ニューワールド・ファンタズム
何故母は引き金を引いたのか。それは簡単だ。その頃女が革命を起こしたから。それを引き起こしたのが……。
『ロゼラリア……あいつは……殺す……!』
「させるかぁああ!」
英霊の動きをトレース。王の剣術。それに対し騎士はスキルを発動させ、向かってくる。
「?光の大剣?!」
騎士の剣を打ち破り剣士を追いかける。
「ウソだろ……」
その頃俺達の前には……。
「上位竜だ……!」
先日エイルが討伐したのは中位竜のレッドドラゴン。こいつは炎属性の《ファイアドラゴン》。
「なんでこいつが……いや、ロゼラリアが呼び寄せたのか……」
『なんにしてもやるしかない!』
『止まるなよ!』
戦闘機のコックピットにあるパネルを操作する。
『神経接続システム最大感度。シンクロ率百パーセント。最大稼働状態!』
『全員……進撃!』
《セルウス》の全身から蒸気が溢れ、赤く光る。更に英霊憑依も乗せた。
『人機一体!』
ドラゴンに向けてサブマシンガンやライフルが掃射される。弾幕によりドラゴンは動けず徐々に削れていく。
「後は俺に任せろ……行くぞ神威、ベールリオン!」
『明日へ導く小鬼斬り。子供斬りて明日を導く』
神威を炎で覆い、大きな刀を創る。戦闘機のイメージを基に右腕に機械的なアーマーが装着され、それで太刀を握る。左手にベールリオンを。これが神威とベールリオンの一段階目の解放。
「?解放宣言?《小鬼殺ノ太刀(ゴブリンスレイヤー)》!」
「行くぞ……《竜牙突撃》!」
竜の形をした炎を身に纏い竜に突撃する。俺の刃はドラゴンの心臓に深く突き刺さる。
「トレース…?陽炎?!」
竜の内側から炎が溢れ出て、その身体を吹き飛ばす。
「先を急ぐぞ」
『おう…』
これは革命の進撃となる。この先、地獄が待っているとしても。俺は進み続ける。
「…あんたは」
俺達の前に現れた騎士。俺はそいつを知っていた。
ロゼラリアが俺を呼ぶために寄こした騎士。クラデオル。
「私が相手だ」
「みんな、先に行ってくれ」
一番隊のみんなは城に向かう。
「よう、久しぶりだな。騎士様」
「あの時は世話になったな。《黒き剣士》」
俺達は互いに太刀と両手剣を向けあう。
「《竜牙突撃》!」
「女神よ我に力を………《神の閃き》!」
刺突と斬撃はぶつかり合い、互いに後ろに吹き飛ぶ。
「?飛剣?!」
炎の斬撃を飛ばす。そして機械の腕に炎を集中。その炎は小さい爆発を生む。
「?爆炎斬?!」
腕から出た爆発の直後、太刀で切りつける。
「《小鬼殺ノ太刀》、真の力を見せろ!」
太刀と腕から溢れ出るのは闘気。刃を闘気の波が覆う。
「?飛天・残影?!?十文字斬り?!」
十文字の光の軌跡。それが騎士の剣と衝突。
「女神に勝利を、我に勝利を与えたまえ!」
そう言って騎士の剣から闘気が溢れ出る。それは加護の力を最大限に発動させた。
「《女神の制裁》!」
闘気の斬撃をサイドステップで躱すが地面が大きく抉れる。前に戦った時にはここまでの力は無かったはず。いや、こいつはあの時闘気を使っていない。俺達はスキル同士で決着を付けた。けれどこいつの本来の戦い方は、剣術士。闘気を使った戦闘法。
これが奴の本当の強さ!
「すまなかったな。あの時は闘気を使わなかった……剣士として詫びよう」
「いや、いいさ。だけど今、決着を付けようぜ」
「……いいだろう。闘気全解放!」
「トレース……アリス!」
俺が新たに学んだのは今まで出会った人の戦い方。それを自身の身体でトレースする。この国の言い方で名付けるなら。
「?英雄憑依?!モデル・アリス!」
「《ロゼラリア・クラン》の騎士よ!私に力を託してくれ!」
「《ストライカー》!」
「《裁きの一閃》!」
神速の攻撃の衝突。太刀と両手剣が限界まで速く動き出す。
「モデル・カイン!?飛天残影?!」
空間を抉りそれを太刀に纏わせる。
「?飛天纏い??次元斬り?!」
残した斬撃を飛ぶ斬撃で押し出す。
「?飛天十裂衝?!」
「《光の裁き》!」
「ハアアアアアア!」
「セアアアアアア!」
光と光のぶつかり合い。鍔迫り合いに持ち込む。
「そろそろ終わらせようか……!」
「いいだろう……」
俺はとある疑問をぶつける。
「あんたは何故あの女神に従う?」
「……難しい事を……私はあの方に救われた。だから従う。いや、私も本心では抗っているのかもしれないな。私は神を守る騎士として戦う。……騎士は民を守るものだろうに……」
最後に奴が言った言葉は確かに俺の耳に届いた。
「……迷いは捨てねば……」
「……行くぞ」
「来い!」
「《小鬼殺ノ太刀》……」
「《光の軌跡》!」
斬撃が触れ合った瞬間。叫ぶ。
「?絶撃?(ブレイク)!」
騎士の剣を叩き折り、俺は腰の鞘に刀を納める。
「あんたの負けだ。クラデオル。」
「……騎士として負けを認めよう。こんな事を言える立場ではないことは分かっている…………しかし一つ。一つだけ頼みを聞いてくれないだろうか…………」
一呼吸。
「あの悪女を、倒してくれ…………!」
「…………任せろ」
ガチャン、と神威から音が鳴る。そしてあの時と同じように頭の中にイメージが……。
(これは俺の力…………英雄の炎よ。力強く、燃え上れ!)
「炎よ、俺の…スレイブ達の翼となれ!…………?自由の翼?!」
俺の背に炎の翼が現れる。その翼は羽ばたき、俺は空を飛ぶ。
空を飛び全速力で城に向かう。しかし俺を待っていたのは。
「なんだよ、これ……」
「お、やっと来たな。アルタイル」
「アル、遅かったね。」
「二人共、何やって………」
「何って奴隷達の制圧さ。ロゼラリアが出した依頼でな」
「アルは違うの?」
「俺は……奴隷を解放する為に戦っている」
「なんだって…」
「アル、正気?」
「正気さ、俺達は、自由だ!」
そう言って俺の翼は現れ、一瞬で消える。
「お前、今の翼は…!」
「そこをどいてくれ」
「俺達だって冒険者だ。」
「うん」
アリスと師匠は剣を構え、俺と相対する。
「二人が相手だと手加減できないぞ…!」
「手加減?いつの間にお前がそう言えるようになった!アルタイル!」
「……ッ」
(英雄の炎、全解放……)
『龍を斬りて夜明けなり。竜を殺して革命なり。――――未来に導く死神葬』
「?解放宣言?《竜殺ノ剣(ドラゴンスレイヤー)》」
先程よりも大きなアーマーで両腕を覆い、そのままの大きさの神威とベールリオンを握る。
「アリス、アルタイルを止めるぞ」
「分かった」
『危機迎えて好機となる。薙ぎ払われし草原。時打ちの刃』
『思い人目指して星となる。星を目指し共に生きることあり。あの人が歩いた道』
「「?解放宣言?!」」
「《草薙の剣》!」
「《星歩軌跡(スターロード)》」
師匠の解放術は剣の周りに葉っぱが飛んでいる。そしてアリスのは光が羽根の形で細剣を覆っている。
「…行くぞ」
「流水剣。剛ノ剣、?流牙閃?!」
闘気を使った突進技。
「スター・ショット!」
アリスは刺突の風圧を飛ばしてくる。不可視の攻撃。
「?飛天??残影?!」
斬撃と刺突を防ぎ、その空間を。
「?次元??十文字斬り?!」
「?飛天纏い?!」
俺の周囲には闘気と暴風が吹き荒れる。そしてそれは紫電を生み、神威に集中する。
作品名:ニューワールド・ファンタズム 作家名:川原結城