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ミユキヴァンパイア マゲーロ4

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 体内の通信機能を使ってとりあえずマゲーロに連絡した。するとその日のうちに彼は窓辺に現れた。例の件を報告し指示を仰ぐ。ついでにミユキ本体の様子も聞いてみた。
 「あいつは適応能力あるから養い親の所でそこそこうまくやっているよ。学校の図書館の本を読み漁ってるみたいだ。もっと大人向けの図書館はないのか聞かれたんだけど人間用の本はそうそう持ち込めないからねえ。しかるべき場所に行けばインターネットが使えるから今度連れて行くと約束した」
 なるほど、当然ミユキはバカな過ごし方はしていなかったようだ。シャングリラのこともそこそこ探りを入れているのだろうか。あまり関わらないほうがいいのだが
 「そうそう、田中ミラに関して詳しいことを教えて欲しいんだけど」
 「ああ、ある程度までしかわからないんだが、このマイクロチップに入ってる。あ、ちなみにこれの内容は他のエージェントには極秘だからな」
とチップの入ったケースを寄越した。
 「サンキュ、わかった。後でじっくり読むわ」
 「とにかく、接触できたら相手が本当に田中ミラかを確認し現状を把握すること。今に至る経緯も聞ければ聞いてくれ。その後どうやってこっちに連れてくるか考えよう。説得できるに越したことはないが、いざという時は眠らせて小さくしてこっちに連れてくるしかないかな。ただいきなり失踪というのも事件になるしなあ。うーん、どうしようかなあ」
マゲーロはうんうんうなったままだ。
 「なんか頼りないわね」
 「だから現状把握してからだっつの。相手にはこっちの存在はばれてないんだから焦らなくていいから」
 「そうね、今回はミツエちゃんも一緒だから下手に動けないしね」
 「んじゃ俺地下の仕事があるんで戻るわ。ミラの件よろしく頼む。あとくれぐれも気をつけてな。正体がばれたと知ったら何するかわかんないから。お前がやられるとミユキ本体も危ないから」
 「わかった。慎重にいくわ」
 よろしく、と手をあげるとマゲーロは窓から消えた。

 さて詳しいことを知っておかないと。私はシャングリラ仕様のマイクロチップを取り出しこめかみに刺しこんだ。ここに、読み取り機能がついているんだわ、私たちには。
 
「田中ミラ。地球歴××××年、偽造パスポートにて英国より日本入国。空港待機していたエージェントによって感知され報告された。監視を予測してか尾行に気づき、振り切って逃走。それまでは英国および欧州を中心に転々としていたと思われるが詳しくは不明。シャングリラから逃亡して200年近いと思われる。彼女は人間に対し吸血行為を行うことでその人間の遺伝子を上書きし、本人に成りすます方法を獲得して人間社会に紛れて生き延びてきたカミラ・ターナーと同一人物と思われる。吸血対象が早い段階で絶命するため問題となっていたが、近年吸血死する人間が出なかったため死亡したと見なされていた」

 これだけ?漠然としているわね。極秘っていうのは他のエージェントが真似するといけないからかしら。
 しかし肝心の吸血行為と上書きについて詳しく書いてない。最近吸血鬼が出現していないのにどうやって生き延びてきたんだろう。まあいいや、あさって本人に会うからよく観察してみよう。親しくなってちょくちょく会えれるようになればいずれしっぽを捕まえられるかもしれない。

 当日は学校が終わって帰宅してからミツエと待ち合わせて田中先生の家へ向かうことになった。



7章
 「もうー!つっまんなーい」
 マゲーロの顔を見るなり私は訴えた。
 地底の居住区にあるチューブのステーションを偽装した神社の境内である。話したいことがある、とマゲーロを呼び出したのだ。
 「だって毎日学校に通ってどうでもいいような授業を受けなきゃならなくて、いつもの仲間じゃない子たちとお友達付き合いをしなきゃならなくて、しかも本当のことは言えない。もうイラつくったらないわ」
 「ま、まあ、落ち着いて」
 マゲーロはなだめにかかった。
 「エージェントMがうまいこと接触を果たしたんだ。もうすぐ解決するから、そしたら帰れるから。な?」
 「そうじゃなくって、私はここでもっと色々見物したいのよっ」
 「いや、それは無理だ。ミユキっちがここから出てあちこちうろついたら不自然すぎる」
 「じゃあせめてMに会わせてよ。直接地上の話を聞きたいもの。あまりに長く会わないでいると記憶がちゃんと残らないでしょうが。一気に記憶交換なんかしたら容量オーバーで忘れちゃうっての」
 「ああ、それもそうだよな。よし、作戦実行の前に一回呼ぶわ」
 「頼むわよっ」
 
 これでMから何か情報が得られるかもしれない。私は長々とここにいるうちに、なんだかとても理不尽なことがまかり通ってるのがわかってきたのよね。だってここにいる飼いならされた子供たちって絶対おかしいもの。喧嘩もしなけりゃもめ事も起こさない。
 神隠しとかいってこれ誘拐でしょう。子供を勝手に連れてきてエージェントと交替させて、本人は知らないうちに親から引き離され一生ここで過ごすなんて、完全に犯罪でしょ。超やばくない?
 ここのこともっと詳しく知って、大人になったらなんとかしたいんだけど。ああ、そうか映画なんかだとあまりしつこく探りを入れたりしたら「お前、知りすぎたな」って消されるのが落ちよね。気をつけないと。あのマゲーロはどう見ても怪しい奴だし考えても見れば私に安全の保障なんて何もないんだわ。Mは信用できるのかなあ。私自身なんだから私が私を信用しなくてどうするって感じだけど。
 妙な好奇心起こして首ツッコむんじゃなかった。あの兄弟程度に無邪気に取り組んでればよかったんだけど、滞在期間が長かったから色々気づいちゃったというか。

 翌日、Mが地底にやってきたというのでマゲーロに連れられて神社の中に作られているステーションに行った。チューブで少し移動し三人だけで会える場所に行くのだ。
 よくわからないけど何か事務所のような個室に通される。Mはそこにいた。
 「久しぶりね、ミユキ」
 「うん、久しぶり」
 「まずは握手」
私たちは手を取り合って記憶交換した。
Mはさっそくターゲットを見つけたらしい。ミツエちゃんと買い食いしてたんだ。ふ
うん。ミツエちゃんが英語教室通ってたなんて初耳だわ。こっそり勉強してたんだ。
「で、作戦なんだが」
マゲーロが口を開く。
 「Mにはターゲットに接触してもらって本当に田中ミラなのか確認してもらう」
 Mはすぐにエージェントの顔に戻り応答している。
 「その後はどうするの?」
 「できればここに連れてきて欲しいんだよね」
 「どうやって?」
 「ほら、あのハムスターもどきが逃げたときに使ったやつがあったろ。小さくしてケースにいれちゃう。そしたら運べるぜ」
 「相手は人間の知能があるんだからそう簡単じゃないと思うけどな」
 「だよなあ」
 マゲーロが腕を組んで首をかしげている。頼りないったらない。見ていてじれったくなった私は思わず口をはさんだ。
 「あのさあ、今時大人が一人行方不明になったら神隠しでは済まないと思うんだけど。警察とか来るよ。どうするのさ」
 しばし黙考したあとマゲーロはしれっと言ってのけた。