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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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失せ物探し 探偵奇談26 前編

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瑞は郁の顔を正面から見据える。

「俺、ほんとちょっとポンコツになってるかもだから」

まさにけがの功名。この不幸な状況を逆手に、瑞は郁の優しさにつけこんでしまいたくなる。

「…だから、ちゃんと、俺のこと見てて」

俺のことだけ、見てて。
他の男のことなんて、ちらりとだって見てほしくないのだ。

「目を離さないでね」

ほんの少しだけ、顔を近づけてみる。郁がびくりと肩を震わせた。反応がかわいくて、もう少し意地悪してみたくなる。これだけまじまじと、彼女の顔を見るのは初めてかもしれない。耐えきれなかったように郁が目を逸らした。

「だめ。目を離すなって言ったでしょ」
「あの、でも須丸くん。ちょっと…近くない?」
「全然近くないよ」

近くない。まだまだ遠い。彼女の気持ちを知って、己の気持ちを自覚して、それでもいつまでも切り出せずにいる。すすめずにいる。本当は郁に好きと言わせたい。それがもうじれったい。早く俺のことだけでいっぱいになってしまえばいいのに。

(あーもう…!)

もう、いっそ言ってしまおうか。
こんな距離、本当はもういますぐにだって跳び越えて、抱きしめてしまいたいのに!

「だから近いってば!!」
「いってえ!!!」
「わあ!ごめん!!」

郁に額を思い切り叩かれて、さきほどのたんこぶにダメージが上乗せされる。

「一之瀬ひどいよ!もう今の一撃で絶対血ィ出た!」
「出てないよ!」

じんじんする額を押さえる。自業自得。どこまでも、果てしなく情けない己が心底嫌になってくる。そんな瑞に追い打ちをかけるように背後から声が届く。

「保健室で大騒ぎしてる馬鹿者は誰かな?」
「!!」
「安西先生、頼まれていたものここに置いておきますね」
「あらーありがとう須丸先生」

兄がいた。保健医に書類を届けに来たようだ。サイアクだ…。

「一之瀬さん、弟が何かよからぬことをしでかしたら、今のように遠慮なくぶん殴ってやってね?」
「ひい…!」
「は、はい…」

にっこり笑う紫暮の背後に、どす黒いオーラが視えるようで、瑞は震えあがった。
本当に、今日はとことんついていない…。








後編へ続く

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