失せ物探し 探偵奇談26 後編
瑞の眼前を、映画の早送りの様に映像が流れていく。
焼け野原の町。戦争。貧しい家。母と、弟。
これは少女の記憶か。映像と一緒に声が聞こえてくる。
全 部 な く な っ ち ゃ っ た …
バラック小屋の粗末な布団に横たわる少女。
お 母 さ ん が 好 き っ て 言 っ て く れ た 歌 も う 歌 え な い
少女の身体には包帯が巻かれている。ところどころ血が滲んでいた。
あ や と り が 上 手 だ っ た 指 も な く な っ ち ゃ っ た
手に巻かれた包帯。指先が、ない。瑞は呻いた。少女は今まさに死にゆこうとしているのだ。
も う 走 れ な い
少女には右足がなかった。きっと空襲で、彼女は。
き れ い な お 花 畑 見 た い な あ
欲しいな、欲しいな、と少女は潰れた瞳から涙を流した。
も う 全 部 な く な っ ち ゃ っ た …
お 母 さ ん も 死 ん じ ゃ っ た …
わ た し ひ と り ぼ っ ち だ …
な に も な い …
瑞は少女のそばにしゃがみ込んだ。だらりと垂れた手に触れた。命の灯は、もう微かにしか残っていないことがわかった。それでも瑞は、語り掛けずにはいられなかった。
「大丈夫だよ…泣かないで…」
大丈夫、と安心させるように繰り返す。
「きみがこれから行くところは、きみの欲しいものがなんでもある…きみは自由で、体もとっても元気だ。行きたい場所に行って、会いたい人にちゃんと会えるからね」
本当に?というように少女の視線が瑞を捉えた。
作品名:失せ物探し 探偵奇談26 後編 作家名:ひなた眞白