7つの夢の物語
第5夜 パラレルワールド淘汰
もう間もなく、あるパラレルワールドとの融合が起こることをみんなが知っていた。この世界の人間すべてが、別の世界に移転させられるのだ。
同じ人間が二人存在するのは不都合だから、どちらかはその世界から姿を消さねばならない。パラレルワールドと融合するたび、より優れた方が残っていくならば、なるほど、これは新しい淘汰の形であろう。
果たして自分は残る側なのかどうか。ふと気づくと、自分は高校生として実家の部屋に存在していた。知らないうちに融合が完了し、パラレルワールドに移動したらしい。しかも、なぜか元の世界と少しずれた時間に来てしまったようだ。ふと窓の外を見ると、大勢の人がぞろぞろとどこに向かって移動している。きっとあれが、融合の結果、不要とされてしまった人たちなのだろう。
自分がこうしていられるということは、自分は残る側で、パラレルワールドにいた自分はどこかに行ってしまったに違いない。果たしてその自分は、どんな人間だったのだろう。
気づくとリビングに母がいた。これは、こちらの世界の母親らしい。こちらの世界の自分はどんな子だったのか、聞いてみたくても何となく言い出せずにいると、その母親は、「何だか難しいことばかり考えている子だった」と、つぶやいた。
なぜ自分の方が残されたのか、思案しながら部屋に戻った。自分の部屋ではあるが、パラレルワールドにいた自分が使っていたものだ。見ると、日記らしきものが残っている。
対面することもなくどこかへ行ってしまったこの世界の自分。その自分のことが知りたくて日記に手を伸ばした時、目が覚めた。