コンプライアンス(続・おしゃべりさんのひとり言192)
コンプライアンス
4月に異動があり、新設したコンプライアンス管理をする部署を任されました。
昨年、上場企業に買収してもらったことで、さらにさらにコンプライアンス関係をしっかりやってく必要があるんで・・・
面倒ですね。正直。
僕はそもそもこの会社の社員数が10人以下だった頃、売り上げを10倍に伸ばすことを条件に初代社長に引き抜いてもらって来たんですけど、社長が代変わりし、その目標が曖昧になりながらもグローバルに成長を続けた結果、上場企業の子会社になってしまいました。
僕はもう自由にビジネスができない感じで、面白くありません。
でもまあ、今のポジションは親会社との窓口って役割もあって、それなりに勉強しないといけないこととかいっぱいある感じで、結構忙しいんです。
こういうことって、きっちりやらないといけないでしょ。
そんなこと出来そうな人、うちの会社にはほとんどいないなぁ。結局僕が全部やる感じなんだろうなぁ。
そもそも、今まで僕が携わってきたビジネスは、新社長(もう5代目)の意向で、昨年9月に後輩部長に引き継がせた訳だけど、せっかく僕が5年計画で社員数30人から100人に増やしたのに、わずか半年で10人くらい辞めちゃったし、体制も新部長のやりやすい(楽な)ように変更されてしまって、いまだに僕に助けを求めてくる一般社員がいる。立場はもう違うのに。
つまり、単に悩み相談に乗るとか、人を育てるとか、組織を作るとか、業績を伸ばすとか。人の上に立つ者なら必ず責任を持ってやらないといけないことをしたことがない人たちが、そのポジションを与えられて、自分に酔ってる感じ。
みんな解ってるふうに話すけど、全部ネット情報ですね。自分の経験で話す人なんて、全くいないです。
僕は何のために会社を大きくしたんだか、僕も引退した初代社長と話すことが増えてしまいました。それこそ立場はもう違うのに。
こんな会社だから、『コンプライアンス』って言うと、「セクハラ」「パワハラ」しか話題になりません。
そんな案件が多いって話じゃないですよ。
それくらいの知識でしかコンプライアンスを捉えられてないんですよね。
企業の社会的責任についての教育をしていかなきゃなんだけど、「面倒くさい」「そんなの時間の無駄」って声が聞こえてきそう。
こんなことを言わせなくする教育こそが、コンプライアンスを理解させる目的そのものなんだけどね。
企業ってのは利益の追求をするところ。これは昔も今も変わっていない。
でもコンプライアンスってのが世の中でうるさく言われ出すと、利益にならないことにまで、お金と労力を使わないといけないんですよね。
この負担っていうのは、社員の健康や生活はもとより、世の中をよくするために必要な考え方なんです。
大事なことですよね。みんながそう思ってくれているなら。
僕にとって、やりがいがあるんだか、ないんだか・・・?
とか思ってたら先週、顧客の工場で、うちの作業者による事故災害が発生しました。
1.5メートルの高さの作業台(一畳くらいの広さ)から、転落したって言うんです。
肩を打って、救急搬送。筋繊維損傷の疑い、全治2か月。
間違いなく重大な労災です。
僕が事業部の責任者だった時には、何度も労災対応をしてきました。
本当に面倒ですが、とことん事故を分析して、割り出した危険要素すべてに対策を実施し、効果を確認できて、労働基準監督署が「OK」と言うまで、本当に長い道のりなんですよ。
でも今回は、新部長が旗を振っています。僕は正直(無理だろうな)って思っています。
遠巻きに見てる人。進んで輪に入ってあれこれ言う人。色々います。
じゃ、本格的に調査しようってことになると、当事者や共同作業者、その指示を出した上司、安全衛生責任者が対象になります。
現場確認会、なぜなぜ分析、事故対策の打合せを幾度となく経て、安全衛生委員会が是正対策を決定します。
みなさん責任感を持って出席されています。
でも、知識が全然追い付いてないじゃない!!!
的外れなことに拘る人。そこに拘る? その人独自の答えが先に出てるから、事故分析になってない。
なぜなぜ分析しようにも被災者が休業中だから、想像でしか話が進まない。
仕方なく本人に電話で確認すると、誰も気付かなかった本当の行動が次から次に出てきて また一からやり直し。
そもそも資料として添えられていた事故現場の再現写真が、事実とかなり違ったんです。
(きっとこんな不安全行動があったんだろう)という、撮影者の主観で出来上がっていて、実際に行われていた安全対策はなかったかのような印象になっていました。
事故分析の経験が不足しているから、初動段階で確認しておく事柄がまったく抜けてしまっていたってことなんだな。
作品名:コンプライアンス(続・おしゃべりさんのひとり言192) 作家名:亨利(ヘンリー)