複数トリックの組み合わせ
「ルミを殺したことで、今度は、洋子にその罪を擦り付ける」
というやり方だった。
実行犯が誰だか分からないとなると、実行犯である村雨が表に出てくるということはない。
不倫に関しては、誰にも知られないようにしていたので、
「バレることはない」
ということであったが、栗林とすれば、最後に
「不倫のうちで妻が殺された」
というよくある話に最後はもっていきたかったのだろう。
だから、ルミを殺す動機があることを事情聴取の際に、それとなく、村雨のことを警察にいうのだ。
結局は、それぞれの交換殺人を請け負うということを、それぞれから依頼を受け、どっちに味方をするかということを決めるまでは、一種の一人二役というものである。
しかし、実際に、お互いに依頼してきたのは、奇しくも、相手が望んでいるかのような、
「交換殺人」
ということである。
結局は、
「村雨がどっちを選ぶか?」
ということで事件の様相はまったく変わってくるということであるが、
「実際に起こる犯罪であったり、そこからの流れは、決まり切っていることだといえるだろう。
栗林は結構な策士であったが、ルミの方は洗脳というものの力が強く、実際に、その力によって、犯行を犯したわけだが、その伏線として、
「自首をする」
という洗脳もしていたわけであった。
「結果は同じだったのかも知れないな」
と考えると、ルミを殺した場合の結末も見えているが、結果としては、
「お互いに順序が違うだけで、
「堂々巡り」
ということであったり、
「いたちごっこに変わりない」
ということであっただろう。
「二つのトリックの組み合わせ。本当は、誰の目にも、最初から真相は分かっていたのかも知れない」
( 完 )
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作品名:複数トリックの組み合わせ 作家名:森本晃次