小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

念には念を

INDEX|17ページ/17ページ|

前のページ
 

 ということからきているからであろう。
 一見、まったく違った発想かも知れないが、
「一つがつながれば、そこに、矛盾はない」
 ということになるのだろう。
 それを考えると、
「すでにこの時、事件の全貌も分かっていた」
 といってもいいかも知れない。

                 大団円

 第一回の捜査会議は、それなりにしっかりとした意見が飛び交ったが、それ以降の会議では、これと言って分かってくることはなかった。
 と言っても、
「これが、そもそもの捜査会議」
 というものであって、別に珍しいものではなかった。
 そのことを、桜井警部補を中心とした、第一回の会議に列席していた人は分かっていたので、
「どうせ、新しいことは出てこないんだろうな」
 と思っていたが、まさにその通りだった。
 だから、列席していた刑事は、自分の発想を今は、暖めているところであったのだ。
 今回の事件において。
「不倫」
 と、
「保険金」
 という二つが動機のように見られたが、その二つに絡んでいるのが、奥さんということである。
 ということは、犯人が頭がよほど悪くない限り、
「奥さんが犯人だ」
 というのはあまりにも無謀な考えだ。
 とはいえ、
「一番の容疑者」
 ということであるのは間違いなく、何やら、
「無関係とは思えない目撃者」
 というものを作り上げたと言ってもいいだろう。
 そう、この事件に関して、樋口刑事が気になっていたのは、
「被害者と、目撃者の関係」
 ということであった。
 もし、
「二人が何か関係がある」
 ということであれば、
「この事件というのは、目撃者を必要とする事件だ」
 ということになるわけだ。
 しかも、
「その目撃者の意見を警察は鵜呑みにして、その目撃が本当は事件の核心に近づいている」
 と思わせようとたくらんだとすれば、
「この目撃証言というのは、フェイクではないか?」
 ということが考えられるというものである。
 実際に、この事件において、
「不倫」
 というもの自体が、
「フェイクである」
 というわけではないのであり、
「不倫をしている」
 ということがヒントになって、犯罪計画が練られたと言ってもいいだろう。
「不倫が動機ではなく、その動機になりえることを警察に信じ込ませる」
 ということも、これが、他の
「平凡な捜査員」
 であれば、簡単に、
「動機は不倫の清算」
 ということにおさまるかも知れない。
 しかし、それも、今度は、
「保険金目的」
 ということも視野に入れるとすれば、そこに、
「奥さんが不倫をしていた」
 ということから、
「不倫相手とたくらんだこと」
 というシナリオもできるわけだ。
 そういう意味で、今回の犯罪は、
「念には念を入れる」
 ということが、
「その犯罪のミソになっている」
 と言ってもいいだろう。
 それを考えると、
「やはり、秋元刑事の発想だ」
 ということになる。
 ただ、これも、
「平凡な上司」
 であれば、
「あくまでも、証拠に基づいた捜査でなければいけない」
 ということになり、いくら推理を施しても、相手にはしてくれないだろう。
 そのことを、犯人側にも分かっていて、
「物的証拠がもしあったとしても、それは、事件とはまったく関係のないもの」
 ということでのフェイクを考えていたのかも知れない。
 今のところはそれも見つかっていないが、これも、
「念には念を入れる」
 ということになるのだろう。
 今度の事件を考えてみると、
「犯人というものが、事件を見ている目」
 と、
「捜査員が見る目」
 というのが、同じ高さであればいいのか?
 ということを問題提起しているのかも知れない。
 秋元刑事は、
「そんなことは関係ない」
 と思っている。
 樋口刑事は、
「少しだけ上から見る」
 と思っている。
「犯人は警察に対して、平行線上で見る」
 ということで、警察を欺こうと考えている。
 これも、
「念には念を入れて」
 ということであるが、一番大切な。
「自分たちの目線」
 というものが分かっていなかったのだ。
「犯人側は、せっかく念には念を入れる形で計画を立てているのに、どこかでチョンボを犯している」
 という感覚を樋口刑事は抱いていた。
 最初こそ、
「犯人の心理」
 というものを考えもしていなかった秋元刑事も、そのうちに、
「何を焦っているんだ?」
 ということに気づいてくると、樋口刑事と、次第に考えが近づいてくることが分かってくるのだった。
「何を焦ってる」
 ということを樋口刑事にぶつけてみたのだが、樋口刑事とすれば、
「何かに引っかかっている」
 と思いながらも、心の中で、
「まさかな」
 と感じているのであった。
 実際に、この事件の骨格は、第一回の会議の時に出てきた疑問であったり、
「秋元刑事による発想」
 によって、ほとんどが、
「表に出ていた」
 と言ってもいいだろう。
 それを頭の中で組み立てる形になった樋口刑事は、
「犯人は実際に奥さんで、それをいかにカモフラージュするか?」
 ということで、危険ではあったが、目撃者という形での共犯として、
「斎藤を利用した」
 ということであった。
 それが、不倫相手ということであったが、その不倫の目的は、
「恋愛感情」
 ということではなく、
「殺害のための共犯」
 ということのためだった。
 動機とすれば、
「旦那の浮気」
 ということだった。
 それが、
「保険金を掛けた」
 ということが、旦那の中での、
「せめてものわびの気持ちだ」
 と思わせるところが奥さんとしては許せなかったのだ。
 この感情は、
「自分に時間がない」
 ということが分かったからで、捜査線上には、犯罪の骨格が見えた時には分からなかったが、逮捕しての裏付け捜査の中で、
「奥さんは、余命いくばくもない」
 ということが分かったのだ。
 要するに、
「推理の骨組みしかない」
 という状態で、秋元刑事の言っていた発想は、、ほとんどすべてが出ていたわけで、それを、組み立てることに成功したのは、
「樋口刑事の推理力」
 と言ってもいいだろう。
 それを思えば、
「今回の事件の立役者は誰なんだ?」
 ということになるが、
「今回の事件で、犯人が、余命いくばくもない」
 ということで、病院に通っていること。
 そして、病院内部にも、奥さんに通じている人がいるということが分かってくれば、
「次第に奥さんというものは、どこまで同情できる相手なのか?」
 ということになるわけで、
「こんな事件が多いから、俺は、事件について推理をしないんだ」
 と、秋元刑事は言っているが、
「いや、俺は、そういう人間の裏の部分に真実は隠されている」
 ということから、
「推理をするんだ」
 という樋口刑事。
 それぞれに言い分はしっかりとしたものがあるということであるが、今後、
「秋元刑事」
 と、
「樋口刑事」
 そのような事件と向き合っていくというのだろうか?
 実に楽しみだと言ってもいいだろう。

                 (  完  )
64


作品名:念には念を 作家名:森本晃次