7つの夢の物語
第6夜 夢を見る人
大勢で食卓を囲んで食事をしていた。いろいろな料理が供されていたが、デザートとしてか、バナナが出てきた。
ところが、そのバナナを口にしたある人が、
「このバナナ、悪くなってる。食べない方がいい」
と声をあげた。
すると、食卓にいた人たちの目がある少女に一斉に集まった。今しもその少女はバナナを口にしようとしている。
みんなが一斉に、
「食べちゃダメ!」
とその少女を止めた。バナナを食べるのをやめた少女を見て、みんなが胸を撫でおろしている。
なぜことさらにその少女を皆が気にするのか?
不思議に思って近くの人に聞いてみた。すると、
「だって、我々はあの子の見ている夢の中にいるんだよ。もしあの子に何か起きたら、我々の存在が危うくなる」
なるほど、その子が夢の中で食べたバナナでお腹を壊したら、夢に影響が出るということなのか。
何だかよく分からないが、それよりも、自分は他人の夢の中で、自分という意識を持っているのは一体なぜなのか。またここにいる人たちは、自分が他人の夢の中にいることを当たり前のこととして受け取っているようだが、そのような意識を持ちながら普通に生きていくことが可能なのだろうか。
少女は食事を終えて満足そうに座っている。一体、君はどんな夢を見て、自分たちに何をさせたがっているのか、聞く機会も与えられないまま、自分自身が目を覚ましてしまった。