの高騰が話題になっていたので、軽油の残量はまだ1/3ほどだったが、リッター141円というかなり安いレベルだったため補給した。
このGSのガソリンも軽油も、何故安いのかと考え始め、その理由を自分なりに整理してみた。