相性の二重人格
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。(看護婦、婦警等)当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ちなみに世界情勢は、令和6年5月時点のものです。お話の中には、事実に基づいた事件について書いていることもあれば、政治的意見も述べていますが、どちらも、「皆さんの代弁」というつもりで書いております。今回の事件も、「どこかで聞いたような」ということを思われるかも知れませんが、あくまでもフィクションだということをご了承ください。実際にまだ標準で装備されていないものも、されることを予測して書いている場合もあります。そこだけは、「未来のお話」ということになります。
プロローグ
その日の前日から、柳生は友達の葛城の家に遊びに行っていた。葛城とは、3年くらいの付き合いで、よく葛城に誘われて、彼の部屋で、よく夜を徹して話をしたりしていた。
いつもは酒を飲んだりして、朝まで話をするのが恒例であったが、その日は、酒を飲むこともなく、ソフトドリンクにスナック菓子をつまみながら、他愛もない話に興じていたのだった。
二人とも、夜を徹しての話が好きだった。
年齢的には、葛城が35歳、柳生が30歳と、そんなに若くはないのだが、二人とも、まだまだ若いつもりでいて、将来について語るのが好きだった。
しかし、だからと言って、二人とも、
「お互いがこの二人でないと、こんな話はしない」
と思っていた。
葛城からすれば、
「柳生だけだぞ、こんな話をするのは」
というと、柳生の方も、
「僕だってそうですよ。葛城さんだからするんですよ」
といって笑っていた。
しかも、その言葉は定期的に、どちらからともなく出てくる言葉で、まるで、何かを確認しあっているかのようだった。
そんな会話が、
「そろそろ一年くらいになるかな?」
と、お互いに感じていて、ここ数年、お互いに何が楽しいといって、
「学生時代に戻った」
という感覚になれるのが嬉しかったのだ。
そんな気分になれるのは、年齢的に、
「柳生の年齢でギリギリではないか?」
と思われるかも知れないが、葛城の方は、
「一度終わった青春が、またサイクルで戻ってきたような気がするんだ」
ということで、なつかしさだけではない、何かを感じていた。
この二人が知り合ったのは、仕事上でのことだった。
今から2年前くらいだっただろうか。葛城が得意先での営業の相手が、
「私はこの度転勤することになったので、引継ぎとして、柳生君を紹介します」
ということから始まったのだ。
柳生というのは、前の営業が、
「無骨ではあるが、それだけ頼りになる」
という人だったのと正反対で、若いというのもあるが、身体の線が細く、なよなよしたところが女性的に見え、大げさに言っても、頼りになるということはあり得ないようなタイプだった。
だが、逆に、
「放っておけない」
と思えるタイプで、逆に、自分が頼られていると感じるのだった。
「そういえば、まわりから頼られる年齢になってきたということになるのか?」
と、葛城は考えた。
確かに、そろそろ30歳を過ぎて、営業としても、そろそろ中堅クラスではないかと思うようになると、
「まんざらでもないな」
と思うようになった。
それまでは、先輩の背中を見て、ついていくというのが自分のスタイルだと思っていたが、後輩から慕われるというのも、まんざらでもないと想えてくると、柳生の存在が嫌というわけではなくなっていたのだ。
いつの間にか、柳生と気が合うようになっていたが、さすがに、営業先の会社の人と、個人的に飲みに行くというところまでは、
「大それたことだ」
ということで考えたことはなかった。
しかし、その頃、しゃれたバーを見つけた葛城が、その店に行くようになって、一か月が過ぎた頃、カウンターで一人で飲んでいると、
「葛城さんじゃないですか・」
といって、声を掛けてきた人がいた。
思わずびっくりして、横を見ると、そこに見覚えのある人がニコニコ笑いながら座っていた。
その人が誰なのか、すぐには分からなかったのだが、それは、その人物の笑顔を見たことがなかったからだ。
いつも緊張気味ではあるが、自分のことを頼もしいと思ってくれているように見えることで、
「先輩として」
ということで、笑顔がないかわりに、キラキラした目を輝かせていることで、楽しい気分にさせてくれることが嬉しい柳生だったのだ。
その柳生が、その時、目の前にニコニコした満面の笑みを浮かべているので、拍子抜けしたというよりも、あっけにとられた気持ちになった、
「柳生って、こんな笑顔をするんだ」
と思うと、
「プライベートだからだろうな」
と感じ、逆に、そのことを割り切っているところが、紳士的で、今まで感じていた、
「まだまだ子供だ」
と思っていたのだが、
「すでに立派な大人だ」
と感じさせるところが嬉しかったのだ。
「奇遇ですね」
といって話しかけてくる柳生に、葛城は、
「ああ、そうだね。君はここの常連なのかい?」
と聞いてみると、
「ええ、最初は友達に連れられてきたんですが、最近では、一人の時が多いんです」
という。
いつもはスーツ姿でパリッとした様子だが、こういう店ではさすがに、ラフな服装をしていた。
ラフすぎて、却ってだらしなくも見えるが、逆に、そのギャップが、表情のギャップと合わせて、彼の信憑性を感じさせるのだった。
それが、
「会社での、決して笑顔ではない営業スマイルと、その時の、満面の笑み」
というものを、
「ギャップ萌え」
のように感じさせたのであった。
そこが、
「かわいい後輩」
ということを感じさせ、
「そういえば、自分の会社の後輩には、このような先輩を心から慕っているような人はいないな」
と嘆きを感じさせるのだが、これは、
「柳生が得意先の社員だから感じることだろうな」
と思うと納得もいくということであった。
葛城が、自分の入社した時期のことから、若かった頃を思い出すと、
「俺も、後輩のことを言える立場でもないか」
と感じはしたが、
「どこか寂しい」
という気持ちになったのも事実というもので、
「俺もそもそも、営業のつもりではなかったので、営業の何たるかということを分かっているわけではない」
と感じていたのだ。
そもそも、葛城は、
「理数系」
だったのだ。
工業大学出身だったので、
「会社に入れば、研究者の道を歩む」
と思っていた。
ただ、
「モノづくりに造詣が深い」
という性格だったわけでもない。
プロローグ
その日の前日から、柳生は友達の葛城の家に遊びに行っていた。葛城とは、3年くらいの付き合いで、よく葛城に誘われて、彼の部屋で、よく夜を徹して話をしたりしていた。
いつもは酒を飲んだりして、朝まで話をするのが恒例であったが、その日は、酒を飲むこともなく、ソフトドリンクにスナック菓子をつまみながら、他愛もない話に興じていたのだった。
二人とも、夜を徹しての話が好きだった。
年齢的には、葛城が35歳、柳生が30歳と、そんなに若くはないのだが、二人とも、まだまだ若いつもりでいて、将来について語るのが好きだった。
しかし、だからと言って、二人とも、
「お互いがこの二人でないと、こんな話はしない」
と思っていた。
葛城からすれば、
「柳生だけだぞ、こんな話をするのは」
というと、柳生の方も、
「僕だってそうですよ。葛城さんだからするんですよ」
といって笑っていた。
しかも、その言葉は定期的に、どちらからともなく出てくる言葉で、まるで、何かを確認しあっているかのようだった。
そんな会話が、
「そろそろ一年くらいになるかな?」
と、お互いに感じていて、ここ数年、お互いに何が楽しいといって、
「学生時代に戻った」
という感覚になれるのが嬉しかったのだ。
そんな気分になれるのは、年齢的に、
「柳生の年齢でギリギリではないか?」
と思われるかも知れないが、葛城の方は、
「一度終わった青春が、またサイクルで戻ってきたような気がするんだ」
ということで、なつかしさだけではない、何かを感じていた。
この二人が知り合ったのは、仕事上でのことだった。
今から2年前くらいだっただろうか。葛城が得意先での営業の相手が、
「私はこの度転勤することになったので、引継ぎとして、柳生君を紹介します」
ということから始まったのだ。
柳生というのは、前の営業が、
「無骨ではあるが、それだけ頼りになる」
という人だったのと正反対で、若いというのもあるが、身体の線が細く、なよなよしたところが女性的に見え、大げさに言っても、頼りになるということはあり得ないようなタイプだった。
だが、逆に、
「放っておけない」
と思えるタイプで、逆に、自分が頼られていると感じるのだった。
「そういえば、まわりから頼られる年齢になってきたということになるのか?」
と、葛城は考えた。
確かに、そろそろ30歳を過ぎて、営業としても、そろそろ中堅クラスではないかと思うようになると、
「まんざらでもないな」
と思うようになった。
それまでは、先輩の背中を見て、ついていくというのが自分のスタイルだと思っていたが、後輩から慕われるというのも、まんざらでもないと想えてくると、柳生の存在が嫌というわけではなくなっていたのだ。
いつの間にか、柳生と気が合うようになっていたが、さすがに、営業先の会社の人と、個人的に飲みに行くというところまでは、
「大それたことだ」
ということで考えたことはなかった。
しかし、その頃、しゃれたバーを見つけた葛城が、その店に行くようになって、一か月が過ぎた頃、カウンターで一人で飲んでいると、
「葛城さんじゃないですか・」
といって、声を掛けてきた人がいた。
思わずびっくりして、横を見ると、そこに見覚えのある人がニコニコ笑いながら座っていた。
その人が誰なのか、すぐには分からなかったのだが、それは、その人物の笑顔を見たことがなかったからだ。
いつも緊張気味ではあるが、自分のことを頼もしいと思ってくれているように見えることで、
「先輩として」
ということで、笑顔がないかわりに、キラキラした目を輝かせていることで、楽しい気分にさせてくれることが嬉しい柳生だったのだ。
その柳生が、その時、目の前にニコニコした満面の笑みを浮かべているので、拍子抜けしたというよりも、あっけにとられた気持ちになった、
「柳生って、こんな笑顔をするんだ」
と思うと、
「プライベートだからだろうな」
と感じ、逆に、そのことを割り切っているところが、紳士的で、今まで感じていた、
「まだまだ子供だ」
と思っていたのだが、
「すでに立派な大人だ」
と感じさせるところが嬉しかったのだ。
「奇遇ですね」
といって話しかけてくる柳生に、葛城は、
「ああ、そうだね。君はここの常連なのかい?」
と聞いてみると、
「ええ、最初は友達に連れられてきたんですが、最近では、一人の時が多いんです」
という。
いつもはスーツ姿でパリッとした様子だが、こういう店ではさすがに、ラフな服装をしていた。
ラフすぎて、却ってだらしなくも見えるが、逆に、そのギャップが、表情のギャップと合わせて、彼の信憑性を感じさせるのだった。
それが、
「会社での、決して笑顔ではない営業スマイルと、その時の、満面の笑み」
というものを、
「ギャップ萌え」
のように感じさせたのであった。
そこが、
「かわいい後輩」
ということを感じさせ、
「そういえば、自分の会社の後輩には、このような先輩を心から慕っているような人はいないな」
と嘆きを感じさせるのだが、これは、
「柳生が得意先の社員だから感じることだろうな」
と思うと納得もいくということであった。
葛城が、自分の入社した時期のことから、若かった頃を思い出すと、
「俺も、後輩のことを言える立場でもないか」
と感じはしたが、
「どこか寂しい」
という気持ちになったのも事実というもので、
「俺もそもそも、営業のつもりではなかったので、営業の何たるかということを分かっているわけではない」
と感じていたのだ。
そもそも、葛城は、
「理数系」
だったのだ。
工業大学出身だったので、
「会社に入れば、研究者の道を歩む」
と思っていた。
ただ、
「モノづくりに造詣が深い」
という性格だったわけでもない。