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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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コンプライアンス(続・おしゃべりさんのひとり言192)

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やっとのことでいくつかの根本原因を突き止めて、対策を立てるところまでこぎつけました。みなさんやった感ある顔してる。
その間僕はコンプライアンスの指導を兼ねて、アドバイスしながら成り行きを見守ってきたけど、(この人たち、次も同じドタバタやるんだろうな)と思わずにいられません。
きっと最終報告書を書いて、何事もなかったかのように終わるつもりでしょう。
対策の施行は疎かにならないか心配ですが、今はもうそんな責任は僕じゃなく、新部長以下に課せられているので、そのうち事の重大さを理解する時が来るはずです。
重大労災を発生させて、「その作業指示を出した上司や安全担当責任者が書類送検された」なんて、ざらにある話です。
きっと彼らにはそんな知識もないでしょうし、教えていってあげないといけませんね。

こんなことにならないように、安全対策は全員が守る必要があります。
例えば、薬品が身体にかからないように、防護服を着ようというルール。
これを守らずに事故が起こったら、確実に大けがですよね。誰でも解ることです。
とか思ってたら、お風呂に入る時って普通40度くらいですよね。沸騰してたら入れませんよね。普通。
でも沸騰したお湯で淹れたお茶は飲めるんです。だから(沸騰したお湯が冷めてなくても入れる)って発想をしてしまう人がいるかもしれません。
安全教育っていうのは、こんな人にも解るようにしないといけないもんなんです。

そもそも、事故は絶対に起こるものです。(断言)
どれだけ注意していても、どれだけ対策していても、どこかにまだ気付かない危険源が残されているかもしれませんし、そもそもヒューマンエラーは、誰もが起こしうることです。人間だもの。
将来的に作業は、可能な限りロボットに置き換えていくしかないんです。

人によっても能力差っていうものがあるじゃないですか。
ペーパードライバーが起こす事故と、F1レーサーが起こす事故は違いますよね。
なのに、どっちにも同じ安全基準でルール作りするのは不可能と言ってもいい。
つまり、能力の低い人に合わせて安全対策をしてしまうと、有能でも能力が発揮できなくなる人もいるんです。だから単純なルールは無視する人がいるもんです。
それも理解できますけど、こんな場合にも、ルールは守らせる必要があるのは分かるでしょ。
困ったことに、能力の高い人は、それが危険だと判断しないこともあります。
高所恐怖症じゃない僕は、高いとこでも普通に歩ける。
でも、それを周囲の人は危ないと思って見てる。
これは僕が悪いんです。(普通は怖いはずだ)ということを解ってるなら、そんな行動を人前で取るべきじゃないんです。
じゃ、こんなケースはどう思う? 若い社員はスタスタ歩くけど、年寄りの社員がそれに付いて行こうとして、コケたりしたんです。
これはどっちが悪い? 普通に歩いた若者? 早歩きした年寄り?
歩くだけでこうですから、能力の差ってのは、どんな時にもあるもんなんですよね。
じゃ、どんなルールを作ったらいいんでしょう?
階段を上り下りする時に、一段飛ばしすることってないですか?
僕はむしろ健康のために一段飛ばしして、脚の筋肉を鍛えるようにしています。
でも、階段で転ぶ人がいるから、「一段飛ばし禁止」ってルールを作るべき?
能力の差を考慮して、誰にでも当てはまるルール作りは本当に難しい。
だから「階段上り下りの際は、手すりを掴みましょう」ってルールの為に、階段に手すりの取付け工事をしました。(小学校みたいでしょ)

もっと能力の高い世界でも、能力差ってあるもんです。
スカイダイビングする人は、パラシュートを使うでしょ。
パラシュート不要って人間はさすがにいないと思うけど、経験の差で、飛行機からダイブできるけど、崖からのクリフダイブは怖いって人もいるだろうし。
水泳は得意だけど、海で泳ぐ時は、浮き輪かライフジャケットを使いたいって人もいる。
これらは個人個人で独自に安全対策しているもんです。
仕事でもそうして欲しいし、そうするべきなんです。
でも仕事だと、安全対策は疎かにする人が多いのはなんで?
「仕事が面倒になるから、余分に何もやりたくない」実はこれが、なぜなぜ分析で最後に辿り着く、根本原因だというのも判っています。
だから事故の当事者は、これに結び付かないように、他に責任転嫁しながら、証言をしてしまいます。

企業には「事故を無くす」という、不可能な課題が与えられています。
それを「無理」と言わずに、対策していくことが『コンプライアンス』の一環でもあるんです。
だから「面倒くさい」とか言っちゃダメだね。


     つづく