ニューワールド・ファンタズム
「《竜牙衝撃(ドラグブレイカー)》!」
竜の形になったそれは剣の先にいる二人を襲う。
「流水剣・柔ノ剣?河川敷?!」
師匠がそれを受け流す。しかし竜は街の建物を噛み砕き、破壊する。
「なんて威力…」
「こっちも加減できないな……」
「真相解放…全開。?星砕きの流星群(スターロード)??王(レクス)?!」
「草薙の剣。流水剣第六秘剣?天叢雲剣?!」
二つの強大な力が俺に向かっている。しかし俺自身は何もしない。この先に起きることを仕組んでおいたから。
?全防御(フルガード)?
あらかじめに設定しておいた行動に対して炎が自動的に俺の身体から溢れ出て二人を迎撃する。これが俺の炎と《反撃》を合わせた防衛手段。
「炎?」
「貫けない…!」
その時、一発の弾丸が俺達の間に当たる。
『どういう状況だこれは』
「エイル!」
『あいつらは敵なのか?』
「いやちょっと違う。みんなは生きている。彼らの目的はあくまで無力化だ」
『加減できる相手か?』
「できないな」
『了解。?英霊武装?振動ブレード・融合(オン)!?エクスカリバー・進?!』
「いくぞ!」
エイルの機体はブースターを限界まで稼働させて最高速度を生む。
「連携!」
『任せろ』
「「?双王の太刀?!」」
そして俺はすかさず両掌に炎を集中。
「?双炎?!」
?炎掌?のざっと倍の威力だ。
しかし二人はこれで倒れるような人達じゃない。一対一の方が良かったな。
「アルタイル、一つ聞いていいか……?」
「なんですか?」
「お前はなぜ、《勇者》の剣技を使っている……?」
「…?」
「お前の使う《竜技》…ドラグシリーズ……誰に習った…?」
「祖父と父の剣術ですけど……」
「その二人の名前は!」
「二人の旧姓は………《シリウス・コスモスター》と《シン・コスモスター》」
「…ハハッ、なるほどな。お前の強さも納得がいく……」
「アース、どういうこと?」
「アルタイルの親たちの正体は、《勇者》だ。」
「?」
(爺ちゃんと父さんが、《勇者》?)
「そういうことなら色々説明がつく。世界で一人のはずの《勇者》の剣技をなぜ扱えるのか。親から受け継いだものだったんだな。」
勇者はこの時代にもう存在している。勇者の証である《力》。継承したものだったのか。
「お前の父は竜技の中でも刺突系を得意としていた。それはお前もそうじゃないか?」
確かに俺は《竜牙突撃》を最も得意としている。扱いやすく、隙も少ない。
お父さんが見せてくれた技の大体が刺突系だったな。
「まったく、あいつらしいな…」
「師匠、父さんのこと知って……」
「俺は二代目勇者パーティーの剣士、アタッカーだったんだ。」
「父さんの仲間……」
「勇者パーティーの底力、見せてやる!」
「なら……」
俺は真相解放を解除。二本を直してナイトプレートを引き抜き。ローブの中からとある物を取り出す。
「それは……魔石?」
「ああ、さっき倒したファイアドラゴンの魔石だ」
「それで何する気だ?」
「お楽しみってことで」
「なら、こっちも刺突系で決めるか」
「へえ、《勇者》の一撃を超えると?」
「お前は《勇者》じゃないだろ?」
「じゃあ…………行きます!」
「?流水剣?!」
草薙の剣を覆う木の葉が刃に宿り、刃が緑色に輝く。
「第一秘剣!?布都御魂剣?!」
突進刺突技。しかも闘気を足から噴射して推進力を得ているのか……。この国の戦闘機と同じ考え方だな。
対する俺は手のひらサイズの魔石を空中に放り投げる。そしてそれを。
「?人魔剣??竜技?《竜牙突撃(ドラグストライカー)》!」
ナイトプレートで魔石を突いて押し出す。加速した魔石は師匠めがけて飛んでいく。
そして魔石の周りに闘気と魔力が螺旋を描き竜の形を形成する。それに魔石が反応して更に力を増す。この技は普通のとは違う。いつものは発動速度を重視しているのに対して、今回の技は威力重視。それを竜の魔石でブースト。
「くっ、なんだこの重さ……!」
師匠と技がぶつかり合う。
「吹っ飛べ……!」
俺の言葉に呼応するかのように竜の力は増し、師匠の剣に喰らいつく。
師匠が大きく後ろに飛ぶ。しかし師匠は上手く身体を捻り衝撃を最小限に抑える。竜は地面を
抉り、城の一部を砕く。
「ハア……ハア……凄まじいな、アルタイル……」
「……まだ奥義が残ってますよね」
「チッ……、見せたのは失敗だったか」
「もう発動条件は揃ってるはずですけど」
「……やる気なのか?」
「俺は本気です」
「……やめとくよ」
「……?」
「俺も奴隷制には嫌悪感を持っているが……必要悪だと思っている」
『……』
《セルウス》の足から駆動音が聞こえる。
「やめろエイル。必要悪だといいましたね。……そんなこと言ってるから魔王なんて生まれたんだろうが…………」
「……ッ………」
魔王――人間がモンスターに進化した存在。魔物を操る力を持ち、勇者と同等の力を持つ存在。人間が大きすぎる負の感情を背負った時、稀に覚醒する。
魔王が生まれた理由……それこそ、元奴隷の覚醒。とある国で虐げられていた部族の青年が、最愛の人を目の前で殺されたことをキッカケに魔王として覚醒した。そして二代目、それは半魔王だった。魔王になりきれず、苦悩のまま戦った。
ようやくわかった。俺が奴隷制度を嫌っていた理由。性格的な話だけではなく、親の記憶を心の奥底で知っていたから……?
「……分かったよ。降参だ」
「アース、いいの?」
「これ以上やったらどっちか死ななければいけないからな。……それは嫌だろ?主にアルタイルに対して」
「うん……やだ」
『話は纏まったか?』
「おうよ!」
『よかった』
「ところでアル、その人?は……」
「ああ、紹介するよ。大隊長のエイルだ」
「どうも」
「こちらこそ」
「すまなかったな。君の仲間を傷つけて」
「いや、気絶に抑えてくれたんだ。それに、そちらの事情も理解しているつもりだ」
コックピットを開けて話すエイル。
「俺達も協力するよ」
「うん」
「いいのか?依頼が……」
「依頼以前の問題だ。解放しようぜ!」
「師匠……」
「私も頑張る」
「アリス……」
『おいおい、俺達も忘れてもらっちゃ困るねえ』
そこには起き上がった一番隊。二番隊、三番隊も……。
「みんな行こう!」
城には誰もいない。――人間は。
「来たわね。反逆者」
「ああ、来たぜ……女神!」
俺はナイトプレートを背中から引き抜き、片手剣突進刺突技《ソニックシュート》を発動。しかしそれは光の壁に防がれる。
「神に勝てると思っているのかしら?」
「思ってるさ……エイル!」
「ハアッ!」
エイルは機体から降りてベールリオンを手に殺意を込める。
「?王の剣?!」
これも防がれる。
「エイル!受け取れ!」
「こっちも!」
俺は神威を投げてエイルはベールリオンを投げる。
そして俺は炎を発動。神威と俺の身体に同時に炎が宿る。
「「?双炎?!」」
二刀流の炎、そして刀の炎。二つの炎の力。
「「ハアアアアアア!」」
光の壁を打ち破る。理不尽は……俺達の剣が砕く!
(カイン、力貸せ!)
「?陽炎?!」
三点から炎を解放する。
「吹っ飛べえええええ!」
炎でロゼラリアが後ろに飛ぶ。
「こんなものかしら?」
(傷一つないのかよ!)
作品名:ニューワールド・ファンタズム 作家名:川原結城